あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2024年1月29日

大会の格や規模について苦情を言ってくる親たちに、練習試合でも成長できることを伝える方法を教えて

大会の格で苦情を言ってくる親たちに理解をお願いしたい。全員をだいたい同じ出場時間に調整していろんな試合を経験させているのに、県大会や全国につながるような試合を格上とみなし、練習試合は本気度が低くて成長にならないのではと言われる。

保護者が練習試合でも成長を感じられるようになるには、選手または親にどんなアプローチが効果的? とのご相談をいただきました。

 今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、悩めるお父さんコーチにアドバイスを送ります。

(取材・文 島沢優子)

 

池上正さんの指導を動画で見られるCOACH UNITED ACADEMY>>

 


(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

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<お父さんコーチからの質問>

こんにちは。いつも連載を読んでいます。

先日の記事で、「試合を経験して成長する、うまくなるといったプロセスは、練習試合でも公式戦でも同じ」「小学生の試合ではそんなに変わりはない」とおっしゃってくれて、助けられた気持ちになりました。


【該当記事】
スクールのみでチームに所属してない子、対外試合の経験が積めない弊害はあるのか教えて

 

私が保護者コーチとして関わるチームは、子どもが多いチームなので1学年20人ほど所属しています。所属人数が少なくて苦労しているチームに比べると大変ありがたいのですが、レベル別にA、Bチームを作って練習試合を含め、試合経験をさせています。だいたい同じような出場時間になるように記録して調整しています。

ですが、先日の記事にもあったように大会の格や規模について苦情を言ってくる親御さんが結構います。全日予選のような公式大会につながる試合や県リーグを格上とみなし、練習試合ではこちらも対戦相手も本気度が低いので成長につながらないのではないかと言うのです。

そこでご相談です。

練習試合でも成長を感じられるようになるには、選手自身の気づきや実感があると保護者も理解してくれるのではないかと思うのですが、このような場合は事前に課題を設けるのが良いでしょうか?
(子どもがサッカーノートに書くし、コーチのフィードバックもあるので)

小5~6年代だと、どのような方法がお薦めでしょうか。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

私が発信したことが何かの力になったのであれば、非常にうれしいことです。こちらから発信はするけれど、それについて読者の方から感想をいただくことは滅多にありません。伝えていただきありがとうございます。

 

■わが子しか見ない傾向にあるので難しいが、チームとしての成長に目を向けてくれるよう説明が必要

さて、本題です。保護者の方々が「練習試合ではこちらも対戦相手も本気度が低いので成長につながらない」とおっしゃっているとのこと。公式戦、練習試合にかかわらず、そもそも子どもの成長を読み取るのは簡単ではありません。特に、素人目でうまくなっているかどうかはわかりづらいでしょう。

わかりやすいのはリフティングの数とか、挙げたゴールの数とか、どのくらい自主練をしたかなどがひとつの尺度になるのでしょうが、それは目に見える一部の事実にしかすぎません。特に、一人ひとりの保護者だから自分の子どもしか見ない傾向があるため、余計難しいかもしれません。

本来ならば、チームとしての成長に目を向けてほしい。そのためには、指導者から保護者への説明や解説をするとよいでしょう。

 

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■その年代でどうなってほしいのか説明をする

例えば小学生であれば、数的優位を理解して実践できるようにしたいので2対1や3対2の練習をしていることを説明してください。

「ドリブルよりも簡単に相手を抜き去ることができます。サッカーというスポーツがどのように成り立っているかを認知してもらうための練習です」

そんな説明をすると、保護者はそこに注目し始めます。子どもに対して「最近パスが上手くなったね」とほめたり、認めてもらえるようなことにつながります。少しわかってくると「サッカーらしくなったね」といった感想も聞けるようになります。

 

■その日の「狙い」を事前に説明する

練習試合でも同じです。

「今日の練習ゲームは、こんな狙いでやっています」と事前に説明します。直接保護者に言わなくても「明日の試合はこれを目標にやろう」と子どもたちに伝えます。事前に試合にはそういった成長するための狙いや目標を立てて臨んでいることを保護者に伝えておけば、子どもたちが自分の親に伝えます。

 

■試合後、子どもたち全員と保護者とともに「良いところ探し」の機会を作る

さらに試合後、子どもたちに「試合はどうでしたか? 狙い通りにできましたか?」と尋ねて一人ひとり感想を言ってもらいましょう。それを、私のクラブでは保護者にも尋ねます。

「今日の試合はどうでしたか?」

すると、親御さんたちは「子どもが練習していることが出た」とか「全部成功はしないけれど、やろうとしていることが見えた」などと感想を言ってもらえます。なるべく良いところを探して言ってもらえる空気感があるとさらに良いでしょう。たとえ0対10で大敗したとしても「一回だけだけど、ワンツーできてたね」といいところ探しができます。

 

■「弱気に見えるかもしれないけど、実際は......」と子どもたちの感情を保護者に解説する

最後にコーチが保護者に向けて解説をしてあげてください。必ず伝えてほしいのは「子どもたちのの感覚」についてです。

「見た目は負けて弱気になったように見えるかもしれないけれど、実際はその日の目標に向き合おうとしていましたよ」などです。実際にプレーする子どもの感情を知ってほしいからです。それを親御さん向けに毎回やります。そのうちに解説しなくても、あの場面でこういうことがありましたねと親のほうから話し始めます。

 

■レベル別に分ける理由を説明しよう

また、公式戦をAとBでレベル別にする理由も説明したほうがよいでしょう。同じくらいの力の子でチーム編成をするのは、誰もが活躍できる環境を用意すること。誰もが必要な人材だと保護者に知ってもらいましょう。混ぜてやってしまうと、相手が強い場合に「アイツがいなかったら」などと子どもは正直に言ってしまいがちです。力の差があり過ぎる不均衡な試合は、強い側、弱い側、その両者ともに上達につながりません。また、AとBを練習試合で時にバラバラにしてもいいと思います。ABを決めたら全部固定するのではなく、流動的に編成します。

 

■保護者の意見、要望に全部賛同する必要はないが、気持ちを聞いてあげるのは大事

まとめると、保護者との距離をもっと縮めることです。眺めていると、コーチの皆さんは保護者に意見されることを嫌がります。だからついつい遠のいてしまう。親御さんのほうもそれを察するので話しづらくなります。時に保護者から言われたことが「それはいいかも!」と思えるかもしれません。親が言ったことを全部賛同するわけではないけれど、気持ちを聞いてあげるのはとても大切です。

 

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