■「なんで?」「どうして?」という質問系ほめフレーズも、ほめたいポイントを無意識的に受け入れてくれます
「いくつかある選択肢の中から子どもが選んだ結果」をほめたいときはどんなほめフレーズが良いでしょうか? サカイクは「考えるサッカー」を提唱しているので、ぜひほめてあげたいポイントでもあります。たとえば、ボールを保持した段階でパスコースが2つあり、その場からシュートも狙えるとき。子どもがパスを選んで、結果得点につながったとしたら?
3つある選択肢の中からパスを選んだことは、子どもがそのときに考えた結果ですよね。そのままズバリ、聞いてみましょう。
「なんであの場面でシュートではなくパスをしたの?」
お子さんがその理由を説明してくれるたら
「へー!そうなんだ! そうやって考えたから得点につながったんだね!」
と、その考えを肯定しながら因果関係を使った言葉にしてください。このとき大事なのは、感心しながら聞いてあげること。子どもをほめる気持ちを表情や声などに込めてください。それによって、その場でパスを選んだ自分の判断はすごいことなんだと無意識的に思わせ、本人の自信にもつながります。逆に「あのときのパスはいい判断だったね」と親の評価を入れると、子どもに否定されるリスクが高くなります。
質問系のほめフレーズをもう一つご紹介します。たとえば、子どものドリブルが上手になったと感じ時は、
「ドリブルが上手になったね!」
ではなく、
「どうしてそんなにドリブルが上手になったの?」
とほめましょう。
こう質問されると、子どもは、
「練習が終わった後に一人で練習しているからだよ」
「ドリブルがうまい先輩にコツを教えてもらって毎日練習したんだ」
のようにドリブルが上手になった理由を考えて答えるでしょう。
このとき、子どもは「ドリブルが上手になった」ということを受け入れています。「どうして」というフレーズで、注意を理由に向けることで「ドリブルが上手になった」ことは無批判に受け入れてしまうのです。
「ドリブルが上手だね」とストレートにほめた場合と比べると、「いや、別に」と否定されにくいということがわかるはずです。注意点は、「どうして」と問いかける対象は、背が高い、足が長いという生まれついての資質に頼ることではなく、足が速い、パスが正確だといった努力や意識的な行動によって育まれるものにすることです。
まとめると、子どもにかけるほめフレーズの基本は以下の3点です。
・相手が受け入れやすい言葉を選ぶ
・言葉以外の部分(表情、声、動作)に、ほめる気持ちを込める
・才能ではなく、努力してできるようになったことをほめる
子どもをほめるには、ものすごくサッカーに詳しくなくてはならないわけでもないし、ボキャブラリーが豊富である必要もありません。きちんと子どもを見てあげて、この3点を念頭においてたくさんほめてあげてください。親御さんにとっても、その日の活躍をわが子と一緒に喜べるのは幸せなことですよね。
後編では、「自分のミスがきっかけで試合に負けてしまった」「試合になかなか出してもらえない」など、ほめどころが難しいシーンでのほめフレーズをご紹介します。
鈴木達也(すずき・たつや)
ヒューマン・コミュニケーション・センター代表。NLP(神経言語プログラミング)トレーナー。早稲田大学法学部卒業後、アクセンチュア株式会社に入社し、大規模プロジェクトの管理や上級管理職として社内採用人事などに携わる。それらのマネジメント経験を通し人の内的動機づけの必要性を痛感し、在職中からコミュニケーション手法やポジティブ心理学、脳科学などを学ぶ。現在はコンサルタント、コーチ、トレーナーとして独立し、セミナーや企業研修を行っている。プライベートでは小学生2児の父。著書「これだけ!ほめフレーズ」(すばる舎)
取材・文:小林博子 写真:田川秀之