■見て考える習慣をつける利点
どうやらFC YANAKAでは映像からヒントを得て考える、という作業が日頃から習慣づいているようです。チームの中村ひろ監督は、かつてプロ選手としてドイツやフランス、イタリアなどでプレーした経験の持ち主。彼はプロのプレーから学ぶ重要性をこう話します。
「チーム全体で映像をみてから練習をスタートさせることはまずありませんが、子どもたちがよく見ているテレビのサッカー番組や、日本代表などの試合内容から『あのシーンは見た?』というようにわたしから子どもたちに問いかけて、そこをスタート地点としてトレーニングに落とし込んで指導することはよくあります」
そのなかでも強調して伝えているのが“ボールを置く位置”。中村監督が続けます。
「これは普段からもっとも強調して伝えていることですが、今夏のワールドカップにしてもただぼんやりと見ることのないように、プロの選手たちの『ボールを置く位置』を意識しながら見てもらうようにしました。ボールの置く位置さえ間違わなければ相手が誰であとうとボールを奪われることはありません。ボールを受ける前に周りの状況をよく確認しつつ、最初のファーストタッチで相手がどうやっても奪えない位置にボールを置ければベスト。子どもたちにはテレビや映像などを見てもらい、プロの選手たちがファーストタッチでどこに置いているのか、あらゆる状況のなかでどこにボールを置けば一番いいのか、それを普段の練習でも徹底して意識してもらっています。
というのも、メッシはあれだけ小さい身体ながらボールの持ち方やボールの置き方を工夫することで、世界最高峰の相手のボール奪取をうまく交わしているわけです。クリスティアーノ・ロナウドのように身体能力に長けた選手にはなれなくても、メッシになれる選手はこのなかにもいるかもしれない、というような伝え方をしています。ここではジュニア年代のうちに習得しないといけない技術や戦術は当然のように指導しますが、背が小さい、スピードが遅い、といったことは一切考慮せず、相手にボールを取られない位置をしっかり押さえていればサッカーには生きる道がある、ということを日々伝えています」
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取材・文 杜乃伍真 写真・田川秀之