■天候状況に応じて臨機応変に対応すべし
また、天候状況や季節なども考慮して、臨機応変に対応する必要もあります。
「真夏の炎天下でストレッチを行えば、十分にリラックスはできませんし、体力を消耗してしまうでしょう。冬場であれば寒さを考慮して上着を着用してからクールダウンを行う必要もあるでしょう。実は、私も以前失敗したことがあります。クールダウン中に急激に気温が冷え込んでしまい、ある選手が「ちょっと寒い」と言葉を漏らしたのですが、私は残り数分で終える予定だったので大丈夫だろうとそのまま見過ごしてしまったのです。すると案の定、その選手は風邪を引いてしまいました。クールダウンでたとえ筋力の硬直を防げても、選手に風邪を引かせてしまっては本末転倒です。クールダウンの際には、指導者の方は、子どもたちにコーチングをしながらしっかりクールダウンに集中させる一方で、その環境状況に柔軟に対応しながら、かつ、子どもたちの顔色や体調などをしっかり見極めて進めるようにしてください」
■クールダウンの重要性を子どもに理解してもらう
大切なことは、たとえ短い時間であっても、クールダウンが運動後に必要なものだと理解し、習慣化させることです。
「そもそも筋肉が柔らかい小学生にクールダウンやストレッチが必要なのか、という意見もあると思います。実際、高学年を見ても筋肉が柔らかい子どもはたくさんいます。それでも僕が必要だと感じるのは、子どもたちに『自分の身体はこういうものなんだよ』『ストレッチやクールダウンは重要なんだよ』ということを早い段階から伝えることにあります。子どもの身体は中学生に近づくにつれて成長期を迎えますし、放っておけば身体はだんだんと硬くなっていきます。ですから、小学1、2年生の段階ではまだ必要はないと思いますが、3年生からは実施して習慣化させるべきだと思います」
同じような観点から、金成さんはクールダウンと同様にウォームアップもとても重要だと続けます。
「ウォームアップで子どもたちにおススメしたいのがセルフアップです。プロのサッカー選手たちもチーム全体のウォームアップが始まる前の10分前にはグラウンドに出られるように準備をして、セルフアップをする、という指導がなされています。選手個々で身体のコンディションは異なります。セルフアップとして、軽いジョギングをしたり、簡単なストレッチをしたり、ブラジル体操をしたりしながら『今日は身体が少し重いな』『ちょっとここが痛いな』という細かい感覚を自分自身で掴んでおけばケガの予防にもつながります。
子どもたちのウォームアップといえば、早くグラウンドに来た子どもたち同士でボールを蹴り合って楽しんでいる光景が多いと思いますが、その前に子どもたちがそれぞれでセルフアップをする時間を少しでもいいのでとり入れてほしいと感じます。そのためには、指導者が子どもたちに『自分の身体はどうなのかな?』『昨日の練習前と今日の練習前ではどう違うかな?』と投げかけてみることが重要。子どもに対する教育という観点でもぜひ前向きに取り組んでみてください」
クールダウンやウォームアップなどのコンディショニングにおいても自立した子どもをつくっていく――。そのためにも、コーチ自身がより高い意識を持つことが求められているのです。
金成仙太郎
ジュニアからトップアスリートまで(J1リーグチーム・日本代表ユース年代・中学高校大学サッカー部・サッカー大会など)幅広いカテゴリー・レベルの選手をサポート。国際スポーツ医科学研究所代表取締役としてだけでなく、勝浦整形外科クリニック理学療法士/パーソナルトレーナー/大学専門学校講師/セミナー開催など多方面で活躍している。現在はできるだけ多くのサッカー選手をサポートするために、全国から医療従事者・アスレティックトレーナーを集めたサポート活動を展開中。
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取材・文/杜乃伍真 写真/サカイク編集部