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身体が大きい=GKではない。 「勇気」も評価の指標!? GK大国ドイツから世界レベルのキーパーが生まれ続ける理由

公開:2018年8月 9日 更新:2018年8月21日

キーワード:GKゴールキーパーテア・シュテーゲンドイツ代表ノイアー川原元樹

70年代はゼップ・マイヤー、80年代はシューマッハ、90年代にはイルクナー、ケプケ、2000年代に入るとオリヴァー・カーン、現在はマヌエル・ノイアー。いつの時代も国際大会で結果を残してきたサッカー強豪国ドイツ。振り返ってみるとそこには常にワールドクラスのGKがいました。

なぜ、ドイツからハイレベルなゴールキーパーが次々に出てくるのでしょうか? ドイツはロシアW杯ではグループリーグで敗退してしまいましたが、マヌエル・ノイアー(バイエルン)やテア・シュテーゲン(バルセロナ)といった、世界トップレベルのゴールキーパーを輩出し続ける『GK大国』です。その理由を、ドイツで7年間GKコーチとして研鑽を積み、現在はFC岐阜でGKコーチを務める川原元樹氏に訊きました。
(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)

後編:「GKは準備が9割」ドイツでGK指導を務めたコーチが教える、ゴールを守るために大事な"予測">>

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現ドイツ代表の正GK、マヌエル・ノイアー(C)新井賢一

■ドイツ人がGKに向いているワケ

――率直にうかがいますが、なぜドイツからは良いゴールキーパーが次々に出てくるのだと思いますか?

ひとつ言えるのは昔からドイツ代表に手本になるような素晴らしいゴールキーパーが存在していたからだと思います。かつてはシューマッハ(ケルンほか)やケプケ(ニュルンベルグほか)、カーン(バイエルンほか)、ノイヤー(現所属:バイエルン)、そしてテア・シュテーゲン(現所属:バルセロナ)など、ワールドクラスのゴールキーパーが次々に出てきて、彼らに憧れてゴールキーパーを始める子が増えるという好循環ができています。そして、サッカーはゴールを奪い、ゴールを守る競技です。ドイツ人はシンプルに、ゴールを奪うには優秀なストライカー、ゴールを守るには優秀なゴールキーパーが必要と考え、昔から育成年代においてもこのポジションには運動能力の高い子を置く傾向があると思います。そうすることによって、昔から良いGKが出てきやすい環境であったと考えられます。それに加えて、ドイツ人のメンタリティがゴールキーパーに適している部分もあると思います。

――具体的にはどういうことでしょうか?

ゴールキーパーは特殊なポジションです。ストライカーもゴールキーパーも共にゴールに最も近いポジションです。しかし、両者の決定的な違いは「得点」に近いのか、「失点」に近いのか。どちらもゴールには変わりないですが、両者のゴール近くでプレーする心理は大きく異なります。失点に一番近いポジションでプレーするゴールキーパーには責任感忍耐強さ、闘争心、リバウンドメンタリティ(困難を跳ね返し、這い上がろうとする精神)、リーダーシップなど、メンタル面の多くの要素が求められるポジションでもあります。私が接してきた中で、ドイツ人は他のラテン系のヨーロッパや南米の人と比べても、このあたりのメンタリティを備えている人が多いと感じています。

――「ゴールキーパーの気持ちは、ゴールキーパーにしかわからない」と言われることもあるぐらいですからね。

ゴールキーパーはミスが一際目立つポジションです。誰が見ても「キーパーのミスで失点した」というのはわかりやすいですよね。実際にチャンピオンズリーグの決勝でもW杯でも、ゴールキーパーのミスが失点につながったシーンはクローズアップされていました。 フィールドプレイヤーのミスはなかなか失点に直結しないので取り上げられないですが、ゴールキーパーのミスは失点に直結してしまいます。そこに違いはありますが、最終的にはゴールキーパー特有の責任を受け入れて自分で解決するしかありません。その意味でもゴールキーパーは他のポジションよりも孤独なのです。ドイツ人はシニカルで、有名な哲学者や思想家も多いのですが、突き詰めて物事を考えたり、内面と向き合い続けることが比較的得意な人たちだと感じています。また、自分や他人のミスを受け入れられるメンタリティも持ち合わせています。その辺りも、ゴールキーパーに必要な資質だと思います。

――それは国民性や教育環境に依るところが大きいのでしょうか?

それもあるかもしれません。というのも、ドイツはすぐに子どもを独り立ちさせるんですね。ドイツの幼稚園にサッカーの指導に行ったときに驚いたのが、時間割が決まっていないこと。全部の幼稚園がそうではないのですが、特定の日には、園児が最初に遊んでから課題を行うのか。それとも課題をしてから遊ぶのか。先生が子ども達に決めさせていました。まずは自分がどうしたいのか、自分の意見を持つという教育がされているんです。個人を尊重する文化がありますし、異文化にも寛容です。少し矛盾したように感じるかもしれませんが、「自分はこういう考え方なんだ」と自分をしっかりと持っているので、相手の意見や、自分との違いに関しても受け入れやすいのだと思います。それもゴールキーパー的なメンタリティだと思います。自分が今このチームに対して、どのようなプレーができるのか。もちろん味方のミスなどが絡んでシュートを打たれてしまうのですが、そうなった時にどう自分の責任として対処するのかという考え方がドイツ人は比較的上手にできる国民性です。

次ページ:身体が大きい=GKではない! 適正や「勇気」指数も重要視

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文:鈴木智之 選手写真:新井賢一

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