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本番で「リラックスしよう」と思うことは逆効果。緊張で普段通りのパフォーマンスが発揮できない2つの理由

公開:2023年5月 7日

サッカーに必要な3つの要素。それが「心技体」だ。日々のトレーニングで、技(テクニック)や体(フィジカル)の練習はたくさんしているが、心(メンタル)については、どのようにトレーニングしていいかがわからないという指導者、選手も多いのではないだろうか。

そこで今回はメンタルトレーナーとして、ジュビロ磐田の若手選手やジュニア年代の強豪クラブを始め、多数のスポーツチーム、選手のメンタルをサポートしている、株式会社43Lab代表取締役の清水利生氏に、選手の心理面を向上させる方法について解説してもらった。

「試合になると緊張して、いつものパフォーマンスが出せない」「やる気のある選手、ない選手がいるので、モチベーションを高めさせる方法を知りたい」といった悩みを持つ指導者、選手にとって、非常に有益な情報なので、ぜひ活用してほしい。(文・鈴木智之)

(※COACH UNITED 2023年1月16日掲載記事より転載)

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緊張とは無意識にできる心の反応のため、なくすことはできない

前編のテーマは「緊張してパフォーマンスを発揮できない2つの理由」。これは子どもから大人まで、共通する悩みだろう。

清水氏はまず「練習ではうまくできるのに、試合になると緊張してパフォーマンスが出せないのは、一番多い悩みです」と語りかける。

「なぜ、緊張すると普段どおりのパフォーマンスが出せなくなるのでしょうか? 理由は2つに分けられます。ひとつ目の理由が、緊張という感情を思考で押さえつけてしまうから。感情と思考が一致していない『不一致』が起きているのです」

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清水氏がメンタルのサポートをする中に、こんな選手がいたという。練習では良いプレーができるのに、試合になると緊張してしまい、50%ほどの力しか出せなかった。

「彼は試合で緊張したときに、できるだけ普段どおりの、練習と同じメンタル状態を作ろうとしていました。つまり緊張そのものをなくそうとしていたのです」

清水氏は「緊張とは心の反応なので、なくすことはできません」と前置きした上で、次のように説明する。

「緊張をなくそうとして『リラックスしなきゃ』と思うことが、パフォーマンスが低下する原因のひとつなのです」

脳を基準に考えると、「緊張している」と感じたとき「緊張を止めなければ」という指令が出る。

「緊張している状態で、『リラックスしよう』『リラックスしなければ』という心理状態に追い込まれると、ストレス状態が生まれてしまいます」

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ストレスを抱えたままプレーをすると、普段であればスムーズに体が動くものが、いつもどおりのパフォーマンスができなくなってしまう。これが「緊張してパフォーマンスを発揮できない理由」のひとつだ。

清水氏は「感情はコントロールすることができません」と言う。それを踏まえた上で「感情が揺れ動いた状態であっても、パフォーマンスが発揮できる状態を作ることが大切なのです」と言葉に力を込める。

指導者は「緊張=悪」と子どもに認識させないことが大切

続いて「緊張してパフォーマンスを発揮できない理由」の2つ目の説明に入っていく。ここでは「脈拍を測る」と「質問に答えながら脈拍を測る」というゲームを通じて、「いますべきことに集中することの難しさ」を体験させていく。

「私はこれを『アザーフォーカス』と呼んでいるのですが、試合中に『緊張をどうにかしよう』という考えと、『目の前のプレーを上手にしなければいけない』という2つの思考が芽生え、行動が分かれると、プレーに集中することができず、うまくいかなくなってしまいます」

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緊張したときに「リラックスしなければいけない」と考えることは、サッカーのプレー以外の要素を頭の中に芽生えさせることになる。

そうなると、脈拍を測りながら質問に答えるような、2つの異なることを同時に行う=ミスが起こりやすい状況ができてしまうのだ。

「私は小学生の時、PKが苦手でした。練習ではうまく蹴ることができるのに、試合になると緊張でうまくいかないことが何度もありました。そのときに、コーチに言われたのが『落ち着け』という言葉でした」

落ち着けと言われた清水少年は、PKを蹴ることに加えて、落ち着くこと、リラックスすることといった複数のすべきことが頭の中に浮かんできて、結果、キックにフォーカスすることができず、上手くいかない状況に陥っていたという。

「ここで知ってほしいのが、緊張=悪ではないということです。緊張することとプレーがうまくいかないことをセットにすると、緊張=悪いものになってしまいます。しかし、緊張を感じながらも良いプレーができたり、良い結果を出せることもあります」

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そして、こう続ける。

「指導者が大事なのは、子どもたちが緊張しているからといって、それを(うまくできないという)結果に結びつけないこと。子どもたちに、緊張を悪いものだと認識させないことが大切なのです」

緊張の原因がわかれば、対処法も浮かび上がってくる。後編では、緊張して、試合で良いプレーができない選手に対して、どのようなアプローチをすればいいのか。具体的な解決方法を紹介していく。

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【講師】清水利生/
山梨県韮崎市出身。プロフットサル選手としてFリーグでプレー。
引退後にメンタルトレーナーに転身し、2020年に株式会社43Labを設立。現在は、オリンピック選手やW杯出場選手、女子プロゴルフのツアープロなど日本を代表する選手たちをサポートし、ジュビロ磐田、三菱重工相模原ダイナボアーズ、トヨタ車体クインシーズ、ヤマハ発動機ファクトリーレーシングと契約をしている。講師として、企業研修や講演会、ジュニア育成研修など幅広く活動中。紙面やwebでのコラム執筆も行っている。

著書:「スポーツの本番に強くなる 子どもメントレ」
資格:「スポーツメンタルトレーナー資格」、「行動心理士資格」、「上級心理カウンセラー資格」、「産業心理カウンセラー資格」

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