あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2023年8月25日

声が出せない子どもたちには具体的なワードを教えるのが良い? それともサッカーの理解を深めるべき? どうしたら声が出せるようになるか教えて

お互いのフォローをするために声を出すことが大事だと言い続けているが、実際声を出せる子が限られている。

大人しい子でも声を出せるようにするには、具体例を挙げて教えるのが良いか、サッカーの理解を深めるべきか、教えて。とお父さんコーチからの相談。

ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、子どもたちが声を出せるようになるおすすめメニューなども交えてアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

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<お父さんコーチからの質問>

こんにちは。

少年団でU-9年代を指導しています。

サッカーではお互いに声をかけあってプレーすること、フォローすることが大事だと思っており、練習中も試合中も声を出すことが大切だと言い続けていますが、声を出せる子が限られています。

性格によるものも大きいと思いますが、おとなしい子でも声を出せるようにするにはどのような指導法がありますか?

状況ごとにどんな声を出せばいいか、いくつか具体例を教えてあげるのが良いですか?

それとも、サッカーへの理解を深めることが大事なのでしょうか。だとしたら、どんな風に理解させるのが良いか、ヒントをいただけませんでしょうか。

よろしくお願いいたします。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

今に限らず、かなり以前から子どもは声を出すことが苦手です。サッカーをしているときに声を出す以外でも、トレーニングの際に「今の練習はどうでしたか?」と質問しても、ほとんどの子どもは自分から答えません。

 

■声を出さない背景に、自信がない、間違えるのが恥ずかしいという感情がある

同じ集団を教えると、私の質問に積極的に自分から答えるのがひとりか二人の"決まった子ども"になる印象です。多くの子が、小学校のように「はい、君、答えてください」とあてられない限り、じっと黙って誰かが何か言うのを待っています。

そうなってしまう背景に目をやると、そもそも自分に自信がなかったり、間違えることをとても嫌がる。間違えることが恥ずかしいという感情があるようです。

加えて、彼らの日常生活で「大声を出す」という状況があまりありません。逆に、ちょっと声が大きくなると「どうしてそんな大声出すの?」と大人に言われたり、仲間から「静かにしろよ」と注意されてしまう。感情を表に出す、一緒になって大声でわいわいやる、みたいな経験が、親世代よりも圧倒的に少なくなっているようです。

まずは、そのような子どもの実態と背景を理解しなくてはいけません。そうすれば、あの子は声を出せないと否定するような考えや態度にならずに済みます。そのように考えると、声を出すことはサッカーをするうえで必要なので、できるようになるトレーニングをすればよいのです。

 

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■空間認知力を養うためにもおすすめの「ハンドパスゲーム」

例えば、私がよく行うメニューに「ハンドパスゲーム」があります。子どもたちがバスケットボールの手前で行う、ポートボールのような感覚です。バスケットはリングにシュートしますが、ポートボールは台の上に立った味方に直接渡します。

サッカーで行う鳥かごのような形にして、真ん中に守備を入れます。守備をうまく避けてボールをつないでいくポートボールのイメージで、手から手にボールを渡す動作から始めます。次に「鳥かごから、全員動いていいよ」と言って、固定ではなく動くのをOKにします。つまりはサッカーボールで行うバスケットです。どこに走って、どこに投げるとつながるか。このメニューは空間認知力を養うことにも役立ちます。

このハンドパスゲームで、味方同士で5本つなぐと1点というルールにします。最初のパスを出す人は「1」と言ってパスを出す。次の人は「2」と言ってパスを出すようにして、6人目がパスを受けた瞬間にチーム全員で「一点!」と叫ばなくてはいけない。そんな決まりをつけます。パスの数を告げる声もコーチに聞こえなくてはいけません。

ここで声が小さいと「おーい、聞こえないよ~」と言ってあげてもいいでしょう。子どもたちは勢いづいて大声を出すようになります。

全員で一点! と叫ぶのを誰かが忘れたりします。子どもたちが笑顔になるので、アイスブレークにも最適なメニューです。

 

■「左側に相手DFが来ているから右行って」など、どんな声を出せばいいか

この夏休み中にドイツから帰国し全国をまわって指導していた、育成コーチの中野吉之伴さんが行っていたトレーニングも自然に声を出すものです。2メートルくらいの範囲にマーカーを置いてグリッドを作り、そこでボールコントロールの練習をします。

パス出す人に「右」と言われたら、右足でコントロールします。右へ出ていかなくてはいけません。グリッドの外にボールを置く決まりです。「後ろ」と言ったら、後方にボールを動かします。つまり指示されたほうにボールを動かさなくてはなりません。

このような状況は試合の中でも起こります。仲間から「右行って」とか「左行って」と言われることがあります。言うほうも、聞くほうも瞬時に判断しなくてはなりません。

このトレーニングをすると、子どもたちは声を出します。最初はパスを出すときに相手に言うのを忘れてしまうこともあります。決められなくて口ごもり「早く言えよ!」と言われたりします。が、よく考えたら試合の中でもそんなことが起きます。そのことをぜひ子どもたちに伝えてください。

「試合の中でも起きるよね。左側に相手のディフェンスがきてるから右に行けよと言ってあげよう」

そんなふうに、どんな声を出せばいいのかを明確にしてあげてください。

 

 

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