■コーチと保護者とのコミュニケーションはとにかく「密」に
子どもたちの潜在的な意欲、能力を最大限に生かし、自立する力を養う「教育コーチング」。その普及に取り組んでいるのが、日本青少年育成協会です。12回目となるこのコーナーでは、PM級認定トレーナーの本田恵三さんに『コーチと保護者の距離感』について、お話を聞いていきます。
最近、指導の現場で保護者の存在をうとましく思ったり、面倒だと感じているコーチを見かけることがあります。「あの子の親はうるさいからなぁ」と言って、保護者との関わりを避けたがるのです。
これは絶対にしてはいけないことだと思います。なぜなら、親の意見にこそ、子どもと接するときのヒントが隠れているからです。 コーチが保護者との関係で悩んでいることの多くが、情報不足によるところが大きいもの。それに気づかず、一方的に自分の考えを子どもに押し付けると、保護者から不満の声が出てきます。
そこで前回もお伝えしたように、保護者と話し合い、コミュニケーションをとることができれば、感情の行き違いを減らすことができます。
私は試合の前後に、子供たちを座らせて、保護者にも聞こえる位置で話をすることがあります。そこで自分の考えや方針を、子供たちに伝えるのです。保護者は「監督は何を考えているんだろう」「どんな方針なんだろう」と不安を感じ、情報を欲している場合が多いもの。そこで保護者にも聞こえるように伝えると、情報を共有することで不安を解消する手助けになります。
保護者との関わりについて、コーチングスタッフでミーティングをすると、「私は選手のためを思って厳しく言っているんです。保護者になんと思われてもいいんです」と言うコーチがいます。
そこで私はこう言います。「なんと思われてもいいんだったら、意図が伝わるように話してごらん」と。意図が明確であれば、自分の言いたいことが伝わりやすくなりますよね。
コーチは保護者との関わりを嫌がらず、しっかりと向き合ってコミュニケーションをとってみてください。そうすることで互いに理解が深まり、良い関係性を構築することにつながります。それが、結果として、子どもに対して良い距離感でサポートすることになっていくのです。
コーチと保護者の関係性が良好なチームは、選手同士の雰囲気も良いもの。子どものためにも、互いにコミュニケーションをとり、今まで以上に理解を深めてみてください。
本田恵三//
社団法人日本青少年育成協会本部所属。少年サッカー指導歴15年のベテランコーチ。子どもたちのやる気を引き出す理論と手法に定評がある。