「どうすれば、速く走ったり速く動くことができるのだろう」と、"スピード"に関する悩みや疑問は、サッカーをしている人であればだれでも持つものだと思います。
そこで今回は、一番速いテンポで、疲労を残さないスピードアップトレーニング「タニラダー」を考案したヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチの谷真一郎コーチに、タニラダーを使ったトレーニング方法やポイント、アドバイスを教えてもらいました。実演の様子を映像も交えながらご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
※映像は私用目的の撮影素材のため、一部見づらかったり、聞こえづらいところがあります。予めご了承ください。
■走りやターンに必要な「推進力」を得るために重要なパワーポジションの探し方
パワーポジションとは、「走りやターンなどの動作に必要な推進力を、もっとも得ることができる足幅」のことを言います。推進力は「地面反力」(地面を押して返ってくる力)から得ることができます。そこで、足幅の間隔が広すぎると地面を押すことができず、足幅が狭すぎても、得られる推進力が小さくなります。
「まずは地面に足をついて、一番地面を蹴りやすく、力が跳ね返ってくる所を探してみましょう。肩幅で立って地面を押し、そこから少しずつ足幅を広げて地面を蹴れば、力が入りやすく、素早く動けるようになります」(谷コーチ)
パワーポジションはターンや方向転換などをスムーズに行うために、とっても大事なものです。みなさんも自分に合ったパワーポジションを探し、日々の動きで意識してみましょう。
※「タニラダーアドバンスドDVD」より一部抜粋・編集したものです。
実際の映像に字幕はつきません
■スピードをアップさせる走り方
先ほど紹介したパワーポジションを意識しながらタニラダー使ってスピードをアップさせる方法を紹介していきます。
【方法】
マスの真ん中で右足、左足と1回ずつステップを踏み、次のマスへ進む。
【ポイント】
下半身だけで動くのではなく、腕の振りを使って、上半身と下半身が連動した状態で走る。足元を見ない。
【アドバイス】
力みはスピードを落とす原因になるので、リラックスして、無駄な力を入れずに80~90%の力で動く感覚をつかみましょう。肩に力を入れず、普段走る時と同じように両腕をしっかりと振ること。それが走りの動きのスピードアップにつながります。トレーニング中、何人か足元を見て、ラダーを踏み違えないようにしている選手がいましたが、それをしてしまうと、上半身と下半身が連動しません。プレー中と同じように、間接視野で足元を見るようにしましょう。
※谷コーチによるタニラダー講習会の映像
■試合中に頻出する「前後の動き」をトレーニング
続いては「前後の動き」をスムーズにするための身体の使い方を、ラダーを使って会得します。試合中によくあるのが、前方へと走っていたところ、ボールや相手の動きにあわせて急に止まり、後方へと下がる場面。そのとき、利き足を地面にどのように着けば、スムーズに前から後ろへと進行方向を変えることができるのでしょうか?
【方法】
ラダーの横(長辺の部分)に立ち、腰をひねる動きで右足、左足を交互に出して、マスの真ん中に足を入れる。
【ポイント】
80~90%の力で素早く右足、左足と交互に踏み変える。腰をひねってひざを内側に入れる動きを意識し、地面を蹴る。
【アドバイス】
前方へ走っている状態で下がろうとして止まる時、前方へ重心をかけてひざを曲げてしまうと、その分時間とエネルギーのロスが生じてしまいます。そのため、進行方向にまっすぐではなく、"ひざをロック"した状態で地面を蹴り、後ろへと進行方向を変えます。そうすることで無駄な時間、動きのロスが減り、すばやく方向を変えることができます。
※「タニラダーアドバンスドDVD」より一部抜粋・編集したものです。
実際の映像に字幕はつきません
「最初のうちは意識しながら行い、それを繰り返すことで無意識のうちにできるようになることが理想です。ゴールデンエイジ(約10~12歳頃)の年代は吸収が早いので、ラダートレーニングをすることで、自然と動きがスムーズになっていくと思います」(谷コーチ)
ラダートレーニングは週に1~2回実施すると、スピードアップやスムーズな身体の使い方習得に効果があるそうです。クラブでのウォーミングアップ時や自主練に取り入れてみてはいかかでしょうか。
谷真一郎コーチ(ヴァンフォーレ甲府・フィジカルコーチ)//
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』
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