元日本オリンピック委員会強化スタッフで、現在はスポーツ栄養WATSONIAの代表としてプロスポーツ選手から企業まで広く栄養サポートをしている管理栄養士、川端理香さんに食事の大切さを教えていただきます。
これまで、どうして朝食をたべないといけないのか、ビールのおつまみとしてお馴染みのアレが疲労回復に効果テキメンな理由など、お子さんの身体を大きくすることや力を引き出す食事について教えていただきました。
前回は前後編に渡って、お魚に含まれる必須脂肪酸「EPA」が血液をサラサラにしてくれるお話や、それによって持久的な能力を高める効果につながることなどをご紹介しました。
今回は、子どもたちが大好きな「果物」の栄養についてお送りします。
家で食べたり、給食やお弁当に入っていたり、ケーキやゼリーで摂取したり。春はイチゴ、夏はメロン、秋には梨や柿、冬にはリンゴ......などなど、様々なシーンで1年中いろんな果物を楽しめますが、スポーツ栄養の面ではどのような栄養価があるのか、この機会に知ってください。
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■アスリート=補食にバナナ のイメージはどこから?
プロのサッカー選手に限らず、トップアスリートがバナナを食べているのをテレビや雑誌などでみたことはありませんか?
そのためか、「プロ選手=バナナを食べている」と連想する子も多数いるようで、よく栄養セミナーで子どもたちに「みんながよく食べるフルーツは?」とたずねると、「バナナ!」という答えが返ってくることが多いです。
「なぜバナナをよく食べるの?」とたずねると「プロ選手が食べているから」と答えるあたりにも、選手=バナナの認知度が高いのを感じます。子どもは憧れの選手のマネをすることも多いですからね。
でもこの「なぜバナナ?」という質問に対して、本当はもう少しスポーツ栄養の知識が含まれた答えが返ってきてほしいなあと思うことも事実です。
そういうこともあり、まずはフルーツの中でもスポーツに関わりの深いバナナのお話をしようと思います。バナナ嫌いの人も今回は興味がないとページを閉じずに、ぜひスポーツとバナナの関係を知ってほしいと思います。
■少食、練習バテでご飯を食べる気力がないときも
以前、乳製品のお話の中で牛乳のお話をしました。その際、牛乳を飲むとお腹が緩くなりやすい理由を「糖の違いで起こる」という説明をしました。糖というとすぐ砂糖が浮かびやすかったり、「果物の甘さは何だと思う?」と質問すると果糖と答える選手が多いのですが、じつは糖にはたくさん種類があります。
「果糖」という名前のせいもあって果物の糖分=果糖だと思われがちですが、果糖は糖の1つであり、果物だけでなくハチミツ、1部の根菜にも含まれています。
そして果物に含まれる糖分は果糖だけではありません。じつはフルーツに含まれる主な糖は、果糖とぶどう糖です。フルーツの種類によって果糖の方が多い、ぶどう糖が多いという違いがあり、そもそも種類によって含まれる糖の量が違うのです。
はたしてどのくらい糖量が違うのでしょうか。
まず果物を同じ重量で比較した場合、バナナは100gで21gの糖質を含みます。
そういわれても、多くの人はおそらくピンとはこないかと思いますが、これは糖質量が少ないグレープフルーツやブルーベリーと比較すると約2倍以上の量にあたります。
バナナ1本は大きいものだと200g程度になります。つまり、1本で糖質を約40gとれることになります。実はこの量は、ご飯茶碗1杯と同じ量にもなります。いかにバナナがエネルギーの塊であるかがお分かりいただけたのではないでしょうか。
選手の中には、少食でなかなか食が進まない、食べられないという悩みを持っている人もいたりします。先日も栄養セミナーを行った際に、どうしたら解決できるか悩まれている保護者の方が複数いました。またもともと食が細い選手だけでなく、暑い時期や練習量が多くなったりするとバテて食欲が落ちやすくなります。本来であればそういう時こそご飯をしっかり食べたいものですが、そうはいかない......。そういう場合に、バナナをとりいれるのです。
ご飯を茶碗1杯を食べるのに四苦八苦している選手でも、バナナ1本ならスルッと食べられることがあります。普段の食事にプラスする、もしくは補食でとりいれることなども十分なエネルギー補給になります。
ただし、中には摂取量に気を付けた方が良い選手もいますので、それをお伝えします。
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