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「サッカーは個性を尊重する大切さを学びやすい」いじめ、虐待防止の啓蒙活動に取り組む中村憲剛がオレンジリボン・ファミリーカップにかける想い

公開:2018年12月25日 更新:2023年10月16日

キーワード:オレンジリボンチャイルドアビューズ中村憲剛人権侵害児童虐待子どもの人権川崎市

2018年12月8日(土)、神奈川県川崎市が「第3回川崎市オレンジリボン・ファミリーカップ」を開催しました。同大会は、いじめと児童虐待防止の啓発活動の一環として川崎市が開催するフットサル大会で、この大会に第1回目から協力しつづけるのが、川崎フロンターレの中村憲剛選手です。

自身が設立した一般財団法人チャイルドワンでいじめや虐待防止の啓蒙活動を取り組む憲剛選手が参加する理由はひとつ。そこには「川崎市の子どもたちを守りたい」という強い想いがあります。

※2018年1225⽇に公開した記事に加筆して再掲載します。



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■オレンジリボンの活動を通じて、いじめや虐待の実態や対処法を知ってもらうことが大切

「心痛む児童虐待事案が世の中からなかなか無くならないというのが現実です」

オレンジリボン・ファミリーカップを主催する川崎市こども未来局の担当課長七海信一さんに、同大会のテーマについて尋ねると、開口一番にこのような言葉が飛び出しました。いじめや虐待は、急にはなくらない。それでも大会を定期的に続けるのは、「みなさんに、知ってもらうこと」が大切だからと続けます。

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「プレーする子どもたちはもちろん、コーチや親御さんたちにもオレンジリボンの活動を通じて、いじめや虐待の実態や対処法を知ってもらうことが大切です。今日の大会に参加している子どもたちが虐待されているとは思っていませんが、もしまわりの誰かが虐待されているかもしれない事実に直面したときに、川崎市の大人たちみんなで相談に乗ってあげてもらいたいです。一声かけてあげてほしい。」

毎年、川崎市に届くいじめや虐待の通報件数が増えてきているという。通報件数が増えたすべてが虐待やいじめの数の増加ではなく、一部は、みなさんの関心が高まりこれまで届かなかった情報が、届き始めているという意味もあります。

「もしかしたらいじめじゃないかもしれない。虐待じゃないかもしれないと思っても、可能性があるのであれば通報していただきたいです。早期発見と早期対応が大切だからです。」
また、七海さんは大人たちだけでなく、被害にあう可能性のある子どもにも伝えたいことがあります。それは嫌なことは嫌と伝えて、その場から逃げることと、大人に相談するということです。
「私達にできることには限りがありますし、それを実感しています。だからこそ、子どもたちが憧れ、発信力のある中村憲剛選手の参加は嬉しく思います。」

 

■「自分がやられて嫌なことは絶対にするな」中村憲剛がわが子に伝えるメッセージ

オレンジリボン・ファミリーカップに協力する中村憲剛選手は、自身が立ち上げた一般財団法人チャイルドワンで、いじめや虐待をなくそうと声を上げてきました。現役サッカー選手として多忙な日々を過ごすなかでも、積極的に活動を続けたてきたのには理由があります。

「オレンジリボン・ファミリーカップの取り組みも、僕がやっているチャイルドワンも"子どもを大切にする"という想いは同じ。そこで、3年くらい前からご一緒させてもらうことになりました。現役選手の僕が精力的に活動することに批判が出るかもしれないし、いじめや虐待がすぐに減るということはないと思いますけど、それでも僕はしっかりと地に足をつけて声を上げ続けていくことが大切だと思っています」

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中村選手が「チャイルドワン」を立ち上げたのが2012年。ライフワークのひとつとして活動を続けてきたのは、子どものころから疑問に思っていたことがあるからだと言います。

例えばですが、「学校のテストの点数が良かろうが悪かろうが、足が早かろうが遅かろうが、いいじゃないですか。それはテストの点数は良いにこしたことはないけど、それがいじめにつながる理由になることが、子どものころから疑問でした。それが、この活動を始めた理由のひとつでもあります。」

サッカーというスポーツを通してこそ伝えられることがあるはずだと中村選手は続けます。

「サッカーは、1人じゃできないスポーツですよね。例えばですが、それこそ足が速い子、遅い子、背が高い子、低い子など色々な個性が集まった中で、お互いの個性を認め合ってこのメンバーでどうやって試合に勝つかを考えていくスポーツ。だから、サッカーは個性を尊重する大切さを学びやすいんです。ところが、学校に行くとその個性の認識がサッカーの時と変わってしまう。そこでいじめが起こるケースもあることが現状なので、サッカーのグラウンドも教室も同じなんだよ、違わないんだよと伝えたいんです。だからサッカーでそれを経験している子たちには率先してみんなでそれぞれの個性を尊重して生活してほしいと思っています。」

