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サッカー豆知識

部活だけでなく勉強、挨拶、掃除、片付けも頑張ることで、人間としても大きく成長/多くのJリーガーを生んだ公立高校の指導哲学

公開:2018年2月28日

キーワード:Jリーガートレーニング公立高校凡事徹底川崎フロンターレ指導

■三、強いチームは良いあいさつができる。

「あいさつはコミュニケーションの始まり。オープン・マインドの原点」

コミュニケーションはピッチにおいても重要であり、心を開くことが指導者の言葉やアドバイス、チームメイトからの指示や要求を素直に聞くことにつながります。

前述の「目と耳を鍛える」というのも、コミュニケーション能力を高めるための土台となります。

ゲームでもボールを失わないために、「敵がきている」「こっちにパスが欲しい」といったメッセージを言葉にして発する必要があります。

「喋らない子がいたら、『お前とはサッカーしたくないよ』と言います。例えば2人で歩いていて後ろから車が近づいて来た時に、喋らない子と一緒だと、何も分からず轢かれてしまう。轢かれた後に『......先生、大丈夫ですか?』って言われても遅いじゃないですか(笑)。だから『そんなやつとは一緒に歩きたくないし、サッカーもやりたくないよ』って言うんです。ボールを失わないためにコミュニケーションが必要なのは、それと同じことなんだよと」

ボールを奪われないように全員で協力し、奪われたら全員で協力して奪い返す。そのためにコミュニケーションが欠かせません。その原点となるのが日々の「あいさつ」なのだと、平岡氏は生徒たちに説いています。

■四、感動する心と、感謝の気持ちを常に持とう。

「親や家族を大事にすることができる選手は必ず成長する」というのも平岡氏の持論です。

「お世話になっている人達に喜んでもらいたいという気持ちは、頑張るためのエネルギーの1つになる。伸びる子は、自分の充実感や喜びをそこに還元するんだというものを持っている」と。

「何人に対して感謝の気持ちを持てるということは、それだけ心に余裕があるということ。『ありがとう』とか『お世話になります』とか、口に出しても1秒足らずの言葉ですが、そのひと言で相手の心が変わったり、もっと言うと一生が変わることもあるかもしれない。それはピッチ上でも同じことで、『プレッシャー来てる』と言われて助かったら、『ありがとう』『サンキュー』と、当たり前のように言えるようになって欲しい。そのためには日常で習慣化するしかないわけで、保護者に送ってもらう、もらった時は『お願いします』『ありがとう』と言えるようにならないといけない。それができるようになると、成長にも加速力がつくと思います」

■五、苦しいときは前進している。

「本気で物事に取り組めば、必ず壁に突き当ります。つまり壁に当たったということは、前進している証拠。そういう時に周囲が多角的なサポートをして乗り越えることも重要で、選手がスランプに陥っているのであれば、『心配するな、今はエネルギーを溜め込んでいる時期で、もう少しで上手くなっている自分と会えるはずだ』と声をかけています」

これは日々のトレーニングについてだけではなく、試合を戦っているときにも言えます。

「たとえば、皆が苦しくて下を向いている時でも『大丈夫』『できる』『頑張ろうぜ』と鼓舞できる存在ならば、周りを引っ張っていくことができる。苦しい時に何ができるかというのが人間の一番大事な評価で、そういう人間になって欲しい」という平岡氏。

指導者の仕事は、生徒たちのcan notcanにすることです。ここまでの4つの項目を一生懸命頑張ると、やっぱり苦しいんですよ。だから、ポジティブな考えを継続させるための5つめでもあるんです」

「『もうだめだ』の先にあるすごい自分を意識しろ」「誰でもできることを、誰もできないところまでやれ」「精神力は貯金と逆。引き出し続けることで増してくる」等々、選手達に常にポジティブな声かけ、「言葉くばり」を続けることで、選手達の内面に働きかけています。

■学校全体に波及、 部活成績だけでなく、国公立大学の合格率も向上

今では、「大津高校から選手が欲しい」という大学も少なくないそうです。これまでに様々な大学へ進んだOBたちが、それぞれの進学先でそう思わせるだけの態度や存在感を示してきたからでしょう。選手としてだけでなく、主務として運営に主体的に関わったりするケースもあり、後輩たちの道を拓くことにもつながっていったのです。また、Jリーグというプロの舞台へは進めなくても、入社した企業で主力として働いていたり、事業を興したり、地域で信頼される存在にフットサルやビーチサッカー、あるいは地域の普及活動や審判活動に活躍の場を移し、学んだこと、身につけたことを実践している卒業生も多いそうです。

こうしたサッカー部の取り組みは他の部活動の生徒たちへも好影響をもたらし、バスケットボール、吹奏楽部なども県内で好成績を収め、また国公立大学への合格率も向上したそうです。

平岡氏は、その他校のコーチの練習見学を認めノウハウをオープンするなど、熊本のサッカーの振興にも大きく貢献。その手腕を高く評価されて、昨年2017年4月には51歳という若さで宇城市の教育長に任命。現職の教諭が就任することは極めて稀であり異例の出世と言えます。

平岡氏の育成哲学と大津高校の歩みをまとめた書籍「凡事徹底」はサッカーにとどまらず教育関係者、子育て中の父母たちにも幅広く読まれており、発売4カ月で第4刷というスピードで熊本県を中心にベストセラーとなっています。


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記事提供:内外出版社 写真:井芹貴志

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