インタビュー
「サッカーを教えすぎると嫌いになってしまいそう」サンフレッチェ広島FW佐藤寿人のサッカー少年の育て方
公開:2016年7月29日 更新:2023年6月30日
■自分や他の子ではなく、それまでの子ども自身と比較して褒める
――息子さんの練習や試合を見た時に心がけていることはありますか? また、どういった声かけをしますか?
基本的には褒めて、気分良くプレーできるように心がけています。
やはり親としては「もっとできるのになぁ」と歯がゆく思うこともありますよね。でも親は、自分と子どもを比較してはいけません。自分との比較ではなく、それまでの子ども自身と比較して、「ちょっと上手くなったなぁ」と思ったら、「すごい上達したね」とか、「ちゃんとボール蹴れるようになったね」とか、子どもが喜ぶようなフレーズをなるべく出すようにしています。今日もこの後子どもの練習を見に行くんですけど、なるべく継続的に見てあげるようにして、変化や上達に気づけるようにしています。あと、ぼくはずっとサッカーをしているので、なぜそういうプレーができたのか、なぜいいプレーが出たのかわかる部分があります。そこは子どもに伝えてあげてなぜいいプレーができたのかを子どもに確信させる。自信を持たせるためにも、そこは伝えるようにしています。だから、ちゃんと見てあげなきゃいけない。そういうふうに接してあげると、「でしょ!」みたいな感じで返してきます(笑)。
子どももぼくら大人と同じように「やった!できた!」と思うことがあるんです。子どもが「見てくれてた?あのプレー」と言う前に、「あの時のあのプレーよかったね!ここがこうだったからすごくよかったんじゃないかな」と先に言ってあげると、「見てくれていたんだ」と喜びますね。だから、褒めるところはちゃんと褒めるようにしています。だけど、不用意に遠くに蹴ったボールを友だちが取りに行くようなシーンがあったりしたら、「そんな遠くに蹴る必要ない、遠くに蹴ったんだったら自分で取りに行くこと、自分がそれをやられたら嫌でしょ、そんなことしているんだったらもう連れてこないよ」と注意することもあります。子どもにダメ出しするとしたら、プレー以外のマナーやルールについてですね。そういう息子の姿をみた瞬間はイラっとして「おいーっ!」と言いたくなりますけど(笑)、そこはグッと我慢して後で伝えるようにしています。子どもも、ぼくは怒るときは怒るけど、褒めるときは褒めてくれると思ってくれていると思います。
練習を見ていると、「すごく言うなぁ」と思うお父さんとかいますよ。「子どもはどう思っているのかなぁ……」と思いますけど、そのお父さんに対しては何も言わないです。それは人それぞれの考え方なので。ただ、そういうことを親に言われることで子どもが「サッカーっておもしろくないな」と思うことがぼくは一番嫌なんですよね。なので、ぼく自身は、プレー中のよくないことより、なるべくよかったことを見てあげて、言うようにしています。ああしろこうしろって改善点だけを言われると楽しくない。できなかったことは本人もわかっています。できたことを見てあげて褒めてあげる。それを意識しています。
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取材・文 中野里美 写真 安田健示