運動能力
バレエの動きがサッカーにも役立つ? 身体の軸を強くする、驚くべきその共通点とは
公開:2019年5月28日 更新:2023年6月30日
バレエとサッカーに共通点がある、と聞いてもあまりピンとこないかもしれませんね。
しかし意外なことに実はこの二つの競技には同じ要素があるのだそうです。それは、自分の身体を動かす技術です。サッカーにおいて上手くなるためにもケガをしにくい身体をつくるためにも、自分の身体を思い通りに動かすことはとても重要な事です。
今回はイングランドやタイなどでアスレティックトレーナー、メディカルトレーナーとして多くの実務経験を積み、現在は日本のスポーツ医療体制を変えるコミュニティ「Spolink JAPAN」の代表を務める奥村正樹さんに、バレエの軸、身体感覚、そしてサッカーについてお話をうかがいました。(取材:内藤秀明)
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■サッカーとバレエの共通項
ではサッカーとバレエではどのような共通項があるのでしょうか。
「僕はバレエにはスポーツ全般の基礎的な動作が多く存在すると思います。身体を思い通りに動かす、バランスを取る位置をキープするということは全てのスポーツに通じることです」と奥村さんは語ります。
「バレエダンサーの人は、狭い支持面で身体を扱えます。重心を留めて置くのがうまいのかなと思います。ただ、多くのサッカー選手はこれらが安定していないことが多いいため、試合の中のコンタクトですぐバランスを崩しちゃうことが多いのかなと。逆にそこが安定していれば高く足を上げても身体のバランスが崩れないんです。だから、重心をしっかり留めて置けるタイプのズラタン・イブラヒモヴィッチ(元スウェーデン代表)など、高めのボレーシュートが得意なイメージの選手たちは、軸足でしっかり身体をさえられるため、普通ならどこで処理するか迷う高さのボールに余裕で足が届いてシュートまで持ち込めたんですよ」
■身体の軸に関する誤解
またバレエの考え方に軸というものがあります。
「日本人は軸や重心についてに『重心=へそ(丹田)から動かない』と考えている方が多い印象です。ただ本当は体勢が変わると重心も移動するんです。
それと日本人の場合、立った状態で『体の軸を通す』=気をつけ姿勢 と思っている節が強いように感じますが、軸が通ってる状態とは『余計な力を入れない、でも自然にキュッと身体の中心に力が入っている』ということです。
立った状態で肩を押されて左右にフラフラしてしまうのは軸が定まってないんです。体軸がしっかり機能していると力を入れてないのに、押されても微動だにしない状態になるんですよ。そういう身体の仕組み、使い方を知ることはすごく大事かなと思いますね」
■身体の軸がどこにあるのか、どうやって知るの?
奥村さんには子ども向けによく説明する内容があると言います。
「まずは『気をつけ』をさせます。その状態で身体に力を入れてもらって、どのくらいの時間耐えられるかを試します。そしてフラフラするようならちょっと力を抜いてもらいます。やってみるとわかると思いますが、意識して力を抜くというのは思いのほか難しいので、5秒ほど思いっきり身体に力を入れてもらい、その後ストンと全部抜いてもらいます。あえて一度力をいれたほうが、力を抜きやすく、一番脱力できている状態を感覚でつかめるのです。
その感覚を掴んだ状態で、肩を推して横に揺らしてみたりしてみて『さっきと今、どっちの方が安定してる?』と問いかけます。そうするとことで脱力状態を掴んでいきます。また、脱力状態を身体で理解することで、気を付けをしていた時どこに力が入っていたか気づくことができます。
ビジネスシーンなどでも日本人は力を抜くのが下手とよく言われますけど、身体の使い方に関してもそうなのかなと思います」
■脱力できない弊害とは
このような身体感覚を身につけていない弊害がプレーに出ることもあるそうです。
「身体(胴体)と足の動きが一体にならないんですよ。例えば守備の場面、ボールをカットしようとすると、足だけが出てしまうことが多いです。もし足と身体が連動していればもう少し相手に寄せることができますし、相手が仕掛けてきた後にもリアクションがとりやすいんです。
足だけが出てしまう状態だと、距離が足りない、もしくは次のアクションが遅れてしまうのでかわされてしまいます。
そのため常に身体を足と一緒に運べることが大事だと思います。なので『身体が足の幅についていける』歩幅の感覚をつかむことが重要です。
日本人は理想の位置より遠くに足を踏み出しています。速く走ろうとする時に足ばっかり先に動いています。いわゆる腿を上げて足から出てしまう状態のことです」
■イングランドの練習見学で発見
では身体感覚をつかむには、子ども達は何をすればいいのでしょうか。
「いろんなスポーツをすることが良いのではないかと思います。『サッカー以外をプレーして、サッカーが上手くなるのか』は、よく議論されるテーマですが、僕は子どものうちはサッカー以外もプレーすべきだと思いますね。
2018年11月にイングランドの強豪トッテナム・ホットスパーFCの練習を見学して、そこのコーチングスタッフに話を聞く機会があったんですが、彼らは『最初のウォーミングアップ30分間は足以外の箇所を使ったボールコーディネーションをする』とのことでした。
これはU-7ぐらいからU-12までの全年代に共通しています。例えばラグビーや、アイルランドで人気の『ゲーリックフットボール』(手を使ってもいいサッカー。ラグビーとサッカーのルールが合わさったようなスポーツ)などをトッテナムでは取り入れているそうです。他にはトランポリンを使ってボールを投げたりキャッチする、上半身のコーディネーショントレーニングをしています」
とイングランドの事例も明かしてくれました。
小学生年代から意識してほしいのは、体軸・体幹だけを意識するのではなく自分の身体を自由自在に使えるように、軸がどこにあるのか自分の身体を知る事や身体感覚をつかむこと、そのためにしっかり脱力できることです。
トレーニングの中だけでなく、日常生活で意識できることなのでぜひ親子でも一緒に実践してみてください。
次回は、サッカーの上達やケガ減少にも関わる「足裏の重要性」についてお送りします。
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奥村正樹(おくむら・まさき)
アスレティックトレーナー、メディカルトレーナー、鍼灸師
専門学校を卒業したのち、スポーツに特化した整形外科や接骨院に勤務して外傷治療や主義を学んだ後、2015年に渡英。イングリッシュ6部リーグのセミプロチームでトレーナーとしての経験を積む。イングランド在住時には元日本代表FWの岡崎慎司選手のパーソナルトレーナーも務めた。その後当時タイ2部リーグに所属していたシンブリーFCと契約。約1年間タイで現場経験を積んだのち帰国。現在はフリーランスのトレーナーとしてJリーガーのパーソナルトレーナーなどを務めている。
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