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世界のクラブが日本人選手に求めるスキルとは。レアル中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法

公開:2020年10月27日 更新:2023年6月30日

キーワード:スペインチームワークリーガエスパニョーラレアルマドリード中井卓大判断力海外サッカー

「将来海外でプレーしたい」

そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。

新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。

今回は改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、などを、全4回にわたってインタビューでお届けします。

 

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第2回:中井卓大選手、久保建英選手のように若くして海外へ渡るメリット、デメリットとは>>

 

 

■レアルの中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法

――世界で戦える選手を間近で見てきた稲若さんが考える、世界のトッププレイヤーが持っているものとは何でしょうか。

「技術、メンタル、フィジカルがあることは大前提ですが、世界で活躍するトップレベルの選手たちは自分で『習慣』を作ることができます。先日、元スペイン代表監督のロベルト・モレロが話していました。メッシやネイマール、スアレスのようなスーパースターは何が違うのかといえば、『サッカーの中で生活をしている』と」


――24時間、サッカー選手ということですか?

「そうです。例えば、スポーツドリンクは糖分が入っているから飲まない、といった日々の行動を徹底的に習慣にしていける選手が世界に行けます。プロでもピッチ上では頑張っていても、ピッチ外のちょっとした誘惑に負けてしまう選手もいます。でも、世界のトッププレイヤーたちは例外なく細部に気を遣っているし、それを当たり前にできています」

 

――その点、稲若さんがずっと間近で見てきた中井卓大選手(レアル・マドリード所属)はどうでしょうか?

「僕はピピ(中井卓大選手の愛称)のことを8歳から知っていますが、8歳の頃から毎日、朝起きたら欠かさずストレッチや体幹、ボールタッチをしてきました。歯を磨くのも朝ご飯を食べるのも30分のトレーニングのあとで、雨が降ろうがサボったことはないと思います。『毎日が勝負』というスタンスで、一段ずつ階段をのぼっていった選手です。最初からレアル・マドリードの今のカテゴリーまでたどり着けるという考えはなかったと思いますし、まずは自分のいるカテゴリーで全力を尽くし、その結果、また次のカテゴリーへと。その繰り返しでのぼっていったのです。正直、ピピが今のようになるとは思っていませんでしたが、ピピは人一倍努力をして、一歩ずつ階段をのぼっていった先に今のカテゴリーまで上がったという選手です」

 

■世界のクラブが日本人選手に求めているものとは?

――世界のクラブは日本人選手に何を期待しているのでしょうか?

「一般的に日本人は『真面目』『監督の言うことは聞く』『言われたことはできる』という評価をされています。ただ、今の久保建英選手(ビジャレアル)もそうですが、チームでのポジショニングのバランスやディフェンス力の低さが試合出場を阻む足かせになっているように見えます。日本では『うまい選手が海外で使われる』と思っている人も少なくないかもしれませんが、欧州ではまず『チームにハマる選手が使われる』というのが常識です」

 


――チームにハマるというのは?

「技術が高いのではなく、"何かをしっかりと持っている選手"です。『言われたことをしっかりできる』『ポジショニングをミスしない』『ボールを取られてはいけない場所で絶対に取られない』といったことです。たとえ技術が高くても、チームの一員としてハマるための力が劣っていると、監督は『まだ使えないな』と判断するということです。試合に勝つことができる監督は、何より11人全員がしっかりと意図どおりに動けるかを見ています」

 


――それを踏まえて、日本人選手が海外のスカウトから目に留まるためには?

「目に留まるのは、ボールをこねくり回す選手ではなく、走るときに走る、守るときに守れる、そういった判断力が高い選手が評価されます。その上で、結果を残せば目に留まる可能性は高まります。どうしたってチームが弱ければ個々の活躍はなかなか目につきません。チームがある程度は強く、チームの中でやるべきプレーを体現しながら、DFならば1対1に負けない、FWならばゴールを奪う、そうやって個人として結果を残せる選手が目に留まります」

 


――ちなみに、日本のU‐12世代と海外の子どもたちの違いは感じますか?

「スペイン代表やレアル・マドリードで活躍したミッチェル・サルガドとは2013年からの付き合いになりますが、そんなサルガドがよく日本の子どもたちを見て『リアルがない』と言います。シュート練習をするときに子どもたちが『これはワンタッチですか?』と聞くことに対して『グラウンドにいるのは自分。コーチに聞く前に常に自分で判断しなさい』と指摘する光景をよく見ます。これには親の過保護も関係しているのだと思います。夏場の熱中症対策として子どもに帽子を被らせてサッカーをさせる親もいます。子どもの命を守る対策を取ること自体はおかしくありませんが、低学年のうちだけならまだしも、高学年になっても親が「○○しなさい」と指示して、子どもに判断させないこともあります。危ないからと言って子どもからリアルを奪ってしまえば、結局子どもは逞しくならず、試合にも勝てません。サルガドがいう『リアルがない』を真剣に考えるべきだと思います」

 


――その差を埋めるためにはどうすれば?

「日本の場合、親はサッカーをあまり見ないし、指導者も海外まで行って現地のサッカーを見るための時間も取れない忙しさなので、結局は自分の経験則だけで指導してしまう傾向が強いと思います。そうなると、サッカーについて周りが正解をわかっていないから、子どもが迷子になってしまう。海外の場合、指導者たちは常に近隣諸国のサッカーを見に行ってアップデートを繰り返しています。そういう指導者が親から『何でうちの子は起用されないのか?』などと突っ込まれても、理路整然と答えることができるだけの理論武装ができています。だから親にも指導者に対するリスペクトがあるので、指導者と親の距離感が近いという関係性があります。この海外のリアルを知るためには、やはり自分の肌で感じるしかないと思います。同年代のバルサの子どもたちのプレーをYouTubeなど動画サービスで見たときに『うまい!』と思っても、実際にどのくらいうまいのか、どのくらい差があるかはわかりません。指導者も、子どもも、親も、実際に海外に行って体感しないとわからない明確な差というものがあるし、わかった気にならないで、現地で体感することをスタートラインにしてはどうでしょうか」

 

第2回:中井卓大選手、久保建英選手のように若くして海外へ渡るメリット、デメリットとは>>

 

稲若健志(いなわか・たけし)
株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。

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世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること

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取材・文:鈴木康浩 写真:稲若健志

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