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中村憲剛の「KENGOアカデミー」

欲しいタイミングでパスがもらえる!中村憲剛がパサー目線からアドバイスする3つの極意

公開:2021年2月10日

キーワード:JリーグKENGOアカデミー中村憲剛川崎フロンターレ練習

中村憲剛さんが読者の質問に答える「KENGOアカデミー」。今回はパサーの視点からパスを出しやすい選手の動きについて話をしてもらいました。
 
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【質問】
もともと、MFをやることが多かったのですが、最近FWもやるようになりました。ですが、中盤の選手から欲しいタイミングにボールが出てきません。憲剛さんはどのタイミングで、FWのどこを見てパスを出していますか? また、どんな選手にはパスが出しやすいですか?
 
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【憲剛さんの回答】
質問ありがとう!
せっかく動き出したのにパスが出て来ない......。こういう悩みを持っているFWの選手は日本中にたくさんいると思います。今回は主に「パスを出す側」としてプレーしていた、僕の目線からアドバイスをさせてもらいます。

■FWの動き出しが「先」

まず「どのタイミングで、FWのどこを見てパスを出していますか?」という質問から答えていきます。
FWの動き出しを見るタイミングは「2回」です。
 
1回目は「ボールをもらう前」。
中盤でパスを受けるとき、味方の選手の足からボールが離れた瞬間に、前方の状況をチラッと確認します。ここでは、FWはどこにいるのか、DFはどこにいるのか、マークの距離感はどれぐらいか、スペースはどこにあるのか......などをインプットします。
 
2回目は「ボールをもらった後」。
ボールをもらって、コントロールした後に、顔を上げて前の状況を見ます。ここでFWの動きを見て、裏のスペースで受けたいのか、足元で受けたいのかを見ます。
もう一つ、ボールをもらった後に見るのが「駆け引きの状態」です。理想は僕が前を向いた時点で「駆け引きが終わっている」こと。つまり、DFのマークを外して、フリーでパスを受けられる状態を作っているということです。そのためには中盤の選手がパスをもらおうとしているタイミングで動き出すことが必要です。中盤にゆっくりと引いて、足元でパスを受ける雰囲気を出す。そして、パサーが顔を上げた瞬間に、きゅっと方向転換して、裏のスペースに走り出す。
 
中盤の選手が前を向いて、パスを出せる状態になってからだと、当然ですがDFも警戒します。そこでどれだけ頑張って動いても、マークを完全に外し切るのは難しい。中盤の選手にとっても、FWとDFの駆け引きがどうなるのかを見ながら、どこのスペースに動き出すのかを確認しつつ、ボールを蹴るというのはすごく難しい。欲しいタイミングでパスをもらいたければ、パスが出て来る前に動き出すことを心掛けてほしいと思います。
 
【動画で見てみよう】
「KENGO Academy~サッカーがうまくなる45のアイデア~」より

■スルーパスを出しやすかった岡崎慎司

次は「どんな選手にはパスを出しやすいですか?」という質問に答えていきます。パスを出しやすい選手と聞かれて、真っ先に思い浮かぶのが、オカ(岡崎慎司)です。オカとは日本代表で一緒にプレーしてきましたが、僕のスルーパスからオカが決めるというパターンから何度もゴールが生まれました。
 
FWには足元でボールを受けたがる選手や、スペースに走って受けるのが得意な選手、どちらもバランス良くやるタイプなどがいますが、オカの場合はとにかくシンプル。「裏でもらいたい」というのがハッキリとしていました。オカには「俺がボールを持ったら出すから、裏に走ってくれ」と言っていました。実際にオカは僕が持ったら、必ず裏に走ってくれました。パスを出せない時があっても、パスが出て来ることを信じて走ってくれました。
それが実ったのが2010年の南アフリカW杯出場をかけたアジア最終予選・ウズベキスタン戦でした。
 
僕が中盤でボールをコントロールしたとき、オカはすでにDFラインの背後を狙って動き出していました。前を向いた時点で、スピードに乗っているオカは相手DFよりも良い位置にいたので、僕はそこにパスを出すだけで良かった。もしも、オカが僕がパスを出せるかどうかを見てから動いていたら、W杯出場につながる決勝ゴールは生まれていなかったと思います。
 
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■パサーと「仲良し」になる

僕はずっと中盤の選手としてやってきて、数え切れないぐらいたくさんのFWとプレーしてきました。僕の一番の武器はDFラインの裏を突く「スルーパス」です。だけど、このプレーは1人でできるものではありません。
 
スルーパスというのはパスを出す側と受ける側の「共同作業」です。
 
どんなに良いパスを出せる選手がいても、受ける選手がピッタリとマークにつかれていれば出せません。逆も然り。素晴らしい動き出しをする選手がいても、出す側が見ていなければパスは出てきません。だからこそ、たくさんコミュニケーションをとることが大事になってきます。FWの選手であれば、パスを出す選手に「自分はここでもらいたい」「こういうところで欲しい」というのを、どんどんリクエストすることが必要です。
 
川崎フロンターレに加入した当時、チームにはブラジル人のジュニーニョというFWがいました。ジュニーニョはボランチでプレーしていた僕にこう言いました。「ボールを持った時は、まず俺を見ろ」と。
 
ジュニーニョは爆発的なスピードを持っていたので、味方の選手が自分の動きを見て、パスを出してくれさえすればゴールを決める自信があったからだと思います。そう言われるようになって、僕はジュニーニョがどのタイミングで動くのか、どこでパスをもらうのが好きなのか、どんな癖があるのかをいつも見るようになりました。その結果、僕とジュニーニョは「黄金コンビ」と呼ばれるほどのコンビネーションを築くようになりました。
 
パスが欲しい選手はパスを出してくれる選手と「仲良し」になったほうが絶対に得です。「仲良し」になると言っても、気の合わない選手とピッチの外で付き合えということではありません。自分はここでパスが欲しい、今はどこに動けば良かったのか......、ピッチの中で「仲良し」になることが大事です。
 
【動画で解説】中村憲剛が教える「サッカーがうまくなる45のアイデア」はこちら>>
 
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中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ。東京都小平市出身。小学生時代に府ロクサッカークラブでサッカーを始め、都立久留米高校(現・東京都立東久留米総合高校)、中央大学を経て03年に川崎フロンターレ加入。06年10月、日本代表デビュー。国際Aマッチ68試合出場6得点(2020年7月現在)。05年から19年までJリーグ優秀選手賞を15回連続受賞。Jリーグベストイレブン8回選出。16年に史上最年長で受賞したJリーグMVPはギネス世界記録に認定されている。

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構成:北健一郎 協力:ケンプランニング

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