■上手な子にも下手な子にもフラットな立ち位置から俯瞰する
この中で内藤総監督は、ついていけない子たちだけではなく、集団でもっともうまい大学生にも同様に負荷を与えています。
「風間さんは『学年は関係ない、うまいやつはうまい』という考えを持っています。つねに上のレベルに触れさせるために、他の年代に混じって大学生も一緒にプレーさせています。ただ、上のカテゴリーの選手がラクをできるわけでは全くありません。年長の選手からすれば、下の選手に激しくコンタクトしたりはできませんから。
大学生には『みんなはこの中で一番うまい。じゃあ、一度もボールに触れられることなくゴールしてみろ』という課題を与えたりします。単にボールを奪われないだけでなく、全く相手に触れられないまま前進することは、簡単ではありません。時間をかけたら囲まれる、その中でつねに先を予測し、コース取りをしながら、前進していく必要があります。当然、ぼくらとしては、彼ら大学生が下の年代の子どもたちの見本となってプレーしてくれることは本当に助かっていますが、いまJリーグでプレーしている選手でも、全員がそれをうまくできていたわけではありません。
もちろん、ひとり一人にそういう指示を出しているわけではありません。結局のところ、教えられるのではなく自分でやっているかどうかです。ぼく は、そこで一歩引いた位置から見て、気づいたことを伝えればいい。ひとつのボールに対して全員がどうしたいか、意志を持つ集団になっているか? そこを見ていますし、そうしたスタンスを維持しなくてはいけないと思っています」
ついていけない子に対しても、トップ集団の子に対しても、フラットな立ち位置で俯瞰すること……トラウムトレーニングさんの事例からは、こうした目線の重要性が伺えるのではないでしょうか。
取材協力/トラウムトレーニング
現・川崎フロンターレ監督の風間八宏氏が代表を務めるサッカースクール。同氏が提唱する世界に通じる"本物の技術"を習得することを目的とし、内藤清志総監督のもと5歳~18歳までの選手を育成している。また、トラウムとはドイツ語で"夢"を意味し、自らに期待し自分で"夢"を生み出すトレーニングのことを指している。
http://www.kazamayahiro8.jp/tratre/