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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

相手とのボールの奪い合い 小学生のうちは競り合いを学ばせるかコンタクトプレーをしない方法を教えた方が良いのか教えて

公開:2024年1月19日 更新:2024年1月22日

キーワード:オシムフィジカルコンタクト幅とスペース池上正競り合い羽生直剛

強豪チームが幅とスペースを上手く使ってほとんどフィジカル的な競り合いをしないことに感心していたら、周囲からはコンタクトプレーを避けすぎるのも良くない、倒れるギリギリでパスをようなバランスを探るのも必要だと言われた。

中学以降を考えるとコンタクトを避けるorバランスを身に付ける、どちらが良いのか教えて、というご質問をいただきました。

今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、海外の育成情報も含め、悩めるお父さんコーチにアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)

 

池上正さんの指導を動画で見られるCOACH UNITED ACADEMY>>

 

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

<<公式戦が始まるまでに「どんな時に何を見てプレーするか」を理解させたい、お団子サッカーから視野を広げる方法を教えて

 

<お父さんコーチからの質問>

池上さんはじめまして。

自分自身、小学校からサッカーをはじめ、子どもができるまで社会人チームでも時々プレーしていたのですが、指導は初心者なので今色々と勉強している段階です。

息子のチームに誘われて指導の手伝いをしていますが、基本的に見守り係のようなアシスタントの立場です。(上述したように、今指導について学んでいます)

お聞きしたいことは、コンタクトプレーについてです。

全国大会に出場したことがあるような県内トップレベルのチームなどと対戦すると、同年代でも幅とスペースの使い方がとても上手くて感心します。(監督のツテで試合できるだけで、うちのチームはそんなにレベル高くないです)

身体の使い方も上手く、フィジカル的な競り合いをほとんどせずにボールを持っているのはすごいと思いますが、コーチの中にはコンタクトプレーを避けすぎるのも良くない、相手のマークがあってもどのぐらいまでボールを持っていられるか(倒れるギリギリでパスを出す)バランスを探る経験も必要だ、という意見もあります。

フィジカルコンタクトを怖がる子たちもいるので、コンタクトしない方法を身に付けさせるのもありなのかな、と考えていたのですが、中学以降を考えるとコンタクトを避けるorバランスを身に付ける、どちらが良いのでしょうか。

おすすめの練習法などもあれば教えてください。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

先日、ある講習会で中学2年生を指導しました。相手とコンタクトしなくてもできるプレーがあるよねと伝えました。相手が近づいてきたらボールを離すことです。

中学生は3年生くらいからぐっとスピードが出てくるうえ、体も大きくなるのでプレーの強度が上がります。相手とぶつかる場面も出てくるのですが、ぶつかるのを耐えるのではなく上手く離れるスキルを身に付けることです。

 

■小学校高学年の間はコンタクトしないプレーは何か、を身に付けさせる

小学生の指導を見ていると「ボールを取りに行こう」と声掛けして追いかけてもらうのは良いのですが、追いかけられた側に対し「体を入れてキープしなさい」と命じることが多いようです。(基本として、相手よりも遠い方の足でボールを持つのですが)そこを「速くパスを出そう」と伝えてください。

そうなると、ボールを持っている味方がすぐパスを出せるように、ボールを持たない選手のほうもどこに動いたらもらえるかを常に考える。そういったことを促してください。

ご相談者様が担当する小学校高学年の間は、コンタクトしないプレーは何かを身に付けてもらいましょう。

例えばワンツーパス。ミニゲームのなかで相手がコンタクトしにきたら、味方を使うことで裏が取れます。それができるようになれば、相手のプレスが速くても回避できる。そういったことが、彼らの将来に役に立つのです。

 

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■小柄だった羽生選手はオシム監督のアドバイスでプレーを変え日本代表に選ばれた

私がジェフ時代に指導を学ばせていただいたオシムさんは、体の小さい羽生直剛選手にこう言いました。

「おまえみたいな小さいやつが、180センチの相手ディフェンダーと闘って勝てると思うか? 相手とぶつからないことを考えろ

それまで相手に体をぶつけられると懸命に耐えていた羽生選手は、そこからプレーを変えました。彼は走って相手をかわすことを考えたのです。それができたから国際舞台を戦う日本代表にも選ばれ、そこでも活躍できました。

