また、審判があきらかに間違った判定をしたとしても、ベンチの監督以下コーチ、選手は異議をとなえずに受け入れる。それも『フェアプレー精神』です。審判は試合を円滑に運営するための仲間であり、決して敵ではありません。試合中、ベンチがヒートアップし、それが選手たちに伝染した結果、プレーが荒れるケースがよくあります。これは、選手を育成する視点からみると、歓迎すべきことではありません。『1人審判制』をとりいれることで、ピッチ内の選手だけでなく、指導者や応援する人々の『フェアプレー精神』も見直す機会になると考えられます。
■難しくなるオフサイド
1人審判で難しくなるのが、オフサイドの判断です。オフサイドについては、試合前に審判と両チームの指導者間で話し合いをするのも良いと思います。そこで事前に「オフサイドについて、審判の判断に従う」としておけば、オフサイドの判定をめぐって指導者がクレームをつける場面も少なくなるでしょう。(8人制には『補助審判』が必要ですが、これは主に選手交代や得点、警告など、記録を管理するための役割を担っているので、オフサイドやボールがラインを割った等の判定をおこなうことはできません)。
ここまで、1人審判制について解説してきましたが、『8人制サッカー=1人審判制』ではありません。状況に応じて副審、第四審判を採用することも認められています。公式戦や順位決定戦など、勝ち負けが将来に大きく関わる試合の場合は、審判をこれまでと同じように主審1人、副審2人、第四審判の計4人にすることも可能です。
とはいえ、8人制は基本的には審判を1人とし、選手と審判、指導者が協力しあって試合を進めていくことが望ましいもの。そして、これをいい機会ととらえ、『フェアプレー精神』を見直すのもいいかもしれません。そのような意識を高めることも、1人審判制導入の狙いであるといえます。
取材・文/鈴木智之
写真/木鋪虎雄『チビリンピック2011決勝』より