こころ
子どもの「どうすればいい?」に「こうしなさい」と答えてはいけない理由
公開:2015年12月22日 更新:2021年1月27日
■やってみようともせずに諦める子どもには「できなくてもいいんだよ」が効果的
また、最近多いのが「できないものは、できない」と決め込んで、頑張ろうとしない子どもが増えているんだそうです。そういった子どもにチャレンジしようという気持ちをもたせるために、「できないことは、楽しいことだ」「できなくても大丈夫」と思えるような環境設定を大人がしてあげることが大切だと福中さんは言います。これも前述の「人と違うことは×」という感覚にも通じるのかと思います。「人と違ってもいいんだよ。できなくてもいいんだよ、大丈夫だよ」という声かけをするだけでも違いますよね。
さらに、小さい失敗体験や成功体験を繰り返しできる環境設定も大切だと福中さんは言います。「やり方だけを教えて、成功させるっていうのが近頃多いですよね。だから、失敗経験の少ない人が多いんじゃないかと思うんです。子どもの頃に小さい失敗体験をいっぱいしておく、させておくことが大事なんじゃないかなって思います。成功してばかりで大きくなっても、いつかは必ず失敗や挫折を味わうと思うんです。失敗体験をしてこなかった人は、そうした時に立ち直れない人間になるんです。でも、失敗体験をしていると、へっちゃらってなれるんですよ。それに、失敗するから考えて試行錯誤して成功するわけじゃないですか。失敗することって大事だと思うんですよね」
また、子どものチャレンジ精神を育てるための、別の観点からのアプローチとして「チャンピオンを作らない」という方法を福中さんは推奨しています。
「つながり隊で最初にやるメニューの一つに、いろんな人と交わる手押し相撲があるんです。手と手を押し合って、足が動いた方が負けっていうゲームなんですけどね。そのルール設定が、勝ったら勝った人と、負けたら負けた人とやるっていうルールなんです。『チャンピオンを決めます!』ってすると、できる子は嬉しいんですけど、できない子はやりたがらないんです。そうするから、やりたがらない子が増えるんです。体力の二極化って、ここ何十年言われてますよね。できない子はどんどん離れていくんです。だから、勝ったら勝った人同士でやる。勝った人同士なので段々と同じレベルになっていく。負けたら負けた人同士でやる。これも負けた人同士だから同じレベルで拮抗した試合ができるようになる。そんな風にしていくと、チャンピオンじゃないんだけど、勝ったら勝った人とどんどんできるし、負けたら負けた人同士でチャレンジして勝ち負けを決められるじゃないですか。日本って多くないですか?チャンピオンを決めたがるっていうの。やっと子どもの全国大会をやめようっていう風潮ができてきましたよね。そういうことって、もっと先でいいのかなって。小学生以下の時はやってみようっていうチャレンジ精神だったり、自分で行動していきましょうってことの方が大事なのかなって。そういう気持ちや行動を起こせるような環境設定を大人がしてあげるっていうのが大事だと思ってます」
■親の役目は、正解や勝ち方はひとつじゃないことを教えてあげること
確かに、あまりに力の差のある相手とやってもおもしろくないですよね。がんばったところで勝てるわけがない。そう思ってしまった時点でやる気になれないでしょうから。「がんばれは勝てるかも」「やってみたらできるかも」と思える、子どもの能力に合った課題設定を大人が見極めてあげることが大切。親がその見極められる目を養うことが大切ということですね。
それと同時に、やり方は一つじゃない、勝ち方は一つじゃなということを示してあげるのも大人の役目だと福中さんは言います。前述の手押し相撲にしてもそうですよね。押すばかりが勝つ手段ではありません。押してだめなら引いてみな。もちろん、それに自ら気づき、試行錯誤できる子どもであれば、率直に「おー、ナイス!」と褒めてあげればいいでしょう。でも、もし、そうでなければ、こんなやり方もあるよ、と大人が提示してあげるというのも、子どものやる気を起こさせる方法と言えます。うまく子どものやる気スイッチを見つけてあげられるか、やってみようという気持ちをくすぐれるか、大人の腕の見せ所です。
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取材・文 中野里美 写真提供 京都サンガF.C