■身近で手に入る、プロも使う実用的な小道具
最後に、プロが使う「小道具」について触れたいと思います。兼子さんは普段から、下記のようなアイテムを現場で活用されているそうです。
プロカメラマンが撮影する試合の現場では、選手や周囲の邪魔になるために三脚の使用が禁止されている会場も多いため、兼子さんは日常的に一脚を使って撮影をしています。
「でも一脚だと上下の急激な動きに対応できないので、使用可能であれば三脚の方が安定感もあってブレないのでオススメです」
また、ゴミ袋はあらゆるシーンで活躍するそうです。「雨が降った時にカメラバッグを入れておけますし、頭を出す穴を空けてポンチョ代わりにもできます。それに、カメラを覆って穴からレンズの先端を出せば、防水しながら撮影できます。もちろん、現場で出るゴミ入れとしても機能するので、必ず持ち歩くようにしています」
子どものサッカーを気持ちよく観戦するためには親のマナーも大切です。これは参考になる使い方ですね。
椅子は「目線」を意識する上でも、座って撮影できるツールです。
「それに、踏み台として使用することも可能です。数十人規模の集合写真などは、こうした小さな踏み台に乗るだけでも、全員の顔がしっかり写るように撮れます。その際は、できるだけ横長ではなく正方形に並んで撮ると一人ひとりを大きく写せます」
アンブレラブラケットとは、カメラやレンズに傘を装着するための器具です。「これも、プロの現場では傘の使用を禁止されていることが多いですが、邪魔にならないで使えるようなら、とても使い勝手がいいアイテムです。カメラは水が天敵ですし、何より両手が空くので、雨の中での撮影でも苦になりません」
もう一つ、雨で重宝するのがティッシュです。「横殴りの雨になるとレンズの表面が濡れてしまうので拭くのですが、タオルだと水に濡れると水分を広げてしまうだけです。でもティッシュは水分を吸ってくれるので、それだけでクリアに撮影できます。僕自身、ティッシュにはよく救われています(笑)」
兼子さんも話していたように、今回の内容のすべてをいきなり身に付けるのは難しいですが、プロが実践するノウハウを試していくことで、"プロ並み"の撮影ができるようになるに違いありません。
次回は、取材時に実際に撮影した写真を見ながら、今すぐ使える実践的なテクニックを紹介します。
兼子愼一郎/フォトグラファー
日本スポーツプレス協会会員。国際スポーツプレス協会会員。サッカージャーナリスト養成講座「カメラマン科」では講師を務める。1991年よりフリーランスとして活動。ベースボールマガジン社、ソニーマガジンズ、Jリーグフォトなどの仕事を経て、1998年よりイタリアサッカー専門誌「CALCIO2002」や「Jリーグサッカーキング」などに携わる。これまでワールドカップは3回取材、チャンピオンズリーグ決勝を10回以上撮影した実績がある。