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かかとが痛い!を予防して一瞬のスピードを上げる。元スペイン1部のトレーナーが提唱する「足指の使い方」

公開:2018年1月30日 更新:2020年3月24日

キーワード:いい姿勢かかと痛けがエスパニョールオスグッドシーバー病スペイン骨盤

サッカーをする子どもたちにとって、怪我はその楽しみを奪う厄介な"敵"です。

なかでも、成長期においてはオスグッド(ヒザの痛み)や、シーバー病(かかとの痛み)、あるいはグロインペイン症候群(股関節の痛み)といった、スポーツ障害に悩まされる子どもが多くいます。

なぜ、そのような障害が引き起こるのか。ならないためにはどうすればいいのか。スペインの強豪RCDエスパニョールや、Jリーグのベガルタ仙台でトレーナーを務めていたアスレティック・トレーナーの松井真弥さんに、スポーツ障害の痛みの原因と、予防について話を伺いました。

前回はヒザの痛みについてお送りしましたが、今回は「かかとの痛み」についてお送りします。

(取材・文:原山裕平)

かかとの痛みを防ぐ
トレーニング動画はこちら

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(写真はU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017より)

<<太ももガッチリ体型は要注意!? スペインと比べて日本の子どもにオスグッドが多い理由と予防策

■かかと痛はオスグッドとセット?

オスグッドとともに、成長期における代表的なスポーツ障害のひとつに、シーバー病があります。これはかかとの骨に炎症が起きる症状で、状態によっては痛みだけでなく、腫れを伴う場合もあるといいます。

このシーバー病は何が原因で起きるものなのでしょうか。松井さんは痛みが生まれる理由を次のように説明します。

「ふくらはぎの筋肉はみっつあり、アキレス腱につながっています。アキレス腱は踵の骨に接地しているのですが、ふくらはぎの筋肉に負担がかかることで、腱が骨を引っ張る状態となってしまい、踵に痛みが起こるのです」

原因は踵そのものにあるのではなく、ふくらはぎの筋肉にあります。太ももの筋肉に負担がかかることで、ヒザの痛みを引き起こすオスグッドと同じメカニズムであり、治療法も同様に根本的な部分、つまり正しい姿勢の習得が求められることになります。

松井さんによれば、オスグッドになる子は、シーバー病になってしまうケースが少なくないと言います。それは、正しい姿勢でプレーできておらず、筋肉に余計な負担がかかっているからです。

「太ももやふくらはぎだけでなく、他の部分も使って身体全体で動いてあげるようなイメージを持つことが大事になります」

オスグットの予防と同様に、ここでも重要なのが骨盤を前傾させること。また背骨の動きも大事になります。

松井さんが提唱するのは、できる限り足をふんばらないで、動くことです。

「腰が落ちた状態で動こうとすると、どうしても地面を蹴る際に、拇指球に力が入ってしまいます。その動きを繰り返すなかで、太ももやふくらはぎの筋肉がダメージを受けてしまう。意識したいのは、動き出す際に足で地面を蹴るのではなく、身体の重心から動くということ。おへそから動き出してあげるイメージですね。姿勢を良くして、ふんばらない。そういう動きに変えてあげたら、間違いなく足の負担は減ります

■大事なのは小指

足を踏ん張らないで動くためには、親趾ではなく、小趾を使うことも大事だと言います。

「地面を蹴る際にはどうしても親指を使いがちですが、小指を上手く使ってあげると、負担が少なく動けるようになります。足を付くときも、つま先からではなく、足全体で受け止めるような感覚がいいでしょう」

小趾を意識すると、怪我の予防だけでなく、動きの改善にもつながるそうです。親趾を使えば地面を蹴る強さも増しますが、一方で動きにブレーキがかかることにもなるからです。ふんばることで一瞬の動きも遅れてしまい、瞬発力の低下につながってしまうのです。

小趾を使う動きを習得すれば、足の負担も減りますし、身体全体で動くことにもつながる。一瞬のスピードが変わってくるはずです」

■筋力アップは改善にはつながらない

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(ヒザの痛みのコラムでも紹介しましたが、余分な筋肉がつくことで痛みを引き起こすケースも)

ふくらはぎの筋肉の負担がかかることで痛みを伴うのであれば、筋肉の強度を高めることでシーバー病は改善できるのでしょうか。これに関しても、松井さんは否定的な意見を示します。

「鍛えれば、多少は耐えられるようになりますけど、それだけでは改善はしませんね。身体はひとつにつながっていると考えれば、一部を鍛えるだけで、解決するものではありません。鍛えることで筋肉が硬くなれば、より症状が悪化するケースも考えられます」

では、仮にシーバー病の痛みが出た場合には、どのように対処すればいいのでしょうか。

「まずはほぐしてあげたり、筋肉を柔らかくすることが大事ですね。できれば、練習などは休んだほうがいいでしょう。やりながら治すこともできるでしょうが、痛みが長引くと治りが遅くなり、後々大変になります。痛くなった時点で休めばよかったのにと、後悔しても遅いですから。チームによっては練習を休みづらい環境もあるかもしれませんが、思い切って休むことを推奨します」

そして、松井さんはこのように続けます。

「やっぱり、大事なのは姿勢ですね。負担がかからないような姿勢、身体の使い方を覚えていくことが、オスグットと同様に、シーバー病にならないためにも、一番重要なことだと思います」

痛みをだまして練習をしても、辛く、サッカーが楽しくなくなってしまうこともあります。休んでいる間は不安になったりナーバスになることもあるかも知れませんが、サッカーは楽しむことが大事ですから、親御さんがしっかりフォローしてあげましょう。

また、松井さんによれば、大人になってかかと痛が出るのは、普段の生活の中での重心のかけ方や歩き方など、複合的な要因があり、子どもより治りにくいそうなので、健康な毎日を過ごすためにも小学生年代から正しい姿勢を身につけて、痛みの出にくい身体作りを心がけましょう。

かかとの痛みを防ぐ
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松井真弥(まつい・しんや)
アスレティック・トレーナー。2010年より10年間、スペインのリーガ・エスパニョーラ1部の名門RCDエスパニョールでトレーナーを務める。帰国後は2011年から14年までJリーグのベガルタ仙台でトレーナーとして活動。現在は千葉市にある鍋島整形外科にて身体のケアや身体の使い方によるケガ減少の指導を行っている。不定期で走り方教室を開催中。
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文:原山裕平、写真:新井賢一(U-12ジュニアワールドチャレンジ2017)

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