知っていそうで知られていない、世界のサッカー常識についてランダムにとりあげるこのコーナー。世界各国で様々に楽しまれているサッカーというスポーツの奥深さを感じるような話題、子どもとの会話のネタになるような話題を数多くセレクトしていきます。今回は、ホーム、アウェイでの違いについてです。
海外では以前から、サッカーを始め、野球などでもホームスタジアムでの試合は有利で、アウェイスタジアムでの試合は不利というのが一般的です。では、同じ競技で公平に行われる試合なのになぜこのような差が生まれるのでしょう。
例えば南米や東ヨーロッパなどのサッカーの試合を例にとって見てみましょう。ホームスタジアムには3万人入るとして、ホームチームのサポーターが約8割~9割程度を占めるのが一般的。ホームの観客は、アウェイのチームの選手に対し、ひどいヤジを飛ばすのが当たり前です。時には、瓶や石、コインなどを投げつけるという悪い慣習が今でも見られることがあります。アウェイのチームが反則すれすれのプレーをすればブーイングはもちろん、ボールを持っただけでスタジアム中が強烈なブーイングでアウェイの選手のプレーをやりにくくします。また当然、ホームチームの好プレーには大歓声があがり、その雰囲気に審判ものまれます。ファールかどうか判断が難しいプレーなども、観客の反応によって審判の判断が思わず左右されることもあるのです。ピッチ状態もホームとアウェイのチームに有利不利を生みます。いつもプレーし慣れたホームチームは、ピッチのどの部分の芝生がどのような状態で、どの部分が柔らかい、固いなどの情報も自然と心得ています。つまり自分の庭とよその庭では振る舞いが変わるということになるのです。
スタジアム外でも有利不利はあります。ホームチームの選手たちは自宅や、慣れた合宿所からスタジアムへ行けばいいだけ。ところがアウェイチームの選手は遠路はるばるの移動をして慣れない宿舎に泊まるというように、生活のリズムが狂います。極端な例で言えば、かつてこんなこともありました。勝った方がワールドカップに出場できるというウルグアイvsオーストラリアの大事な一戦。アウェイとなったオーストラリアの選手たちはウルグアイへ乗り込んだはいいものの、空港でいきなり大ブーイング。ホテルへ着いて寝ようとしても、ホテルの外には鳴り物や大声を出すウルグアイサポーターが大挙来襲。要は安眠妨害でアウェイチームのオーストラリアが苦しめられたといいます。
さらに、10-11シーズンのイングランド・プレミアリーグを見てみましょう。全20チームの戦績(2011年1月31日現在)は、ホームでの勝利数が106。一方、アウェイで勝利した回数は58しかありません。つまり、ホームチームはアウェイチームの約2倍も勝っているということになるのです。この数字だけ見ても、ホーム、アウェイでの有利不利は一目瞭然です。
サポーターの後押し、妨害、審判の心理、ピッチ状態の有利不利、そしてスタジアム外での攻防・・・。TVの画面だけでは見えないホームとアウェイの戦いもあるのです。そして、自分の応援するチームが少しでも勝利へ近づけるよう、今日も、サポーターたちはホームゲームへの観戦へと出かけるのです。
『知ってます?世界のサッカー常識』全12回