■柔軟性の低さをカバーする基本スペックの高さ
正直なところ、身体的な弱点を探すのが難しい選手です。強いていうならば、柔軟性の低さでしょうか。ネイマールのような柔軟性は、メッシにはありません。バランスを一度崩すと、それを取り戻すのは苦手だと思います。意外と重心は前のほうにあり、猫背気味で、頭が前に出ているという特徴があります。
メッシを倒すなら、背中や首の上を後ろから小突くことで、態勢を崩せはするでしょう。しかし、先ごろから述べているように、尋常ではない反応速度があります。小突くといっても、それは「彼の身体に触れることができるなら」の話。それほど、メッシの基本スペックは図抜けているのです。
これは技術面の話になりますが、ドリブルの時に軽くバックスピンを掛けているのもポイントですね。メッシのドリブルは、ボールと自分の身体との距離が非常に短く、タッチ数が多いです。常に自分の周囲にボールを置き、軽くバックスピンを掛けてボールが足元に戻ってくるようにしています。「足に吸い付くような」と表現されるドリブルの正体はこれです。
■柔軟性を落とさないようなトレーニングでメッシの特性は保たれる
メッシは27歳と、今後まだまだ活躍できるでしょう。ただ、歳を取るほどに身体は固くなっていきます。ストレッチ、身体をほぐす、ケアをする、そういう柔軟性が落ちないようなトレーニングを積んでいけば、年齢を重ねても特性を失わずに活躍できると思います。
逆に、30歳を過ぎてパフォーマンスが落ちていく選手というのは、柔軟性の確保を怠っている選手が多いですね。オランダのスナイデルなどに、その気配を感じました。しっかりほぐして、柔軟に動ける身体を維持することです。筋トレばかりして、身体を固める方向に行かないようにせねばなりません(正直なところ、メッシも2~3年前と比べると固くなっている印象を受けています)。
もしメッシのような選手になりたいと思うなら、反応速度を早める訓練をするのが有効でしょう。合図があったら素早く反応する、掛け声に反応してすぐに踏み出すとか。子どもたちに導入するのであれば、おもしろく取り組めるような内容を工夫してみると良いでしょう。
また、足で動こうとするのではなく、胸の中心にある重心を行きたい方向に素早く倒していく、そういう練習をすれば良いと思います。あくまで、重要なのは重心を素早く移動させることです。支持基底面の外に重心を出すことは怖いことですが、それらの動きをパッパッとできるようになれば、俊敏に動けるようになると思います。
Oriental Physio Academy副代表 高木翔
Oriental Physio Academy
2014年1月1日設立の理学療法士集団。"理学療法と東洋医学の融合"を掲げ、治療の可能性を追求するセラピストに対し様々な提案を行う。トリガーポイント療法、筋肉や筋膜の連鎖、東洋医学で使われる経路や経穴の知識、東洋医学の五行論を用いた筋膜やトリガーポイントの連鎖に関する知識、武術を応用したスポーツ動作など、提供する知識の幅は多岐にわたる。
代表の波田野征美(はたの・まさはる)、副代表の高木翔(たかぎ・しょう)をはじめとする5名の理学療法士・柔道整復師、1名のメディア担当者で構成。トリガーポイント療法を軸とした理学療法士向けセミナーは全国各地で大盛況、関東圏のセミナーは発表からほどなく満席となる大人気を誇っている。
治療・執筆・セミナー・講演・コンサルティング(選手・チーム)の依頼・お問い合わせはメディア担当・澤山(さわやま)まで。
Oriental Physio Academy 澤山大輔