1月4~6日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館・屋内球技場にて「バーモントカップ第23回全日本少年フットサル大会」が行われ、江南南サッカー少年団が現在浦和レッズでプレーしている原口元気選手が在籍していた時以来、10年ぶり2回目の優勝で幕を閉じました。
全国各都道府県からチームが集まるこの大会、雪深い地域からもチームが集まりましたが、寒冷地チームの活躍も目立ちました。グラウンドが雪で使えない寒冷地ではどういったトレーニングをしているのでしょうか?また冬場は選手や選手の家族にどういったことを呼びかけているのでしょうか?降雪量が多い地域のチームの監督にお話を伺いました。
富山県代表大久保少年サッカークラブ
■体育館でのサッカー・フットサルには地域の理解が必要
富山県代表の大久保少年サッカークラブの栗山邦彦監督は「今の時期はほとんど室内でのサッカー・フットサルでボールを扱っている時期です。フットサルをやるには良いタイミングでした。11月下旬以降はずっと室内での練習になっています。3月中頃までは室内練習を行い、その後春休み以降は県外遠征で太平洋側、関東等雪のない所へ出ることにしています」と語っています。
秋田県代表の仁井田レッドスターズの長谷川祐市監督も「11月くらいから外でのトレーニングはなく、全て屋内です。フットサル場は秋田にはありませんので、学校の体育館や近隣の体育館で練習を行います。3月中旬くらいまでは外でやりません。この時期外でやるチームもありますが、うちはできるだけ体育館で引っ張ります。寒いところでやると実になりません。サッカーに没頭できる環境を与えてあげたいのです」と語り、やはり11月から3月半ばまでは室内でのトレーニングとなります。
秋田県代表仁井田レッドスターズ
この時期は主に体育館を練習場として使うのですが、苦労もあるようです。「フットサルをできる環境が多くなくて、体育館をそんなに自由に使える環境にはありません。フットサル場は1ヶ所、近くにあってそこを使うこともありますが抽選になるので、なかなか予約しづらいです。うちのチームの場合はわりと自由に使わせてもらってそれほど問題ないのですが、ボールを蹴ると体育館が傷つくので、制限をかけられているチームもあります。うちのチームは100人ほどいるのですが、体育館のコートを半分しか使えないので、学年によって時間を変えてトレーニングを行ったり、本当に狭いところでトレーニングをするようにしています(栗山監督)」。
「体育館でサッカーをやるというのは結構嫌われます。うちは仁井田小学校の体育館というホームがありますので、そこでやらせてもらえています(長谷川監督)」この時期のトレーニングは地域の人たち、体育館など施設側の理解があって初めて行えるものなのです。
室内トレーニングで磨いた技術を見せた仁井田レッドスターズ
■夏場以上に身体のケアを心掛けて
この時期はどんなトレーニングを行っているのでしょうか?栗山監督は「テクニックを鍛えるにはちょうど良いチャンスです。細かくタッチして早めにボールを離すことを心掛けさせています。特にフットサルはピッチが狭い分、周りをしっかりと見てボールを早めに離すことは心掛けさせています。周りを見られる、自分でボールをしっかり確保するということはサッカーの基本とつながっていると思います」と、足下の技術向上を重点的に行う時期と考えているとのこと。
長谷川監督も「外でしかできないことは私はあまりないと思っています。うちは足下でボールをしっかりつなぐことを大事にしていますので、狭いということがマイナスにはなっていません。フットサルは狭い所でボールを動かす、人が動く、駆け引きなどはサッカーに通じる要素がありますので、サッカーの向上に非常に役立つと思っています」と語る通り、足下の技術を高める時期として室内トレーニングを有効活用しています。
冬は技術を磨く機会と捉えている大久保少年サッカークラブ
こうした冬場のトレーニングで特に気をつけるべきことは何でしょうか?栗山監督は「しっかりウォームアップすることです。足をケガするので、身体を十分にほぐして練習を始めさせるようにしています。普段の時期よりも長い時間をかけてウォームアップするようにしています。冬場は身体が硬くなってケガをしやすいのです」と負傷のリスクを避けるための工夫をしているそうです。
また、栗山監督は選手のご家族に対して「食事面はしっかりと食べさせるように言っています。睡眠についてもなるべく早く寝かせるなど、いわゆる生活環境を調えて下さい、といつも以上に気を遣って呼びかけています。」とのこと。ケガのリスクが多くなる時期ですので、健康管理はより重要になります。
■雪国でも全国のチームと渡り合える
長谷川監督は「この時期いろんなチームと戦えるのは選手にとって経験にもなります。昨年に引き続き出場できているので、今の6年生も昨年プレーした子やベンチにはいたけれども出られなかった選手がいます。そういう思いが県大会でも爆発して、ここにもう一回来たいという思いがありました」と語り、この冬の時期に全国大会へ出場できるのは大きな経験になるそうです。
「今の高校3年生の代が全国大会の準々決勝で負けたのですが、もっと上に行けるという手応えを自分は感じています。秋田県でも関東でも関西でも九州でも対等に戦えると思っています。雪国のハンデなんてよく言われますが、ハンデに感じたことはありません。ベガルタさんとよく試合をやらせてもらいますが、ベガルタさんも本当の雪国ではないですが、関東や関西のチームと渡り合えるじゃないですか。秋田は雪降っているからダメなんて思いませんよ」と長谷川監督は強気です。
ベガルタ仙台ジュニア、ヴェールメリオと雪国チームがベスト4進出
長谷川監督の話にも出たベガルタ仙台ジュニアは今大会3年連続ベスト4進出を達成。ベガルタ仙台ジュニア西洋祐監督は「気候に関して何を言っても変わりませんから、それをポジティブに捉えてやっていくことが大事だと思います。体育館でやるなら狭い局面打開のところを学べますし、今ある環境で成長していくことを考えたいです。宮城県の選手、東北の選手でもこれだけやれるというところを見せていきたいというのは第一に考えています」と降雪や寒い気候も前向きに捉えていました。
今大会は新潟県代表のヴェールメリオもベスト4進出。雪国でグラウンドが使えなくても、少年時代室内で狭いスペースの中技術を磨き、プロで活躍する選手は数多くいます。サッカーやフットサルにとって雪国であることは決してハンデではないのです。
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取材・文・写真/小林健志