■つねに速いパスは、体の向きが疎かに
宇治さんは、この強いキックを蹴る文化が育成面で障害になっている可能性があることを次のように説明します。
「強いボールを蹴ったり、止めたりすることはできますが、ボールを止めることに注意しすぎて、体の向きが疎かになりがちです。縦パスをスペースにいる前線の選手が受ける時、ワンタッチもしくはノータッチターンで前を向いたほうが、次の攻撃に早く繋げやすい場面でも、いつも強いボールがくるからなのか、それをまず止めるためにボールに正対してしまうことが多々あります。つまり、そのボールを正対して受けるのにワンタッチ、ツータッチ目でターンして、スペースを突く攻撃に移行する。だからいいパスが入っても、次の攻撃に繋がりにくく、前進するための攻撃の機会を逃してしまう可能性もあります」
速いパススピードでボールを回すことは大切なことです。ただし、状況によっては速いパスが不適切な場合もあります。よって「つねに強いパスを出せ」というコーチングはデメリットを孕みます。子どもたちには、強いパスを蹴ることができる重要性を理解してもらいながら、少しずつでもいいので、状況に合った判断のもと適切なコースや強さのパスを出せる雰囲気をつくり出してもらいたいと思います。
取材・文/内藤秀明 写真/wonker