前回では「子どもたちが選んだものを全面的にサポートする」という子育てのスタンスを取ってきたと語っていただいた元日本代表の堀池巧さん。インタビュー後編となる今回のテーマはずばり「考える子どもを育てる秘訣」について。堀池さんのアプローチ方法は、「一緒に考えてあげること」だと明かしてくれました。(取材・構成・写真 小須田泰二)
■なぜやりたいのか? なぜ必要なのか? を考えさせる必要性
-『サカイク』のテーマがまさに「自分で考えるサッカーを子どもたちに」なのですが、ずばりその秘訣とはなんでしょう?
「現在、順天堂大学の学生たちと接していても感じることなのですが、いまの学生たちは与えたことや言われたことを忠実に100パーセントこなす能力はバツグンにあるんです。でも、サッカーというのはただ与えられたものをこなせばいいというスポーツではありませんから、試合の展開や状況によってやるべきことが変わってきます。置かれた状況に応じて自己判断しないといけないのに、なかなかうまくできないことが多いんです。順天堂大にかぎらず同じような課題を抱えているチームが多いみたいですが、それがいまの社会なんでしょうね」
-その解決法はどう考えていますか?
「的確な自己判断をするには判断材料がないと分かりませんから、いろんな経験をして判断材料をたくさんつくることが必要なんです。これまでの成功体験だったり失敗体験だったり、そうした小さいころからの経験則が子どもたちの”引き出し”の多さへとつながるので、つまるところ、小さいころから積極的にチャレンジすることが大事です。『失敗することを恐れるな!チャレンジしなさい!』というのは、ぼくの指導方針の基本でもあるんです」
-チャレンジなくして失敗なし。チャレンジなくして成功なし、ということですね。
「チャンレジがあって初めて失敗できるし、成功できる。なぜ失敗したのか、なぜ成功したのか。”なぜ”という原因を追求していく作業ができるのもチャレンジがあってこそ。チャレンジしないことにはなにも始まりません。
子育ても同じだと思うんです。ちまたには『子育てバイブル』というものはたくさんありますが、なにが成功なのかなんて誰にも分かりませんし、正解なんてひとつではありませんから」
-実際、お子さんにはなんでも自由にチャレンジさせてあげたのでしょうか?
「どうなんでしょう。ただ、結果的になんでも前向きに取り組む、オープンな性格になってくれたのは良かったのかもしれません。息子は小さい頃から清水エスパルスの外国人選手が家に遊びにきて子ども同士でよく遊んでいたので、外国人コンプレックスがまったくないんです。小学生のときオーストラリアにホームステイしたのもあって、いまだにチャンスがあったら海外に留学したいと言っています。やっぱり小さい頃の経験がいろいろ影響しているのかなと思います」
-子どもがやりたいものに対してなんでもいいよ、というスタンスなんでしょうか?
「それは違いますね。それではただの放任主義ですし、せっかくやるんだったら子どもにとって身になることをしてほしいですから。ただ放任主義で接しているわけではありません。やりたいことをする前に、まずはやるべきことをやれるようにならないとダメだよっていうことは、小さい頃から言い続けています。なぜやりたいのか? なぜ必要なのか? それを小さい頃から子どもたちに考えさせてきたつもりですね」
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取材・構成・写真 小須田泰二