運動能力
試合中の一歩目が速くなる! 正しいトレーニングのコツを学べる『タニラダー講習会』
公開:2017年10月20日 更新:2023年6月30日
夏の日差しが照りつける10月上旬、神奈川県伊勢原市でタニラダー講習会が行われました。参加したのは、伊勢原市で活動するFCしらゆりシーガルスの小学校5年生。はたして、トレーニング前と終了後では、身体の使い方、動かし方にどのような変化があったのでしょうか?
トレーニング前、講習会のコーチを務める荻原孝俊さんとシーガルスの江原健仁コーチが、チームの実情やトレーニングについてディスカッションを始めます。タニラダーのチーム向け講習会では「講習会を受けた後、日々の練習でコーチが指導できるように」という観点から、事前にコーチにトレーニングの内容、方法がレクチャーされます。
江原コーチは、タニラダー講習会を受けるきっかけを次のように話します。 「アジリティーはこの年代に必要なものなので、専門家に来てもらって、子供たちに正しい方法を体験して欲しい。指導者としても勉強させてもらいたいと思い、お願いしました。子供たちを見ていると、動きが重かったり、足が上がらない子が多くて、アジリティーはこの学年の課題です。トレーニングのポイントやコツを学びながら、日々の練習に落とし込んでいければと思っています」
荻原コーチによるレクチャーを終えたところで、いよいよトレーニングがスタート。まずは走るフォームのチェックから。子供たちには20メートル先のマーカーを目指し、最初は50%の力で走り、次から60%、70%、80%、90%、100%とスピードを上げる感覚を意識してもらいます。
走り終えた子供たちからは「調整するのがむずかしい!」という声があがり、荻原コーチは「何%の力で走ったときが、スムーズに動くことができた?」と質問をします。すると、子供たちの答えは「70%」が一番多く、「100%で走るとすぐに疲れちゃう」という意見も出ました。
そこで荻原コーチは「実は、70%から90%の力で走る時が、もっともスピードが出るんです。速く走ろうと思ったら、その間の力加減で走りましょう。全力で走ると筋肉に力が入って関節の動きが悪くなり、遅くなってしまうんです」とアドバイス。子供たちは「なるほど~」と合点がいった様子。
続いて、荻原コーチは「速く走るための正しい姿勢」「横から押されても、倒れずに踏ん張ることのできる足幅」「速く走るための腕の振り方、手の握り方、足の上げ方」などを丁寧に説明していきます。
およそ1時間をかけて、速く走るための基礎を学んだところで、ここからはタニラダーを使ったトレーニングに取り掛かります。最初は3段階のスピードに分かれたBGMにあわせて、ここまで習った腕の振りや姿勢、足を上げる高さを意識しながら、ラダーの間を駆けて行きます。子供たちは音楽にあわせて手拍子を打ち、楽しそうに走っていきます。
音楽のリズムにスピードを合わせて走っていると、荻原コーチからアドバイスが送られました。
「音楽のスピードが上がったことで、半分以上の人がドスドスと地面を強く踏んで走っていますね。これは足に力が入っているのと、地面に足を着けている時間が長いからなんです。地面が熱々の鉄板だと思って、足を着いたらすぐに引き上げましょう」
このアドバイスを実行することで、子供たちの走る姿勢が如実に変わり始めます。猫背で下を見て走る子はほとんどおらず、背筋が伸びた状態で前を見て、前傾姿勢で腕を振り、足を素早く動かすことができています。
荻原コーチは「素直に言うことを聞いて実行する子は、すぐに動きが変わりますよ」と、子供たちの変化に目を細めます。さらにトレーニングはターンなど、方向転換をするときに必要な「ひざをロックする動き」へ。後ろに下がる時や左右にターンをするときに、ひざを曲げずに内側に向けて、つま先とひざの方向を同じにすることで、地面を素早く蹴って方向を変える方法を学んでいきます。
トレーニングでは足首、ひざ、股関節を完全に曲げないように意識して、上にジャンプをします。その後、ラダーのマスの間を、両足を揃えてジャンプします。このように、ステップワークなどに必要な動作を切り取り、繰り返し行うことで身体に染み込ませていきます。
さらに、トレーニングはよりサッカーの動きに近づいていきます。斜め前に出る動き、前後の方向転換などラダーを使って体験していき、最後は「球際の守備時に、相手より先にボールを触るための動き方」にチャレンジ。ここでは「ボールに触ろうとせず、相手とボールの間にあるスペースに入る」というポイントから、荻原コーチが実践します。
「日本の選手は、守備時に相手と1対1で向き合ったとき、相手がドリブルで自分の横を抜いていこうとする際に、ボールを奪いたいのでまずボールへと寄っていきます。しかし、海外の選手はどうするかというと、ボールと相手の間に身体を入れて、相手の動きをブロックしてから、ボールを自分のものにします。ポイントは、相手とボールの間のスペースを奪うことです」
さらに荻原コーチは「腕ではなく、肩甲骨で相手を抑える」「肩ではなく、お尻で相手に当たるチャージ」など、実践的なテクニックを次々に教えていきます。ここで習ったポイントをもとに、ボールを使って球際の競り合いをしてみると、明らかに子供たちの動きが変わり、迫力のある攻防が繰り広げられていきます。
5年生の原田小雪さんは「自分は体が小さいので、大きい子を相手にしたときに、教わったことをやってみたら上手くプレーできた。これからも練習していきたい」と、充実した表情で感想を話してくれました。
シーガルスの江原コーチも「子供たちの動きが変わりましたし、球際の競り合いも腕だけでなく、身体のパワーを使ってぶつかっていたので迫力を感じました。サッカーはコンタクトプレーが多いスポーツなので、正しい体の使い方や動かし方を知らないとケガにつながりますし、勝負の分かれ目にもなると思います。今日、体験したことを明日以降のトレーニングでも継続してやっていきたいです」と、たくさんの知識と刺激を得た様子でした。
子供のうちから、正しい身体の動かし方を身につけることは、サッカーを続けていく上で大きなアドバンテージなります。子供たちはサッカー選手に必要な動きのコツを身につけ、実りある時間を過ごすことができたようでした。
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