第36回全日本少年サッカー大会決勝大会は3日目に入り、2次ラウンドが行われ、熱戦の末決勝トーナメント進出の8チームが決定しました。
しかし、熱戦は2次ラウンドだけではありません。1次ラウンドで敗退が決まったチームはドリームリーグというリーグ戦を戦い、4日目に行われるドリームトーナメント進出を目指し、こちらも熱戦が繰り広げられました。1次ラウンドで敗退したチームにも多くの実戦の機会を与えようという試みで、昨年から行われています。
こうしたドリームリーグを見て行くと、ポジティブな応援で子ども達を後押ししているチームが見られます。福島県代表のアストロンは、野田昇さんを中心としたポジティブな応援が名物。試合前には「がんばろう~ぜ、がんばろう~ぜ、ア~ストロン」という野田さんの歌声で始まり、相手チームにも「よろしく○○(チーム名)」とコールをして、対戦相手への敬意も忘れません。試合中は良いプレーをした選手に選手コールをした後、野田さんが「ナイスファイト!」と締めるのが恒例。コーナーキックのチャンスには「コーナー1点!」などバリエーションも豊富です。ハーフタイムの間にも登録選手全員のコールをするなど、熱く楽しい応援が繰り広げられていました。野田さんの声は大きくてよく通るので、御殿場高原時之栖裾野グラウンドは広いのですが、遠くのピッチにいてもアストロンが試合をしているのがよく分かります。野田さんは「Jリーガーやプロ選手ではないので、小学生には保護者の声が一番気持ちが伝わる」と語り、太鼓などは使わず声での応援にこだわっています。
野田さんは6年前から応援に参加したそうで、サッカーだけでなく、野球チームなどにも応援活動を行っています。野田さん自身は野球経験者で、レギュラーになれない中で自分の存在をどこで示すかと考え、応援することでチームを勝利に導きたいと思い、応援活動を行っているそうです。
以前は、選手に対して文句を言ったりして会場から退場させられたこともあったそうですが、そこから文句や批判を言わず、前向きな掛け声を主軸にした応援方法に転換したそうです。野田さんは「練習は厳しいけど、試合になったら今までの積み重ねを発揮できるような、サポーターとして支援する方向の応援を心がけています」と応援の方針を語っています。ネガティブなことを言うご家族の方がいたら注意することもあるそうです。
「今、主役の選手がいても、その選手はいつまでも主役ではありません。その選手が挫折した時に、周りで応援して、それが励みになって次のステージに向かって進んでいけるように、彼らの背景に自分たち応援団がいれば良いです」と語る野田さん。こうした温かい応援を受けているアストロンの高田泰樹監督は「野田さんは自分たちだけでなくて相手も盛り上げて、みんなで盛り上げていこうという気持ちでやってくれています。我々は元気を貰っていて頼もしいです」と野田さんらの熱い応援に感謝をしています。
今年3月の「仙台だより」でチビリンピックの時に取り上げた時と練習環境は全く変わっておらず、体育館で練習せざるを得ない日もあるなど、厳しい環境に置かれている福島県いわき市で活動するアストロンですが、「福島のサッカーを盛り上げたい、楽しい環境の中でチームが闘えるようにサポートしたい」と野田さんが語るように、アストロンの試合は楽しい雰囲気であふれています。昨年はドリームリーグを勝ち抜き、ドリームトーナメントで優勝したアストロン。今年もドリームリーグの勝ち抜けが決まり、ドリームトーナメント2年連続優勝を目指します。
アストロン応援団
写真左:野田昇さん
写真右:蛭田政嗣さん
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取材・文/小林健志、写真/小林健志・サカイク編集部(2012全日本少年サッカー大会より)