チャンピオンズリーグ決勝で見事にユベントスを3対1で制し、5度目のビッグイヤーを獲得したバルセロナ。サッカーサービスのポールコーチに、決勝の戦いぶりから見えるメッシの活躍とそのポイントについて話をしてもらいました。(取材・構成 鈴木康浩 写真 Getty images)
■相手の対策を認識し、その対処法を実行できるメッシ
まずメッシについて話をする前に、どのようにユベントスが試合をスタートしたかをお話する必要があります。この試合のユベントスは、特にボールがサイドにあるときに人数をかけて高い位置からプレスをかける狙いを持って試合に入ったように覗えました。その状況でバルセロナでもっとも賢さを発揮したのはメッシでした。状況を判断し、実行し、解決策を提示していたのです。
ユベントスがそのような対応をしてくるだろうことは試合前から予想はできていました。バルサが右サイドでボールを保持しているとき、非常に人数をかけて高い位置からプレスに来ていたのですが、そのときに、バルサは逆サイドにいる左サイドバックのアルバが高い位置をとることを約束事として決めていたのだと思います。メッシはユベントスのプレスを受けながらも、逆サイドでアルバがフリーになる瞬間をしっかりと見つけることができていました。メッシの広い視野、そして、実際にパスを出せる能力を証明したのです。バルサが先制した1点目がその象徴的なシーンといえます。右サイドのメッシが起点になって生まれたゴールですが、このシーンを細かく見てみましょう。
まずバルサがしばらく右サイドでボールを持っています。ここでユーベの選手たちがこの右サイドのエリアで人数をかけてメッシのドリブルを防ぐという対策を立てていました。
その状況下で、左サイドに数的優位の状況を作れることを認識したメッシは、いちはやく解決策を掲示し、左サイドのできるだけ強く、鋭いパスを出しています。そして、そういう質のパスだからこそ左サイドのアルバとネイマールが2対1の状況を作ることができたのです。このとき、中央寄りにいるユーベのDFが、この状況から数的同数にするために引っ張られ、内部にスペースができました。つまり、ここでユーベのDFのバランスが崩すことができたのです。そしてこのシーンでは、イニエスタがこのスペースをうまく使うことができました。そこに慌ててユーベの選手が中央から引っ張られるようにイニエスタの対応に来たため、結果的に中央に残っていたバルサのラキティッチがフリーになりゴールを決めることができたのです。
このシーンはバルサにとって最初のチャンスでした。最初のチャンスをものにするには運の要素も必要ではあると思いますが、バルサが優れているのは状況をしっかりと認識したうえで、一度のチャンスをゴールに繋げたということ。この先制点のあともメッシは同じような鋭い、効果的なサイドチェンジのパスを出すシーンがありました。
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取材・構成 鈴木康浩 写真 Getty images