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プレイヤーズファーストって知ってる?ただ褒めるだけではなく、然るべきタイミングに褒める親になろう

公開:2017年1月 6日 更新:2021年1月27日

キーワード:プレイヤーズファースト小島洋邦関前SC

少年サッカーにおける「プレイヤーズファースト」の一つに、子どもが伸び伸びとプレーできる環境を整えることが挙げられると思います。
 
ところが、未だに少年サッカーの現場では、周りの大人たちからストレスを発散するかのような野次が飛ばされ、子どもが委縮するような光景が見られるのが現実です。 
 
「なんでシュートを打たないの!」「パスだよ、パス! 逆サイドあいてるよ!」
 
そんなふうにピッチサイドから大声を張り上げていませんか? その大人の声はどれだけ子どもに届いているでしょうか。その声はどれだけ子どものためになるのでしょうか。
 
「ときには怒ることがあってもいいと思うんです。本当に子どものことを思っていて、子どもとしっかりとコミュニケーションが取れていれば、怒ることで子どもに伝わることもあると思います。しかし、感情的で一方的な怒りには意味がないと思います」
 
そう話すのは、東京都武蔵野市の強豪町クラブ、関前SCを率いて約25年になる小島洋邦さんです。小島さんの教え子にはなでしこジャパンの岩渕真奈選手や多くのJクラブ下部組織でプレーする選手がいます。
 
今回は、小島さんと一緒に「少年サッカーのプレイヤーズファースト」について考えてみたいと思います。(取材・文 杜乃伍真)
 
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■辛抱強く待つことが大事

小島さんは言います。
 
「サッカーは外から見ている人のほうが、あのプレーはこうしておけばよかった、ということがよくわかるスポーツなので、大人があれこれ言いたくなってしまう気持ちはわかります。それに少年サッカーの場合は、外から見ている親御さんにとってわが子が、まだまだ自分の思い通りに動くものという感覚があるのだと思います。しかし、そうではなくて、子どもの実力をどう伸ばすかを考えられる親になってほしい。子どもが親の言うとおりにプレーするのではなく、もっと自分で考えて工夫できる選手になるために、父親はどうすればいいか、母親はどうすればいいか、そしてコーチはどうすればいいか。そんなふうに考えられる人がたくさん出てくれば、少年サッカーの現場はよりよくなると思っています」
 
ピッチサイドから見ている大人からすれば、どういうプレーをすれば成功する確率が上がるのか、どうすればゴールが生まれるのか、それらが何となくわかるからこそ伝えたくなるもの。
 
「けれど、ジュニア年代の子どもたちに今やってほしいのは、自分の頭で考えてプレーすることです。私のチームではピッチサイドから怒鳴り散らすようなコーチも親もいませんが、毎年のように、なぜ何も考えないのかなあ、と思うシーンがしばしばあります。たとえば、サイドラインを突破して中央に浮き球のクロスを上げたときに、コーチ陣や大人たちから区別なく『ナイスプレー!』と声がかかるんです。子どももクロスボールをあげたことで満足してしまっている。でも、実際には中には浮き球にヘディングで合わせようとする子どもはいません。
 
だから私は言うんです。『なかにヘディングする子がいないなら、どうすればよかった?』と。何も考えていないから、浮き球のクロスボールを上げること自体が目的になってしまっている。だから私は何度も子どもに伝えます。『逆にヘディングが強い子が中にいるならばどうすればいい?』『そんなふうにしっかり考えてプレーしていこうよ』。
 
大人に、こういうときにこうしてほしい、という考えがあるのはわかりますが、子どものプレーは大人が操れるものではありません。それどころか、子どもはときに大人の想像を超えるようなワクワクドキドキするプレーを見せてくれることがあります。『そういうプレーをたくさん見たいよね』と私はいつもコーチたちに話をしています。かつてチームに所属した岩渕真奈に、私はああしろこうしろなどと言ったことはありません。彼女は自分で考えてプレーできる選手だったから、ワクワクドキドキするプレーを見せてくれたし、どんどん伸びていきました」
 
子どもに一生懸命に考えさせて、仲間同士でも話し合いをさせて、それでも答えが出なかったらコーチのところまで聞きにくるように促す。そのためには、「辛抱強く待つことが大事」だと小島さんは言及します。
 
「今の子どもたちは自分から何かを発言しようとすることが本当に少なくなっているので、昔よりも2倍も3倍も根気づよく待ってあげることを大事にしています。待って、子どもに考えさせて、それでも答えが出ないときにこちらから少し助言をして、それを子どもがまた考える。そして実際に実行に移してみたらうまくプレーできたとする。そのときに『ほら、できたでしょう? でも、答えはそれだけじゃないよ。もっと工夫してごらんよ』。そんなふうに盛り立ててあげると、子どもはどんどん工夫しようとします。そして子どもから『監督、こんなことがありました』『こうやったら失敗しちゃいました』、今までなかった会話がそこで生まれて、監督やコーチ、子どもたちが一つのプレーについて話し合えている。勝っても負けてもそういう循環がチームにあればいいなあと思うんです」
 
 
次ページ:しかるべきタイミングに褒めることができる親になろう
 

 
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取材・文 杜乃伍真

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