あなたは、お子さんとスタジアムにサッカーを観に行ったことはありますか? サッカーの試合はテレビでも観ることができますが、スタジアムならではの臨場感、音、迫力が子どもたちにポジティブな影響を与えることは多々あります。
今回は、スタジアムに足を運んでサッカーを観ることで、子どもたちがどう影響を受けるのか、ドイツの育成第一人者であるクラウス・パブストに話しをうかがいました。(取材・文 中野吉之伴 Photo by Achim Hepp)
■欧州のサッカーファンは週末を楽しむ
ドイツでは先日ブンデスリーガの14-15シーズンが終わりました。バイエルン・ミュンヘンが独走で見事3年連続リーグ優勝を果たし、一時は最下位に沈んでいたドルトムントがすばらしい追い上げから7位でフィニッシュ。また、さまざまな問題を抱えたシャルケは終盤失速し、6位と納得のいかない順位で終えています。そんななか最終節で特にドイツファンを熱狂させたのが、実に6チームが絡んだ白熱の残留争い。満員の観客で埋めつくされたスタジアムで、後がない選手が必死の思いで戦い、さまざまなドラマが生み出されました。最終的に、パーダーボルンとフライブルクが1部リーグと別れを告げることになりました。
手に汗を握り締め、選手の一挙手一投足に目を凝らす。スタジアムでファンが作り出す雰囲気を肌で感じ、プロ選手のプレーを目の当たりにするのは、やはりすばらしい機会です。しかし今でこそドイツではどのスタジアムでも、どんな試合でも、満員近い観客動員を記録していますが、昔からそうだったわけではありません。クラウスは自分の子どものころを振り返り、思い出を語ってくれました。
「ドイツも昔は大変だった。ブンデスリーガでも一昔前は、スタジアムがいっぱいになることは稀だったんだ。トップチームでも1シーズンに何回かくらいだよ。ファンの獲得はクラブにとって大事なテーマだったんだ。ぼくはバイエルンファンなんだけど、当時、バイエルンがうまくやったと思うのは、子ども料金をすごく安くしたことなんだ。14歳までは学割でたったの2マルク(約150円)だ。チケットには地下鉄料金も含まれていた。自分のお小遣いで観に行ける値段でしょ。10歳のころ、一人でスタジアムまで行ったよ。試合を観に行って熱狂する。すると、いろいろなグッズがほしくなる。旗を買ったし、ユニフォームも買ったよ。そうやって、ぼくはバイエルンファンになったんだ」
「素敵な思い出話もある。友だちがバイエルンの雑誌を集めていたんだ。でも、2冊足りない。休暇中に自転車でバイエルンの練習場に行ったんだ。そこでクラブの人に雑誌が何とか手に入らないか聞いたら、広報部長さんが書棚を開けて、ぼくらにその雑誌を手渡してくれたんだ。お金を払おうとしたら、『大丈夫、払わなくていいよ』といって去っていったんだ。素敵だったね。こうした思い出もクラブへの愛を育んでくれるんだ」
欧州のサッカーファンは週末が訪れるのを楽しみにしています。日本の皆さんはどうでしょうか。練習や試合とかぶり、なかなか見に行けないことも多いのかもしれません。もちろん、限られた時間の中で懸命に練習や試合に励むことも大切です。でも、時には時間を作って、スタジアムに足を運ぶことも大切ではないでしょうか。せっかくスタジアムに行くのなら、気持ちをこめて応援するチームを見つけられると、さらに楽しいはず。クラウスもその点を強調します。
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育成改革によりEURO2000の惨敗からたった10年で復活を遂げたドイツ。個の強さにテクニックと創造性を備え、全員が走ってパスをつなぐ最強の「モダンフットボール」へと進化しました。名門1. FC ケルンの育成部長も務め、多くのブンデスリーガを育てたクラウス・パブストがその最先端トレーニングを伝授。U-12指導者向け教材『モダンフットボール【MODERNER FUSSBALL】』
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取材・文 中野吉之伴 Photo by Achim Hepp