自分のつらい気持ちを言葉で表現できる大人は自分自身の体験をカウンセラーに話すことで心の平衡を保つことができます。しかし、言葉による表現ができない子どもの場合には、一見するとわがままに見える行動が表れることもあります。そんなとき、その子のわがままな振る舞いに対して「いけない!」と強く叱責することなく、ありのままに受け止め、冷静に対応してあげる姿勢が大切です。
具体的には、どのように対応することが必要なのでしょうか? まずは、普段と変わらない生活を取り戻すことを心がけてみましょう。変化の中にいるとストレスを感じるものです。いつもの日常を取り戻すのです。そして子どもの目線に立って、今自分に降りかかって起きていることを話してあげましょう。その際に大切なことは、「自分は守られている」という感覚を子ども自身に感じさせるようにすることです。
最初は、何も話したがらないかもしれません。そんなときは、無理に話を聞き出そうとはせず、温かく見守るようにします。一人にすることは極力避け、家族とゆっくりすごす時間を持ちましょう。そして、本人が自分から何かを表現しようとするときに傾聴(じっくり話を聞いてあげる)してあげましょう。気持を受けとめてあげるだけで子どもは落ち着いていきます。
また、ストレス時の症状悪化を防止するためには、深呼吸・有酸素運動などのストレス軽減法を身につけることも効果的です。そういった意味では、身体を動かし、適度な運動をすることも効果がありそうです。本人の意思を尊重することが大切ですが、何か行動が起こせるようになったときに、一緒に体を動かしてみてはいかがでしょうか。
◆参考文献
アメリカ精神医学協会(編) 高橋三郎・大野裕・染矢俊幸(訳)(2002). 『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』 医学書院