クラブワールドカップ決勝戦で、サントスを4対0で破ったバルセロナ。その圧倒的な強さは、世界中に強烈な印象を残しました。そこで今回はサカイクでおなじみ、かつてバルサのカンテラで指導し、現在はカタルーニャ地方のみならず、世界中で指導をしている『サッカーサービス』のカルレス・ロマゴサとプジョルのパーソナルトレーナーを務めるダヴィッド・エルナンデスコーチに、決勝戦のポイントを解説してもらいました。
■バルサの強さを表すキーワードは『チームプレー』
カルレスコーチは「バルサの強さの秘密」を、シンプルな一言でこう表します。「バルサの強さを表すキーワードは『チームプレー』です。ピッチに立ったスタメン11人のうち、9人がカンテラ(下部組織)出身の選手たちでした。彼らは子どものときから練習を積み重ね、バルサでプレーするために必要な『スペースを作り、埋める動き』を習得しています。チーム全員が同じコンセプトのもとでプレーをし、その上で、選手一人ひとりがクオリティの高いプレーをすることができるのです」
続いて、ダヴィッドコーチはひとりの選手の名前を例に上げました。GKのビクトル・バルデスです。
「たとえばGKのバルデス。彼は決勝戦ですばらしいプレーをしました。チームの戦術として、GKはボールをむやみに大きく蹴らず、最終ラインのパス回しに加わるというものがあります。バルデスはクラブワールドカップ直前に行われたレアルマドリードとの伝統の一戦『クラシコ』で、ボールを味方にパスしようとしてミスをしました。注目度の高いクラシコでミスをし、クラブワールドカップ決勝でもミスをするとなると、大きな批判を受けるのは間違いありません。ですが、バルデスは勇気を持って、チームのためにパスをつなぐプレーをし続けました。彼はチームの勝利のために、逃げることなくプレーしたのです。これもひとつのチームプレーと言えるでしょう」
■チームとしての土台ができている
バルセロナは選手全員がチームのコンセプトを理解し、自分のためではなくチームのためにプレーしています。それこそが、強さの秘訣なのでしょう。かつてバルサのカンテラでコーチとして指導した、カルレスコーチは言います。
「バルサのカンテラで育った選手たちは、トップチームに昇格したときに、どんなプレーをすればいいかがわかっています。みんなが同じ価値観を持っていて、チームとしての土台ができているので、一般的なチームが3年かけて築きあげる段階に、最初の時点ですでに到達しています。そのため、他のチームが対策を講じてきたとしても、次のステップに先回りして進むことができるのです」
その集大成が、クラブワールドカップ決勝で見せた、すべての選手が連動して相手の守備を崩し、ボールを相手に渡さずに攻める「究極のサッカー」だったと言えるでしょう。
カンテラ育ちの指揮官・グアルディオラがチームを率い、カンテラ出身の選手が数多くプレーするバルセロナ。メッシを始め、シャビやイニエスタ、セスクなど、世界でも有数の選手に育った彼らがピッチに君臨する限り、バルサの時代はしばらく続きそうです。
カルレス・ロマゴサ・ヴィダル(写真:左)//
Carles Romagosa Vidal
FCバルセロナ下部組織の監督として5年間活躍し、ボージャン、ピケ、セスク・ファブレガスらを指導。また、スクールディレクターを務めた経験を持つ。現カタルーニャ・サッカー協会 副テクニカル・ディレクター兼プロジェクト・コーディネーター。現FCバルセロナメソッド部門のディレクターとして試合分析やコーチ育成などを手掛けるジョアン・ビラとともに、世界各地で選手育成にあたっている。
ダヴィッド・エルナンデス・リヘロ(写真:右)//
David Hernández Ligero
現在、サッカーサービス社においてテクニカル・ディレクターとしてクラブコンサルティングを担当。また、プジョルのパーソナルトレーナーを務める。カタルーニャサッカー協会副テクニカル・ディレクターやVic大学「フットボール方法論」教授などを兼任する。
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取材・文/鈴木智之、写真/小川博久、取材協力/株式会社Amazing Sports Lab Japan