インタビュー
「子どもの意思を尊重して」FC東京・廣末陸が自身の体験からサッカーキッズの親に望むこと
公開:2017年4月 6日 更新:2023年6月30日
■両親に恩返しをしたいとはずっと思っていた
――観に来てくれるからこそ、サッカーで結果を残さなければいけないという思いは自然と生まれてきたのではないでしょうか。
もちろん青森に住むわけですから生活費も必要ですし、学費もありますから。多方面からサポートしてもらったので、そこは一番感謝しています。「かかるお金が安い、高い」とかそういうくくりではなく、子どもがどこに行きたいかというのを一番に考えてくれたのがありがたかったです。そういうこともあったので、プロになって恩返しするしかないな、とはずっと感じていました。
――その日の試合で監督に怒られたとしても、帰れば安心できる場所を両親が提供してくれたことは大きかったのではないでしょうか。
うちは試合で良かった時と悪かった時、両方とも外にご飯へ連れて行ってくれるんですよ。悪くても『しょうがないからご飯食べて元気出せ』と、すごく美味しいところに連れて行ってもらいました。良い時に褒めるのは普通だと思うのですけれど、悪い時でも良くしてくれているというのは大事なんだな、と思いましたね。
――自分のプレーが良くない時はどうやって乗り越えていったのでしょうか。
良くない時は練習をしていました。練習が足りないからそういうプレーが出てしまうとか、そういう考え方でやっていたので、良くなければ練習をしていました。その試合が終わった後でも練習をしていましたし、筋トレするとか、自分を追い込むことを結構やっていました。戒めるではないですけれど。
■親には子どもの意思を尊重して欲しい
――自分自身が良くないときに、親がこうしてくれたという思い出はありますか?
正直なところ、U-18に上がれないことを伝えられた時、面談が終わってドアを開けて外に出た瞬間、本当にイラついていました。当時、僕が試合に出ていて、もう一人のGK、今はフランスでプレーをしている山口瑠伊選手(現:FCロリアン/フランス)がU-18へ昇格したんですけど。山口選手が最初に面談をし、その後に自分が面談だったんです。面談が終わった後に練習へ出るためにグランドに行こうとしたら、すごく笑顔でボールを蹴っていました。それが忘れられなくて(笑)。
泣いてしまうというよりも、とにかく悔しいというほうが強い人間だったので、その時は「なんでだよ!」という気持ちがすごく強かったんです。ただ、親に『そんなもの、見返してやればいいじゃん』と言われて、それが響きました。絶対に見返してやるという気持ちで進路を考えて青森山田に決めたというのもあります。あのとき山口選手は普通にボールを蹴っていたのかもしれないですけれど、僕からはそう見えず腹が立ちました(笑)。
でも、親のその言葉で完全に頭が切り替わりました。夏の大会で活躍をして、『なんで廣末を上げなかったんだろう』と上の人たちが思うようなプレーをしてやろうと思っていました。実際にクラブユースで準優勝をしてMIP(Most Impressive Player=最も印象に残った選手が獲得する賞)ももらったんです。そのときは凄く調子が良かったもので。
――ご両親が最も喜んでくれたのはいつでしたか?
まず一つが、初めて世代別の日本代表に入った時です。高校2年の5月だったんですけれど、その時はすごく喜んでくれました。それと、高円宮チャンピオンシップよりは高校サッカー選手権ですかね。みんなが夢見た舞台で、メディアの注目度も高いですし、スタッフにも恩返しができましたし。親も親戚も何十人と観戦に来てくれて、その中で優勝できたのはすごく良かったです。青森山田に行って良かったなと選手権ですごく思いましたし、喜んでもらえました。
――プロに入るという目標をまず達成することができましたが、次なる目標はどういったものでしょうか?
僕は正直あまり遠い目標は立てないんです。近い目標を何個も立てていくというタイプなんですけれど、高校の時は日本一、世代別の日本代表、プロ入りというのを一番目指していました。そしてその全部が達成できて、高校を卒業してプロに入っても、まずはJ1出場とU-20日本代表に継続して選ばれてU-20W杯に出ることです。その後には東京五輪やA代表が出てくるんですけど、今はJ1出場とU-20日本代表に入ることを目標にやっています。
――最後に、サッカーをするお子さんを持つ保護者の方へ、廣末選手から「子どもにはこういう風に接してほしい!」というようなメッセージがあれば、お願い致します。
家族によっていろいろなスタイルはあると思うんですが、子どもの意思を尊重して欲しいということはあります。僕自身、両親と接する中でその部分は強く感じたので。子どもたちの意見というか、言葉を少しでも参考にしてくれたらいいなと思います。
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取材・文:竹中玲央奈、写真:新井賢一