■1対1の強さが選手の評価に直結する
1対1の結果が試合出場につながるのであれば、トレーニングの緊張感や密度は高まっていく。さらに他の選手のプレーを観察し、分析するのも良いトレーニングになる。スマートフォンで動画を撮り、練習後に振り返るのも効果的だ。次の対戦相手の分析をする選手が出てきたら、このトレーニングの大きな成果だろう。プレーの分析眼を養い、自分のストロングポイントを生かすプレーを考え、自主練をする環境になれば、チームや個人の成長にもつながっていく。
「サッカーはチームスポーツです。11対11で行うので、試合の勝敗に対する責任は分け合うことができます。しかし、ゴール前での1対1の場面など、ひとつのプレーが勝敗に直結することもあります。1対1で勝つことを追求することは、選手個人のプレーに対する責任感を高めることにもなると思います。1対1で大切なのは、華麗な突破だけではありません。強引に突破して、打ったシュートが相手に当たって入ることもあります。相手をブロックしながら突破してシュートを打つ技術、競り合いの中で身につける体の使い方などたくさんあります。守備の面では、リスクを冒して奪いに行く場面と、セーフティなプレーを覚えること。一人でボールを奪いきることやスライディングタックルの技術など、1対1のトレーニングで学ぶ部分は多岐にわたります」
ブラジルW杯の日本代表の戦いを見て、数的有利を作ってボールを奪うプレーだけでなく、同数や数的不利の状態であっても、"1人でボールを奪い切る能力"の必要性を感じた人も多いだろう。また、数的不利でも突破に踏み切るメンタリティ、テクニックの重要性もしかりである。そのための第一歩が1対1のトレーニングだ。そして、1対1の状況において「目の前の相手に勝ってやる」という強いこだわりや気持ちを持ってプレーする習慣をつけさせること。これも選手を成長させるために、指導者がすべき重要なアプローチだといえるだろう。
<プロフィール>
三枝寛和
渋谷教育学園渋谷中学高等学校サッカー部顧問。大学卒業後、ケルンスポーツ大学で学ぶ。ドイツサッカー協会公認A級ライセンス、UEFA公認A級ライセンス保持。
育成改革によりEURO2000の惨敗からたった10年で復活を遂げたドイツ。個の強さにテクニックと創造性を備え、全員が走ってパスをつなぐ最強の「モダンフットボール」へと進化しました。名門1. FC ケルンの育成部長も務め、多くのブンデスリーガを育てたクラウス・パブストがその最先端トレーニングを伝授。U-12指導者向け教材『モダンフットボール【MODERNER FUSSBALL】』 詳しくはこちら>>