16日にオランダ戦、その後は19日にベルギー戦。日本代表、11月の欧州遠征シリーズが始まります。果たしてザックジャパンはブラジルワールドカップに向けて、内容と結果を残すことができるのでしょうか?
日本代表が良いパフォーマンスを発揮するために、一つのキーワードになるのが『コンディション』です。普段から所属クラブでハードなトレーニングを積んでいる選手たちは、
代表戦の前後も、試合のスケジュールがびっしりと組まれています。このような厳しいスケジュールの中で、コンディションを保つことも、今日のサッカー選手の条件と言えます。選手たちはどのように代表チームに集まり、試合をこなしているのでしょうか。
■Jの試合を終えた翌日には欧州に向けて出発した国内組
まず、各国サッカー協会は、代表戦が行われる試合日の2週間前までに、呼びたい選手が所属する各クラブに『招集レター』を送って通知しなければいけません。それに対し、クラブ側はその試合が国際Aマッチデーに行われる場合、年間7試合までは選手を無条件に送り出さなければならないとFIFAの規則で定められています。さらにその代表戦がワールドカップ予選などの公式戦の場合は、試合日の4~5日前までに、親善試合の場合には2日前(48時間前)までに、選手をクラブのスケジュールから解放しなければならないというルールになっています。
選手はこのようにしてクラブと代表の間を行き来するわけですが、日本代表の場合に難しいのは、国内組と海外組の選手がそれぞれ地球の反対側に暮らしているチームであることです。今回に関しては国内組が10人、海外組が13人という編成です。時差があり、移動距離も大きく異なるため、招集されてきた選手についてザッケローニ監督が「コンディションにバラつきがある」とこぼすことも少なくありません。
たとえば今回の場合、試合が欧州のベルギーで行われるため、国内組のコンディション管理が難しくなります。10日(日)のJ1&J2の試合が終了後、招集された選手はすぐに成田空港に集まり、翌日11日には欧州に向けて出発します。そしてベルギーの首都ブリュッセルに到着するまで15時間。さらにそこからチーム専用バスに乗り換え、試合が行われる都市ゲンクへ移動し、練習は12日からスタートします。
本来ならば、試合翌日は回復トレーニングでサッと汗を流し、12日はオフを取ってリフレッシュするところですが、代表選手に休息はありません。
とはいえ今回の場合、試合が16日なので4日間の余裕があり、オランダ戦には良いコンディションで挑むことができそうですが、より負担が大きくなるのは代表解散後のJリーグの試合です。19日のベルギー戦後、国内組は20日に出国し、日本に到着するころにはすでに21日(木)。J1の試合は23日(土)に組まれているため、優勝をねらうサンフレッチェ広島の西川周作選手、鹿島アントラーズの大迫勇也選手、セレッソ大阪の柿谷曜一朗選手、山口螢選手らは休む暇なく、クラブの試合に挑むことになります。
■海外組にはコンディションを調整しやすい欧州遠征
一方、欧州クラブに所属する海外組の選手にとっては、ベルギーへの移動はチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグのアウェー戦に行く程度のこと。たとえばマンチェスター・ユナイテッドの香川真司選手は10日(日)にアーセナルとの大一番を戦いましたが、翌11日にはすぐに飛行機で移動。ゲンク近隣の空港から、同じく10日に試合を終えた酒井高徳選手と共に、リムジンでそのままチームの宿泊ホテルへ移動しました。
11日を丸々、飛行機移動に費やした国内組に比べると、海外組は11日のうちに移動して回復トレーニングを済ませ、よりコンディションを整えた状態でチームに加わります。そして2試合を戦った後も、ベルギー戦翌日の20日中にはクラブに合流することができ、週末23~24日のリーグ戦に臨むことができます。
このようにして生まれる、国内組と海外組のコンディションの差。一方、8月のウルグアイ戦や、9月のグアテマラ戦&ガーナ戦のように試合が日本国内で行われる場合は、上記と全く反対のことが起こります。この場合は、海外組の体が悲鳴を上げます。
さらに代表戦はクラブのリーグ戦を終えた直後であるため、選手たちは試合で負ったケガを引きずってチームにやって来ます。プレーが不可能である場合には招集辞退となりますが、軽傷の場合はチームに合流しながら回復を待つことになります。つまり、今回はオランダ戦の前に4日間の練習日があるものの、本田選手や香川選手が別メニューで調整するなど、思うようにチーム練習が組めないことも多々起こるのです。
「前の試合から何も変わってないじゃないか!」と怒る人もいるかもしれませんが、現在のサッカー界のスケジュールにおいて、代表チームの着実なレベルアップは容易ではありません。「メンバーがいつも同じじゃないか?」と思う人もいるかもしれませんが、実質的に一緒にトレーニングや試合をできる期間が非常に限られるため、一度呼んで、試しただけではなんとも評価し切れないのも事実です。
忙しすぎる日本代表選手たち。体が悲鳴を上げつつも、限られた時間の中で彼らがいかに成長を果たしていくのか。私たちはしっかりと見守りたいものです。
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文/清水英斗 写真/松岡健三郎