 

■日本人は二者択一の思考になりがち 指導者衣装やサッカーの場面で変わることもある

そんなことを小学生のころから子どもが理解していれば、中学、高校と将来のサッカーキャリアに必ず役に立ちます。体が大きい選手はパワーがあるから体をぶつけろと言われると、そのプレーしか覚えません。

逆に小さい選手はスピードがあるからとか言われ続けると、速さでしか勝負できなくなる。それでは、ボールを運ぶ技術や戦術眼が身につきません。大人になって、自分より強い相手や速い相手に出くわすと、そこからもう戦えなくなるのです。

さまざま考えると、日本人は白か黒かと二者択一を迫る癖があるようです。ドリブルかパスか。ほめる指導か、怒る指導か。体をぶつけるのか、そうでないか。どれも指導対象やサッカー場面で変わっていくというのに。

 

■日本代表MF遠藤航選手は、「球際が強い」のではなく「球際が上手い」

体をぶつけるか、ぶつけないかの話はよく尋ねられるので、上述したように相手をかわす話をします。すると「じゃあ、遠藤航はどうなりますか? 彼は球際が強いじゃないですか。彼みたいにしなくていいですか?」と質問されます。

しかしながら、遠藤のプレーをよくよく見ると、インターセプト(パスカット)がすごく多いことがわかります。彼は球際が強いのではなく「球際が上手い」のです。さらにいえば、強いのではなく賢い。彼自身、自分が大きくないこと、外国人に比べて決して体が強くないことを知っています。彼のように相手とどう距離をとったらいいかを理解すれば賢くなる。その賢さは小学生のうちに養わなくてはいけません。

 

■欧州の子どもたちは「ずっと続けるために」どんなサッカーをするか問われる

それらを養うには、育成する指導者たちの価値観を少し見直さなくてはいけないでしょう。例えば、日本では目の前の勝ち負けが何より優先されます。勝つためにどんなサッカーをするか。そこが大人によって追求されます。よって負けてしまうとやめてしまう傾向があります。小学生でも「もうサッカーはいいや。引退する」と言います。中学生も高校生も。多くは6・3・3の学校でサッカー環境が変わる日本では、サッカーをやめる機会がたくさんあります。

ところが、欧州の子どもたちは「ずっとサッカーを続けるために、どんなサッカーしますか?」ということを問われます。欧州をルーツにするサッカー人には「騎士道」の思想があるので、スポーツマンシップが重んじられます。彼らの中に「なりふり構わず勝つ」というのは基本的に受け入れられません。

ここで「基本的に」という言葉を足したのは、すべてがそうではないからです。プロリーグで降格争いとか、この試合に負けたら終わりといった場面ではロングボールも使います。国の威信をかけて勝負するW杯もそうです。よってW杯は勝利至上サッカーだから面白くないといった声も少なくありません。つまり、プロフェッショナルな部分があるのです。

 

■欧州のプロリーグで10代デビューする選手は、戦術眼や考え方がすでに代表級

もうひとつ言えば、欧州のプロリーグに10代でデビューする選手は、戦術眼やサッカーのとらえ方、考え方がすでに代表級です。あとは経験を積むだけという状態で、舞台に現れます。ところが、日本の10代はどうでしょうか。

海外組と言われる日本の選手たちはよく「ここ(欧州)のサッカーに慣れてきた」と言います。話していること整理すると「欧州の素早い判断力を追求されるサッカーに慣れてきた」ということだと私はとらえています。

日本のサッカーは展開がゆっくりで、海外は速いです。例えば、イタリアは昔から「カテナチオ」鍵をかけるという意味の、引いて守るカウンターを特色としていました。ところがそのサッカーは今では選手からもサポーターからも人気がありません。現代サッカーのトレンドであるハイプレスからのスピーディーな展開サッカーが好まれるのです。よく言われてきたハードワークも、もう言われなくなりました。古いサッカーは人気がありません。

今、欧州や南米では、2人のコンビネーションで相手が想像しないことを仕掛けることが注目されています。ひとりのファンタジスタではやっていけないけれど、2人ならできる。そういう選手が必要だと考えられ始めました。

 

次ページ:小学生からユース年代まで何を教えるか ドイツやオランダなど諸外国の取り組み

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取材・文 島沢優子

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