スポーツは多くの"見る"動きが求められます。サッカーの場合も同じで、ボールやゴールなど対象物を常に見続けなければいけませんし、相手の動きやペースを見なければ、良いドリブルやパスはできません。良い選手になるためには、技術以前に"見る"ことが求められるのです。
ですが、見るために大事な視力が低下している子どもは年々、増えています。文部科学省がまとめたデータによると、裸眼視力が1.0未満の子どもは増加傾向にあり、平成29年度の統計では初めて30%を突破しました。
視力の低下がプレーにどう影響するのか。今回は、パーソナル・グラス・アイックス取締役で眼の専門家である小松佳弘さんに視力とスポーツの関係性について話を伺いました。
(取材・文:森田将義、写真:森田将義、サカイクキャンプ)
■視力が下がると脳が疲れる
スポーツ選手の動体視力などを鍛えるビジョントレーナーとして活躍中の小松さんは、プロ野球ソフトバンクホークスを始め多くのスポーツ選手に目の指導を行われています。
小松さんが、視力とスポーツの関係性として挙げるのは、眼と脳の関係性です。「眼はカメラの働きをしており、見た映像を脳の後頭葉へ情報を送ります。送られた情報が、空間認知や距離、形などとして認識されるのです。脳はカメラの情報を鵜呑みにしてしまうので、視界が低く、ぼやけていると本人は見ているつもりでいても、脳へはきちんとした情報が送られていません」と話します。
視力が低いと、脳への伝達する情報が少なく、物事を正確に理解しようとするのに時間がかかり、素早く身体を動かせません。また、眼から入ってきた少ない情報を何とか鮮明にしようとするため、脳も疲れます。
ゲーム展開のスピードアップや戦術の高度化が進むサッカーの世界では、年々見ることの重要性が高まっており、「身体が大きいとか、足が速いといった身体能力だけでなく、これからはゲームを見る力がより勝負を左右するようになります。判断するためには、ちゃんと周囲を見られるようにならなければいけません」(小松さん)。
また、6~13歳は身体の様々な部分が成長する発育期です。脳の成長を促すためにも、多くの情報を得る必要があり、適正以上の視力でなければいけません。メガネやコンタクトレンズなど、矯正器具をつけると、近眼が進行するという情報を見て、視力矯正を嫌がる親御さんも見られますが、それは間違った情報です。
視力が低いままで放置していると近くの物を見ることに脳が慣れようとして、近視が進んでしまうため、しっかり視力矯正することをおススメします。
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