「うちの子やる気が見えなくて」「どうしたらやる気スイッチを押せるの」「やる気がないならサッカーやめな」など、保護者の皆さん一度は思ったり、実際にわが子に言ったことがある方もいるのではないでしょうか。
兄弟なのに上と下でやる気が全然違う、というご家庭もあるのでは。
実はやる気には種類があって、自分自身とやる気の種類・出し方が違うと相手に「やる気」がないように感じてしまうのだそう。
お子さんのやる気の出し方が親御さん自身の出し方と違うだけで、じつは意欲があることも。今回は「やる気」の種類についてご紹介します。
(文:筒井香)
1.「やる気」の種類
「やる気が出ない」「やる気を維持したい」という言葉をよく耳にします。ここで言う「やる気」とはいったい何のことを意味しているのでしょうか?
実はやる気は一種類ではなく、たくさんの種類があると心理学では考えられています。「A」というやる気がないだけで、「B」というやる気はあるかもしれません。また、「A」だけを維持しようとするから難しいのであって、他のやる気を生み出すことで、結果的にはやる気を維持できると考えられます。
今年は新型コロナウイルスの影響で大会が中止になり、「やる気が出ない」と訴える選手にも出会いましたが、「"試合前に持つ種類のやる気"は捨てる勇気が必要」というお話をさせていただいたこともあります。
例えば、やる気の種類には、以下のようなものがあります。
・新しいことを知りたい
・能力を発揮したい
・勝ちたい
・認められたい
・褒められたい
・仲間を作りたい
・金メダルを獲得したい
・賞金を獲得したい
2.「やる気」の出し方
「やる気がある」「やる気がない」とわが子に対して感じることはないでしょうか? しかし、本当にやる気がないかは判断が難しいものです。なぜなら、やる気に種類があるように、やる気の出し方にも種類があるからです。
例えば、やる気がある時に「大きな声を出す」というタイプの人は、「大きな声を出す」人を見て、「やる気がある」と感じますし、「声が小さい」人を見て、「やる気がない」と感じやすいと思います。
でも、黙々と取り組んでいても、やる気がある人もいますね。
自分と同じタイプの人のことはわかりやすいかもしれませんが、異なるタイプの人のことは間違った解釈をしてしまう可能性があるということです。
でも、「やる気」は目に見えないのでそれも当然ですね。「間違った解釈をしてしまう可能性がある」ということをわかっていることが大切だと思います。
3.イライラを鎮めるための3つのポイント
「うちの子はやる気がない」と感じた時に、イライラしてしまう、といったことはないでしょうか? そのような時には、以下の3つのポイントを意識することがオススメです。
①子どもに期待しているやる気の種類(例:勝ちたい)と、子どものやる気の種類(例:仲間と楽しむ)が異なっていることから生じている可能性を考える。
②ご自身のやる気がある時の様子や行動(例:声が大きく、テキパキしている)と、子どものやる気がある時の様子や行動(例:何も言わず、のんびりしている)が異なっていることから生じている可能性を考える。
③子どもに「やる気を出して頑張って欲しい」「良いパフォーマンスを出して欲しい」と願う気持ちがイライラに繋がる。イライラしたら、「今日も親として頑張る私がいる」と受け止めてみる。
このようにご自身のイライラの理由と向き合い、わが子のやる気の種類や、やる気の出し方に目を向けることが大切になると思います。
「やる気がある」とは、「今日、自分が行動を起こす理由がわかっている」という状態のことです。学校や練習に行く前に子どもと「今日のやる気」についてお話をして、一日を始めてみてはいかがでしょうか。
今日のやる気を生み出し続けることが、結果的に「やる気の維持」に繋がります。
筒井香(つつい・かおり)
株式会社BorderLeSS代表取締役 博士(学術)日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士
大学・大学院時代に人間行動学、臨床発達心理学、スポーツ心理学などの心理学から「人間の特性」を広範に学び、また、博士論文では、「個別性を重んじたポジティブシンキングの多様性」に関する理論を構築。現在はオリンピック、パラリンピック選手のメンタルトレーニングのほか、スポーツを頑張る親の学び舎「スポスタ」の講師として、スポーツを(アスリートとして)頑張っている子どもの保護者に向けて、人としてのキャリアのなかにアスリートとしてのキャリアも含めた、包括的な人生設計に重要な理論と実践方法を伝え、子どもの「キャリア=人生育て」を心理学の視点からサポートしている。
株式会社BorderLeSS
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