■テレビとスタジアムそれぞれのメリットとは?
――スタジアムではヤマハやホンダの試合を観てきたという話ですが、テレビ観戦での当時の記憶といったら何を思い出されますか?
初めてのW杯ですかね。1982年のスペイン大会の準決勝、フランス対西ドイツが、僕が初めて観たW杯なんですけど、3-3でPK戦の末に西ドイツが勝ったという試合でした。
――その試合を名波さんはどんな思いで観ていました?
フランスにはミシェル・プラティニ、アラン・ジレス、ジャン・ティガナという攻撃のタレントがたくさんいて、西ドイツにはパウル・ブライトナーやカール=ハインツ・ルンメニゲがいました。フランスはその2年後のユーロで優勝するほど強烈な時代だったんですよ。その両国が守るのではなくて、自分たちが点を取るんだという姿勢をぶつけ合って、その中でミドルシュートとかオーバーヘッドキックといったスーバーゴールが決まるんです。子どもながらにとんでもなくおもしろい試合だなと思っていました。そういった世界トップレベルのプレーに魅せられながら、サッカーの奥深さやギリギリの凌ぎ合いに大きな刺激を受けました。
――今はそういった大きな刺激のあるトップレベルの試合を日常的に観られる環境にあるのは、子どもにとっては非常に大きなことですよね。名波さんはテレビ観戦のメリットは、他にどんなことがあると思いますか?
まずスタジアムで観ることのメリットから言うと、逆サイドの絵をパッと見られるということだと思います。俯瞰した位置から見ることで「逆サイドに出せよ」と小学生でも思うかもしれない。その絵を自分がピッチに立ったときに、スッと同じような切り返しをして「あ、逆サイドが空いてる」という絵に繋がっていくと思うんです。これがテレビ観戦だとスローでのリプレイがすぐに出てくるので、スローでそのプレーのすごさがよりわかりますよね。追っかけ再生とか、巻き戻しとか、そういった機能を利用しながら、そのプレーをマネするために頭に擦り込むことができるのはテレビ観戦のメリットだと思います。
――マネしたいプレーを刷り込むことは確かにテレビ観戦の特性と言えますね。観るべき選手のプレーにもより注目しやすくなります。
たとえば、左利きの子どもは左利きの選手を見るべきだし、右利きだけど左サイドでプレーする子どもはそういった選手を見るべきだと思います。そういう自分の特性と選手をリンクさせた見方は大事ですね。先ほども言った自分がピッチに立ったときのイマジネーションは必要なので、同じようなポジション、特徴を持った選手に注目するべきだと思います。プレースタイルというのは、小中学生ではなかなか自分を客観的に見ることはできないと思うので、そういう見方が子どもたちには一番わかりやすく入ってくると思います。
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聞き手・構成 篠幸彦