あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2018年3月30日
上手い子がほかの子をバカにする状況を変えたいが......アシスタントコーチの苦悩
人数が多くてチームを分けて練習しているが、上手い子が他の子たちをバカにする、「上手でない方のチーム」は勝てるわけないとやる気がそがれるなどチームカーストができている。子どもたちが楽しんでプレーするためにはどうすればいいのか。池上さんのアドバイスを参考にしてみてください。
これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんはどのようなアドバイスを授けたのでしょうか。
(取材・文:島沢優子)
<<抜かれるとあきらめる。どう言えば切り替えの重要性に気づく?
<お父さんコーチからの質問>
地域のサッカーチームで、四月から2年生になる学年のアシスタントをしています。
人数が多くて、上手な子とそうでない子と2つに分けて練習しています。
今までは試合の時は全体を混ぜてやっていたのですが、最近になり練習しているチームで試合をしています。
必然的に上手な子供のチームとそうでない子のチームの力の差は歴然としています。
上手な子どもたちはもう1つのチームをバカにしたりするようになり、そうでない子たちは勝てるわけがないとやる気がなくなったり。私としてはいい環境とは思えません。
でもチームの方針だったり、コーチの方針だったりで私はあくまでもアシスタントの立場なので何も言うことができません。
保護者も上手な子どもたちの親はなんか天狗になっているように思えてなりません。
私の息子は「上手ではない方のチーム」でやっているのですが、一度、上手な方に呼ばれたとき、泣いて嫌だと言って結局その後はそのままになっています。
向上心がないのか、あちらのチームの雰囲気が嫌なのか理由を聞いてもはっきり答えないので、どう考えているのかよくわからないのですが、サッカーは楽しいようで頑張ってやっています。
今の環境はあまりいいとは言えないし、息子のためにも良くないのかなぁ。と他のチームに移籍しようかとも考えるのですが、息子は友達がいるので変わりたくないようです。
池上さんの本を読んだり、いろいろなものを見たりして「こんな風にできたらいいなぁ」といつも思っています。
子どもたちが楽しんでプレーするために、どのように工夫したらよいか教えてください。
<池上さんのアドバイス>
ご相談、ありがとうございます。
現在のチームは、あまり幸せそうに見えません。
「上手な子どもたちはもう1つのチームをバカにする」
「そうでない子たちは勝てるわけがないとやる気がなくなる」
「保護者も上手な子どもたちの親は天狗」
4月から2年生なので、上記は1年生時点での状況ですね。
「他のチームに移籍しようかとも考える」とありますが、まだこれからどんどん子どもたちは変わるのですから、ぜひ先を見据えてほしいと思います。
それにしても1年生の時点でそうなってしまうのですか......。サッカーの上手い下手でチームにカーストができてしまうのは、やはり周りの大人の接し方に問題があると思います。
■Bチームは敗北ではない、子どもの成長度に合っているほうが伸びる
本来なら、チーム運営についてコーチがしっかり話し合うべきです。まず、AとBに分かれるのはOKです。ただし、能力別に分ける理由を子どもにも保護者にも説明しましょう。
例えば、Bチームで練習や試合をすることを敗北のようにとらえる親御さんや選手がいます。周りがその子よりずっと技術が上の場合、練習や試合ではその子のやれることが少なくなります。つまり、その選手のレベルに合わない。
「そういう理解をしてもらえませんか? サッカーを、より楽しめるレベルのチームはABどちらでしょうか?」
そのように説明し、理解をしてもらいます。
スポーツですので、当然上手い・下手はあります。それによって勝ち負けが決まってきます。だからこそ、同じレベルで拮抗した状況でやったほうがお互い成長できるし、サッカーを楽しめる。そういった理解が浸透しているから、欧州はリーグ戦文化なのです。
例えばフランスのジュニアのリーグでは、そのシーズンの3節目くらいの時点で10点差で敗れるチームが出てくると、各リーグでそのような大差で負けたチームを見つけてきて、そのチームでひとつ別のリーグを作ります。それに異を唱える大人は誰もいません。なぜなら、力の拮抗する相手と試合をしたほうが子どもたちのためになるからです。
ではもし、それを日本でやりましょうとなったら、どうなるでしょうか?
恐らく「いや、うちはこのまま同じリーグでやります」と大人は拒否するのではないでしょうか。日本は試合をする場所や時間が制限されているという環境の違いもありますが、一番大きいのは「子どもたちのためにどうするのが一番良いのかを冷静に判断しようとする意識」かもしれません。