健康と食育
サッカーのキックで足を痛めないために覚えておきたいケガ予防、太もも前側の柔軟性を上げるエクササイズ【医師監修記事】
公開:2021年6月15日
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チームではウォーミングアップしてから練習するけど、放課後や休みの日に友達と公園に行ってサッカーをするとき、いきなり走り出すのでケガが心配、という親御さんの声も少なくありません。とはいえ「どんなウォーミングアップをすればいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はFC市川ガナーズの上村聡フィジカルトレーナーと安藤克敏アドバイザー・ドクターに協力していただき、すぐにできるウォーミングアップのメニューを紹介します。ケガ予防のために、公園などでサッカーをする時の習慣にしてみてください。また、ウォーミングアップと同じぐらい大事な「クールダウン」についてもお話を伺ったので、ぜひご覧ください。
(取材・文:鈴木智之)
<<前編:公園でいきなりサッカーをする前の習慣に! 楽しみながらできる股関節周りのウォーミングアップ【医師監修記事】
身体がしっかりほぐれてないと、サッカーのキックの動きで股関節を痛めたり、インサイド、アウトサイドのキックで捻挫したりすることもあります。シュートの動きでは、骨盤を痛める(骨盤裂離骨折)リスクもあるのだとか。太もももしっかり柔軟性を高めることでケガを予防することができます。繰り返して行い、可動域を向上させましょう!
1)インサイドキックやアウトサイドキックで使う筋肉のウォーミングアップ
■上村トレーナーによる解説
片足立ちになってバランスを取りながら、内側、外側、内側、外側の順番で、足のインサイド、アウトサイドを右手、左手でタッチしていきます。右足で立って一通りやった後は、足を変えて左足で立って行います。リズムよく足にタッチすることと、体が左右に動かずに、正面を向いてすることを心がけましょう。
■安藤ドクターによる解説
股関節の内旋・外旋の動きを伴うウォーミングアップです。股関節はインサイドキックやインサイドトラップ、アウトサイドトラップなど様々なシーンで使用するので、可動域を拡げることを目的として行います。
さらには、骨盤の筋肉付着部が剥がれることで生じる「裂離骨折」の予防も兼ねています。膝から足首までの骨は腓骨と脛骨の2つで構成されているのですが、腓骨の方が長いためにバランスを崩してしまい、内反捻挫が生じやすくなります。あらかじめバランス感覚を体に浸透させておくために、軸足でジャンプする動作も入れています。
2)太ももの前側の柔軟性を高めるエクササイズ
■上村トレーナーによる解説
右足を右手で持ち、後方に引っ張ります。このときに左手を使ってバランスをとり、片足立ちをキープします。軽くジャンプしながら、しっかりと腕を振り、上半身も伸び縮みさせていきます。シュートを打つときの、足を振りかぶるイメージを持ちながらするとやりやすいです。右手で右足を持つパターンが終わったら、左手で左足を持つパターンも行いましょう。各5回ずつが目安です。
■安藤ドクターによる解説
このウォーミングアップは、実際のキックモーションを取り入れています。太もも周囲にある筋肉(大腿筋膜張筋や大腿二頭筋、大腿四頭筋の一部など)は骨盤に付着しています。
サッカーでは、シュートをする動作を契機に、骨盤裂離骨折を起こすことがあります。事前に同じ動作をウォーミングアップメニューに入れておくことで、裂離骨折の予防になります。
また上半身も一緒に動かすことで、手などの末端への血流を促すことになります。酸素供給量が増えるので、手足の運動が良好になり、ケガの予防につながると考えられます。
ウォーミングアップ全般に言えることですが、冬は気温が低いので、体が温まるまでに時間がかかります。そのため冬はある程度、長めにやったほうがいいでしょう。反対に夏は暑く、すでに血流が回っているので、熱中症予防の観点からも短い時間で済ませるようにしましょう。
ここからは、ウォーミングアップと同じぐらい重要な「クールダウン」について、安藤ドクターに解説してもらいましょう。
「クールダウンの目的は、運動後の疲労の解消です。運動をすると無酸素状態が続き、疲労物質(最近では乳酸ではなく、水素イオンと言われています)が生成されます。その疲労物質をコントロールしている臓器が腎臓です。水分摂取を行いながらクールダウンや軽いマッサージをすることで、疲労物質を循環させて、腎臓に早く届かせることができます。その結果、運動後の疲労を軽快させることができるのではないかと考えています」
ウォーミングアップに目を向ける人は多いですが、クールダウンはおろそかにしてしまいがちです。安藤ドクターは「ゆっくり走るだけでもOKです」と言います。
「クールダウンをしないお子さんは多いと思いますが、歩くだけでも、ゴール裏を2往復、ゆっくり走るだけでもいいので、やってみてください。保護者の方ができることとしては、お子さんのふくらはぎや太ももを、心臓の方向に向かってもんであげること。そうすることで疲労物質の循環が早まるので、疲労軽減につながります」
体に疲労が残っている状態でサッカーをすると、ケガの原因になります。ウォーミングアップとクールダウンをしっかりして、常に良い状態でピッチに立つことを心がけましょう。ケガなくプレーし続けることが、長い目で見ると上達への近道です。
ぜひ今回の記事を参考に、日々の習慣として取り入れてみてください。
安藤克敏(あんどう・かつとし)
FC市川ガナーズ アドバイザー ドクター
藤枝東高校出身。愛知医科大学医学部を卒業後、東京大学医学部附属病院、大分大学医学部附属病院などを経て、アドバイザードクターに就任。名古屋グランパスエイトU-15出身で、日本クラブユースサッカー選手権大会全国大会、高円宮杯全日本ユースサッカー選手権全国大会の出場経験があり、藤枝東高校時代は第86回全国高校サッカー選手権大会全国大会で準優勝した経歴を持つ。
上村聡(かみむら・さとし)
FC市川ガナーズ フィジカル・アスレティックトレーナー
中央大学 法学部 法律学科卒業後、日本鍼灸理療専門学校に進みアスレティックトレーナー学科を卒業。芝学園 中等部 サッカー部 コンディショニングコーチ、FC町田ゼルビア アスレティックトレーナー、専修大学ラグビー部 コンディショニングトレーナーなどを経て現職に。保有資格は日本体育協会公認 アスレティックトレーナー、鍼灸あん摩マッサージ師、ライフキネティック公認パーソナルトレーナーなど