サッカーで個性を尊重することの大切さを学んだ子どもたちに、それを学校に持ち込んでもらいたい。中村選手は川崎市のサッカー少年たちに期待の眼差しを注ぎます。そうすれば、学校でのいじめもなくなっていくはず。まだ閉鎖的な空気が漂う学校を、サッカーをプレーする子どもたちに変えていってもらいたい。これはサッカー選手として子どもたちの手本でいつづける中村選手らしい願いです。しかし、中村選手ひとりが呼びかけたところで子どもたちは変われません。いつも子どもたちと接しているお父さんお母さんの力こそ大切だと中村選手は言います。

「僕自身もサッカー少年の父親です。子育ては難しいし、苦労もたくさんあるけど、親の影響力はやっぱり大きい。だからこそ、子どもへの声かけは大切にしたいと思っています。内容もタイミングも。」

では、具体的に中村選手は子どもたちにどのような声がけをしているのでしょう。それはひとつも特別な言葉ではありませんでした。

「自分がやられて嫌なことは絶対にするな」

「相手の立場になって行動できるようになりなさい」

小学生の子どもを持つ親なら、一度は伝えたことがあるメッセージなのではないでしょうか。これを繰り返し伝えていくことが大切だと中村選手は言います。

「子どもは素直だから、思っていることをズケズケと言ってしまうところがあります。僕だって人間ですから、それを見てイライラしてしまうことはあるし、感情に任せて怒ってしまうこともあります。ただ、僕が言うことすべてが子どもたちにとって正しいとは限らない。だから子どもたちには、僕の言葉を彼ら自身がかみ砕いて自分なりの考えを養ってもらい、その後の言動につなげていってほしいと思います。彼らの考えを尊重してあげないといけないんですよね。」

いじめや虐待にあったとき、どのように判断して行動するか。その力を養ってあげられるのは、一番近くで接しているお父さんお母さんです。ところが「個性を尊重しなさい」と伝えている親自身が、子どもの判断を尊重できていない。そういうケースも少なくありません。子どもの自立心を養うあなたの振る舞いが、いじめや虐待をなくすことに直結するかもしれません。

 

■参加したチームのコーチたちの声

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川崎ジュニアフットボールクラブ 森陽一コーチ

ちょうどフットサルの大会に参加したいというタイミングだったのと、中村憲剛さんの「チャイルドワン」というプロジェクトも知っていて興味があったので、いい機会になりました。サッカーがチームスポーツですし町クラブなので、どうしても子どもたちのプレーレベルには差がありますが、実力は関係なくみんなが出られてのびのびプレーできる場にしたいと思っていました。みんな楽しんでもらえればいいですね。

多摩ジュニアサッカークラブ 橋本亮之コーチ

オレンジリボンの趣旨に賛同して、大会に参加しました。点が入ったらみんなで喜ぶというのを心がけています。うちのチームは、コーチたちが試合に出るメンバーを決めるというよりは、子どもたちの意見に任せています。どこが好きなポジションか、得意なポジションかというのは子どもたちが一番わかっているので、僕たちコーチは少し調整するくらいですね。子どもたちが中学校に行ったときに好きなポジションができるように、みんな、どのポジションもできるようにしています。小学校は楽しくやって、中学生になったときにサッカーを続けてくれるような指導を心がけています。

新城サッカークラブ  一寸木善浩コーチ

今回、この大会に参加するのは2回目です。普段からお母さんたちには、子どもたちを褒めてもらうようにお願いしています。外から子どものプレーを見て、ああしろ、こうしろというのではなくて、まずは褒めてあげてほしい。そういう声をかけてもらうように伝えています。とにかく子どもたちが元気に楽しくプレーしてくれればいいし、それを見てお父さんお母さんが喜んでくれれば、それがオレンジリボンの趣旨にあうのではと思っています。オレンジリボンの大会に参加することで、子どもたちはもちろん、お父さんお母さんもそういうコンセプトに触れる機会になりますよね。応援に来てもらって認知してもらうことが、私の役割かなと思っています。

フットボールクラブジェッツ 山本真士コーチ

この大会は初めて参加させてもらいました。うちの子たちはあんまりフットサルをプレーしたことがなくて、普段は8人制のサッカーをメインでプレーしています。私は試合中には基本的には子どもたちに何も言わないようにしています。自分もサッカー少年の保護者ですが、子どものプレーに対して何か言っちゃうと、それを子どもたちは実現できないし、そこでプレーに広がりがなくなっちゃうので成長が止まってしまうのではないかと思います。例えば、後ろを向いてトラップした子に、「今の後ろを向いてトラップしたのはよくなかったよね」って言ってしまうと、その子が後ろを向いた理由があったとしたら否定してしまうことになってしまいますよね。そこはコーチが潰しちゃいけないと思っています。今日はみんながのびのびとプレーしてくれたらと思っています。

 

2018年1225⽇に公開した記事に加筆して再掲載します。

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■もしかして?と思ったら

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※大会当日は、保護者・コーチ、選手たちに中村選手のコメント入りカードが配布された。

「相談は匿名でも構いません。秘密は守ります。」

虐待かと思ったら189(いちはやく)番へ
電話:児童相談所全国共通ダイヤル189
※通話料がかかります。

<川崎市の方>
川崎市児童虐待防止センター
電話:0120-847-124(毎日24時間、通話無料)

24時間子どもSOS電話相談
電話:044-522-3293
※通話料がかかります。

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