■思いやりとチャレンジが将来の役に立つ
弱視クラスのブラインドサッカー日本代表として世界と戦う秋葉選手だからこそ、影響力が大きいのは言うまでもありません。
生徒A 「これまで戦った中でどこが強かったですか?」
秋葉選手 「イタリアかな」
生徒B 「何対何だったんですか?」
秋葉選手 「1-2でした。一人すごいドリブラーがいて止められなかったけど、みんなで守ってなんとかこの結果までもっていきました」
こんな何気ない会話でも生徒たちは秋葉選手の話にどんどん引き込まれていました。それは同選手が『スポ育』を通じて伝えたい2つのことが、自分たちにとっても大切なことだと肌感覚で理解していたからです。
「最初はアイマスクをして体操したり、走ったり、ボールを蹴ったりして怖かったよね。でも、最後のコーン当てゲームのときはどうだった? おもしろかったよね。どうしてだろう...。そう、協力し合ったから。これね、思いやり。スポーツだけでなく、私生活でもこの思いやりを持つことは大切なことなんです。両親、兄弟、友達...みんな思いやりを持てば仲良くできるでしょ。
今日、ブラインドサッカーをしてみて最初は怖かったと思います。初めてのことは、みんな怖い。でも、チャレンジしてみるとどんどん楽しくなるし、おもしろくなるよね。何でもいいから好きなことに挑戦し続けてみてください。先生も最初はサッカー下手だったよ。でも、毎日練習をすればボールを蹴られるようになったし、試合にも出場できるようになった。これは勇気を持ってチャレンジしたからです。そうすれば、その先にこれまで自分が知らなかった世界を見られるかもしれない。僕は日本代表にもなれたし、所属チームで日本一にもなれた。チャレンジしなかったらできなかった経験です。
みんなも思いやりとチャレンジの2つを忘れないように、この経験を今後に生かしてください」
『スポ育』の最後に、このように生徒たちに語り掛けていました。帰り途中、電車の中で秋葉選手と会話をしていると驚くほどさまざまなことにチャレンジしていました。
「今度、トライアスロンの大会に出場するんですよ。あと、久しぶりにテレビゲームもしたいですね」
障がい者は見た目ではわからないこともあります。たとえば、内蔵に疾患を抱え、薬を服用している人も少なくありません。しかし、健常者と同じように生活しています。だから、思いやりの重要性を誰よりも感じているし、障がい者だからと怖がっていても前進がないことがわかっているからチャレンジを続けるのです。そこには障がい者も健常者も違いはなく、どの立場にいても同じです。スポ育には、子どもも大人も人間性を豊かにするヒントがたくさんつまっていました。
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取材・文 木之下潤