サッカーを観て学ぶ
大谷秀和のサッカー観戦術「ボールのないところを観る」
公開:2014年12月 5日 更新:2020年3月24日
■まずは好きな選手のプレーを真似してみたいと思うことから
――さまざまなサッカーを観ることは、ジュニア年代の子どもたちにとっても、大きな影響力があると思いますか?
レイソルの育成組織の子どもたちのプレーを見ていても感じるのですが、いまのジュニア年代はすごくうまいですし、大人っぽいサッカーをするんですよ。コーチのレベルも高くなっていて、より世界が近くなっている印象を受けます。たとえば、レイソルの育成組織の選手たちを見ていると、若い年代から海外遠征に出かけたり、海外のビッグクラブと対戦することが大きな経験になっている。そういった相手と対等にプレーすることで自信も掴んでいる。ぼくたちが幼いころは、ただ「すごい、すごい」で終わっていたものが、いまはそうではない。海外が遠いものではなくなっているなという気がします。他のチームの子どもたちを見ていないので、なんとも言えない部分はありますが、確実に変化しているのかなとは感じます。
とくにレイソルはここ数年、チーム自体が育成に力を入れていることもあるので、よりそう感じるのかもしれません。ただ、小さいころから勉強しながら観るというよりは、まずサッカーそのものを楽しむことが大事だと思います。クリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)が好きだからクリスティアーノ・ロナウドを見る、メッシ(バルセロナ)が好きだからメッシを見る、それでいいんです。「あ、いまのプレーを真似してみたいな」というように感じてトレーニングしていくことの方が大事です。
■ジダンのルーレットを真似した少年時代
――大谷選手がジュニア年代のころに憧れた選手はいますか? また、その選手のプレーを真似したりすることはりましたか?
だれが好きだったとか、この選手のプレーを真似していたという記憶があまりないんです。ミーハーな子どもではなかったというか(笑)。ただ、近所の方が録画してくれた94年アメリカW杯のハイライトビデオは、くり返し観ていました。そこから実際に「じゃあやってみよう」と実践してみるところまでは、なかなかつながらなかったのですが、いま振り返ると、サッカーを観ることそのものに関しては、子どものころから好きだったのかもしれません。
――観ることで視覚を刺激することで、やる気を促すことにつながると思われますか?
それはあると思います。好きな選手がいれば、その選手の真似をしようと思って実際にプレーしてみたりしますから。ぼくたちの時代も、ジダンのマルセイユルーレットと呼ばれるプレーなんかは、みんな真似していたような気がしますし、まずは見たものに対して、チャレンジしようとか、真似をしてみようという気持ちを持つことが大事なのだと思います。それができるようになると、ますますサッカーが楽しくなるでしょうし、「じゃあ、次はこれをやってみよう」という向上心につながる。子どものころは、まずサッカーそのものが楽しくないと続かないので、そういうモチベーションを刺激することも大事だと思います。
■ボールと関係ないところを観る
――大谷選手がサッカーを観る時は、やはり同じボランチの選手に注目することが多いですか?
何年か前までは自分と同じポジションの選手に注目することが多かったのですが、去年あたりから、ボールと関係ないところを観ることが多くなりましたね。なかなかテレビで映らない部分ですが、ディフェンスラインがどのタイミングで上げているのか、クロスに対しての体の向きはどうなっているのか、どのように準備しているのか。そういった部分に注目していることが多いです。それはたとえプレミアであっても、J1やJ2であっても、視点そのものは変わらないです。
――「自分だったらこうしていた」とか「もっとこうしていた方が良かったのでは?」と考える
ことはありますか?
自分がそこにいるわけではないので、「こうした方が良かったのでは?」とは、あまり考えません。やはりボールを持っている選手の判断がすべてですから。逆に、「あ、こういった選択肢もあるんだな」ということの方が目につきます。
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2014年12月6日(土)15:30キックオフ
大谷秀和(おおたに・ひでかず)
1984年11月6日生。千葉県出身。小学生のころは、地元・流山市の初石少年SC、流山FCでプレー。中学から柏レイソルの育成組織入りし、その後、ユースを経て03年にトップチームに昇格。プロ1年目の03年3月22日、J1リーグファーストステージの開幕戦対FC東京でJリーグ初出場。04年10月17日のJ1リーグセカンドステージ第9節対名古屋でJリーグ初得点を記録。
2008年にチームのキャプテンに任命され、以後、キャプテンを務めている。2011年にはJリーグ史上初となる昇格初年度でのJ1優勝を果たした。
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取材・文/石井宏美 写真/サカイク編集部、田川秀之