■やる気がない子どもにどう接する? 答えを変えたければ聞き方を変える
「なぜできないんだ?」は「何が原因だろう?」に変換する
「なぜできないんだ!」は、NGワードとわかっていても、ついつい言ってしまう言葉のひとつです。飯山さんは「なぜできないんだ」をグッとこらえて、「なにが原因だろう?」と聞くことを提案します。
「なぜできない?と聞かれた子どもは、事実できないわけですから、逃げることしかできないんです。ごめんなさいと謝るか、うつむいてしまう。そもそも大人も答えを求めていませんよね。こうした感情をぶつけるような言葉かけはマイナスです」
一方で「なにが原因だろう?」という聞き方なら子どもたちは原因について考えを巡らせることになります。「あのときのトラップが悪かったのかな?」「準備は良かったけど慌ててシュートをふかしたな」など、はっきりとした原因がわからなくても、自分のプレーを振り返り、原因を探ることができるのです。
「何があったかを振り返ることができれば、どういうところにつまずいているのか、どこが難しいのかが具体的にわかるようになります。これは指導者や親から指摘されるより自分で振り返る方が効果が高いのはよく知られていることですよね」
子どもたちに原因を聞くことで、考えるプロセスを経験してもらう。これはやる気を引き出すためにとても重要なことだと飯山さんは言います。
「どうしたらいい?」ではなく「どうなっていたらいいと思う?」と聞く
子どもたちが自分たちなりの原因を見つけ、その課題に取り組もうとしたとき、「原因わかったよね?じゃあどうしたらいいと思う?」と聞いてしまうことがあります。
部屋が片付けられない子どもに「散らかっていると必要なものが必要なときにすぐに出せないよね?」「うん」「じゃあどうするの?」
よくある会話ですよね。大人にしてみれば、原因も結果もわかっているんだから改善して! と思うのですが、子どもたちは「きれいだと必要なものがすぐに出せる」というリアリティがないのです。そんな状態で「どうしたらいい?」と聞いても、子どもは行動してくれません。
「うまく行っているイメージ、その姿が思い浮かばなければ、子どもたちには響かないんです。ドリブルでも、『どうやったら抜ける?』と聞いても、経験がなければわかりません。しかし、『どんなふうに抜きたい?』『どうなっていたらいい?』と問いかけると、ネイマールのようにとか、メッシのようにフェイントをしてかわしたいなど、具体的で自発的なやりたいことが子どもたちから溢れてくるのです」
大切なのは子どもたちが自分でイメージしやすい声がけをすることだと飯山さんは言います。
■「目標は?」ではなく、「1年後どうなっていたい?」と聞く
サッカーに限らず、目標をもつことはとても大切なことです。「目標を明確に」というのはメンタルトレーニングにかかわらず、スポーツの基本のように思われています。飯山さんはこの「目標」も言い方によって子どもたちのとらえ方が変わってくると言います。
「目標ってなんだか漠然としていますよね。将来の目標なのか? 次の大会での目標なのか、今日の練習の目標なのか? 聞かれた方がイメージできないんです。なので、子どもたちには1年後と期間を限定してあげて聞くと良いでしょう」
「1年後どうなっていたい?」この問いかけには、子どもたちも具体的に答えることができると言います。
「こうなっていたいという姿の写真を貼るのも効果的です。目標に向かってやる気を引き出すには、できた状態を作ることが大切です。こうなりたいという思いを思考の左脳だけでなく、イメージの右脳を使って強く印象づけることが重要です」
飯山さんは指導しているチームの選手に目標だけでなく、写真や貼ったり絵を書いたりすることで右脳を刺激して、「できた状態」をイメージさせることを心がけているそうです。
今回は、いまどきの子どもたちのやる気を引き出すために、大前提となる声がけ、言い方についてご紹介しました。次回は、「そうは言っても」どうしても自信が持てない子ども、ピンチに弱い子どもたちのやる気の引き出し方、実用的なメンタルコントロール方法についてお聞きします。
<告知>
「なぜできないんだ?」ではなく「なにが原因だ?」と聞く。今日から使える若者を動かす「言葉の使い方」とは
飯山晄朗/メンタルコーチ
一般社団法人 人財開発フォーラム理事長、銀座コーチングスクール金沢校・福井校代表、金沢大学法学部非常勤講師など
星稜高校でメンタルコーチを務め、2014年夏の高校野球石川県大会で歴史的大逆転劇を演じた。ほかにも26年振りの県大会優勝を成し遂げた石川商業高校、オリンピックメダリストなどのメンタルコーチも務めている。スポーツ以外の分野では企業経営者や経営幹部、チーム指導者を対象に、冷めて停滞している組織を熱く燃えるチームに生まれ変わらせるリーダーシップ教育、人財開発を行っている。
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取材・文 大塚一樹