蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2023年9月20日
チームの中で浮いている!?超マイペースな息子。サッカー辞めさせるか悩みます問題
マイペースで年齢相応の社会性が無い息子。スポーツで人間関係を学んでほしくてチームに入団したが、練習についていけずチームメイトにバカにされている。
しかも、休憩時間に自分の得意なゲームの話をしたりしてサッカーに関係ない話題で輪を乱す息子に周りの保護者も冷たい。辞めたいと言うが、中途半端に辞めさせると辞め癖が心配。でもこのままでは自己肯定感が育たない気もするし......。と悩むお母さんからのご相談。
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、お母さんに寄り添いアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<<中学以降も部活じゃなくクラブチームでやりたいが、試合に出るためには今よりレベルが低いクラブに行った方がいいのか問題
<サッカーママからの相談>
こんにちは。8歳小学校3年生の息子がサッカーを続けようか悩んでいる母です。
息子はもともと運動神経がいい方ではないですが、スポーツで人間関係を学んでもらえたらと思い、2年の11月に入部しました。
本人なりには少しずつうまくなっていますが、チームメートよりかなり下手で練習もついていけてないのでいつもチームメイトに馬鹿にされたり、きつい言葉をかけられています。また、本人が好きでやっているわけではないので、練習も身に入りません
息子は超マイペースで年相応の社会性がまったくなく、休憩時にチームメイトにゲームの話や得意な難しい算数の話をして浮いている状態です。
コーチはいじめはダメだとチームメイトに言い聞かせ、みんなも聞いていますが、いじめはなくても、変わった子として息子はみんなに避けられ浮いています。下手だしみんなサッカーをしに来ているのに関係ない話で輪を乱す息子に、保護者の皆さんの対応も冷たいです。
息子は試合にも出られないし辞めたいと言っていますが、中途半端にやめて辞め癖がつかないか、もう少し続ければ成長もあるのではないかと思ったり......。一方でこのまま続けても、本人の自己肯定感が下がるだけかなと思っています。
また、途中で辞めると言ってチームに迷惑をかけるのでは、とチームメイトのお母さんの顔が浮かんだりも。辞めるとしても、どのタイミングがいいのか。どうしたらいいか分かりません。
息子はPC系が得意なので、サッカーではなくPC系の習い事で伸ばして自信をつけるか、このまま続けていくか悩んでいます。
アドバイスをお願いします。
<島沢さんからの回答>
ご相談いただき、ありがとうございます。
息子さんが自分からやりたいと言ったわけではないけれど、お母さんなりの願いもあってサッカーを始めたのですね。そのぶんお母さんも責任を感じ、葛藤を抱えている様子が見て取れます。
メールの文章だけで私も全て理解できるわけではありませんが、三つほどアドバイスさせてください。
■アドバイス①どんなことでも好きで楽しくなければ上達しない 本人が望んで始めたわけでないので「辞め癖」とは状況が違う
まずは、息子さんの意思を尊重しましょう。
まだ3年生で、しかもサッカーを始めてまだ9カ月ほどです。本人が好きでやっているわけではないので練習にも身が入らないと説明されていますが、親から言われて始めたことを好きになることは容易くありません。しかも、もともと運動神経が悪いとも書かれています。
そもそも、サッカーは足を使い俊敏性も求められ、様々な能力を必要とされる高度で複雑な競技です。私はスポーツ科学系の大学で学びましたが、当時スポーツの中でアイスホッケーの次に難易度が高いと教わりました(ちなみに3位はバスケットボールでした)。つまり、息子さんはスポーツが苦手なのに、結構難しいスポーツに挑戦しているわけです。私としては息子さんが気の毒に感じます。
以前この連載の記事でもお伝えしたと思いますが、「好きこそものの上手なれ」の意味を考えてみてください。この諺(ことわざ)にあるように、どんなことでもそれをやるのが好きで、楽しくなければ、そもそも上達しません。このことは脳科学的にも実証されています。フロー状態といって、そのことが楽しくて仕方のない状況になると、技術が習得されやすくなります。
ということは、息子さんのように自分が楽しめないことを、親から言われたから仕方なくやっている、という状態では上達は極めて難しくなります。息子さんの身になって考えにくいようであれば、お母さんが苦手で嫌なことを周囲から「上手くなりなさい」と押し付けられたらどうでしょう。大きなストレスになりませんか?
私が取材した親子には、親の言うことを聞いて行動する子どもが親に忖度する傾向がありました。親に上手くなってほしいと思われている。期待を裏切りたくない。したがって「サッカーは僕の中では微妙なんだ」とは言いづらいわけです。親御さんが意思を尊重し、主体性を育てている子どもと比べると、そこは非常に顕著でした。
ところが、息子さんはお母さんにサッカーをやめたいという意思を伝えることができています。中途半端にやめて辞め癖がつくのではないかとよく皆さん言われますが、そもそも子ども自身がやりたいとせがんだわけでもありません。
例えば自分からやりたいと言って、高額な経費がかかったり、親にかなり無理をさせて始めたことであれば、正当な理由をきちんと子どもに語らせて親を納得させることは大切かもしれません。しかし、今回のサッカーについては状況が180度異なります。
お母さんが並べた言葉の中で私が唯一共感できたのは「このまま続けても、本人の自己肯定感が下がるだけ」です。息子さんが自ら意思を表明しているのなら、ここはすんなり辞めさせましょう。
■アドバイス②肯定されない場所で良い人間関係が学べるのか、いま一度考えよう
ふたつめ。
お子さんに何を望んでサッカーをやらせているのか、今一度考えてみましょう。
サッカーで息子さんをどうしたいのですか? 胸に手を当てよく考えると「上手くなってほしい」は一番ではないはずです。スポーツで人間関係を学んでほしいと書かれていますが、人間関係を学べる場所はほかにもたくさんあります。いじられたり、肯定されない場所で良い人間関係を学べるとは思えません。
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