「サカイクキャンプ」でサッカーの技術とライフスキルを身につける
2017年6月 6日
上達のために必要なのは「こうしなさい」ではない! 課題に気づき、考える力をつける指導とは
■サカイクが考える「サッカーを通じた人間力の向上」に必要な5つのテーマ
「私が考えるライフスキルは大きく2つに分けられます。礼儀やマナー、コミュニケーションなど指導者が教えたらすぐに実践可能で身につけられるスキル的なもの。つまり、他者が関わって論理的にトレーニングすれば習得できるものです。もう一つは、『考える力』や『最善の努力』など選手自身が気づき、初めて実行できるプロセスが必要なものです。育成年代の子どもたちにはどちらも大事なものです。
しかし、前者は指導者も具体的にものが言えますが、後者は指導者もどうすればいいのかがわからないのが現状です。だからこそ、指導者たちは『選手たちに質問を投げかけて気づかせる』など問題や課題に対して向き合わせ、解決策を探るサポートしかできず、後者は指導者も選手も実感するのに時間がかかるのです。
春に開催されたサカイクキャンプもコーチたちの意見を取り入れて尺度を作りましたが、『考える力』は入っていました。考える力を数値化するために4つの質問で構成されていますが、今回だけに限って見ると『サッカーがうまくなるにはどうしたらいいのか考える』という視点では有意差が出ませんでした。でも、これは高校生の選手たちでも最初のアンケート結果は同じように出ます。1年ぐらい経ってようやく結果に現れるものなんです」
そして、有意差が出なかった理由はもう一つあるとサカイク編集部は考えています。
それは、キャンプに参加してくれた子どもたちの引き出しには、考えるための材料がまだあまり入っていないということです。よく指導者が選手に「自分で考えなさい」と指示する光景を目にすることがあります。しかし、そもそも考えるための選択肢となる材料がなければ考えることはできません。
指導者が「こうしなさい!」と教え込むのではなく、少しずつ選手に気付かせながら考えるための引き出しを増やしてあげる必要があります。ですから、指導者にとって大切なことは「選手が考える力を身につけるには時間がかかる」ことを認識し、忍耐を持って子どもたちと向き合い続けることです。
次回は、「ライフスキル導入が子どもにもたらすもの」について東海林先生に解説していただきます。
東海林祐子 博士/
筑波大学体育専門学群を卒業後、1991年瓊浦高校(長崎市)に赴任。体育の教員、男子ハンドボール部の顧問として2002年まで勤務。2001年インターハイ優勝、国民体育大会優勝などの成績を収めた。男子を率いての女性指導者の全国大会優勝は初。2006年より慶應義塾大学に着任、スポーツのコーチングとライフスキル(スポーツ心理学)を専門とする指導者育成を実施している。コーチングの心理的葛藤(ジレンマ)とゲーム理論を援用したモデルで示し企業の管理職や行政、部活動顧問、トップアスリートなどを対象に講習会を実施している。著書に『スポーツコミュニケーション スポーツ指導におけるコミュニケーションとその応用』(ブックハウスエイチディ)がある。
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