テクニック
メッシも実践!小さくても奪われなくなるボールプロテクトとは?
公開:2015年6月18日 更新:2020年3月24日
欧州チャンピオンズリーグで5度目の載冠を果たしたバルセロナ。サッカーサービスのポールコーチに、前回は決勝戦のメッシのプレー分析をお願いしましたが、今回は、メッシやイニエスタらの「ボールをプロテクトする能力」についてお話を伺いました。(取材・文/杜乃伍真)
■CL決勝戦で、イニエスタが一度もボールを奪われなかった理由とは?
欧州チャンピオンズリーグ決勝でのメッシのプレーは素晴らしかったと思いますが、別の視点で見てみるとまた興味深いものが見えてきます。たとえば、イニエスタはこの試合で頻繁にマッチアップしていたユベントスのポグバに一度もボールを奪われませんでした。ポグバは身長も体格も十分にある選手ですが、イニエスタへアプローチする際に二度ほどファールを犯しています。なぜかというと、そのときにイニエスタがボールをしっかりとプロテクトしていたからです。イニエスタも、そしてメッシも、しっかりとボールをプロテクトできる選手であると言えますし、サッカーサービスでは、それが良い選手を見極める一つの要素だと考えています。
また、この試合ではメッシがポグバに対して一度ボールを奪われるシーンがあったのですが、そのときはメッシが身体のバランスを崩してしまってボールをプロテクトできる状態にはありませんでした。ただ、そのときメッシはポグバに対して賢くファールをして、その後のチームに与えるリスクを小さくして事なきを得ました。何が言いたいのかというと、もともと体が強い選手でも身体のバランスを崩した状態ではボールをプロテクトできないということ、逆にいえば、身体が小さくてもバランスさえ整っていればボールをプロテクトできるということです。
実際にボールをプロテクトする際に必要なのは、大きい選手を投げ飛ばすことではなく、相手選手がボールを触れない状態にすることです。決してメッシが空中戦でポグバに勝たないといけないのではなく、地面にあるボールを守ることができればよいのです。たとえば、相手選手から遠いほうの足を使ってコントロールしたり、ボールを相手からしっかり隠したり、ボールとの間に身体を入れたり、腕で相手を抑えたり、そういうことができれば、相手の選手はその選手をジャンプして飛び越えたり、ファールをしたりするほかなくなってしまうのです。
このボールプロテクトは、特にピッチのインサイドでプレーするイニエスタのような選手にとってとても重要な要素になりますし、サッカーサービスでは、小さい年代から身につける必要があると考えています。そしてこのテーマは、指導者に言われたから、本で読んだから、誰かに聞いたから、できるようになるものではありません。たとえば、指導者が「パスを使ってプレーをしよう」と言えば子どもはすぐにパスを使ってプレーするイメージがつくと思いますが、ボールプロテクトは、身体や腕を何気なく使ったからと、すぐにボールをプロテクトできる選手になれるわけではありません。それはトレーニングを通さないと身につけることができない技術だからです。
というのも、ボールをプロテクトするためには、たとえば、足下の高い技術があれば十分ということは言えません。たとえば、ネイマールは元々持っているボールを扱う技術についてはおそらくチャビよりも高いものがあるかもしれません。しかし、ネイマールは高い技術を持ってはいますが、チャビやイニエスタはよりボールを失う回数が少ない選手といえます。たとえば、チャビが一試合で2アシストを決めたとしても試合中のその他のシーンで二回、三回とボールを失ってしまえば、チャビがバルサで重宝されることもなかったと思いますし、それだけボールをプロテクトできる能力が評価されていた選手と言えます。
"欧州で求められるプレー判断の基準"をトレーニングする日本で唯一の夏キャンプ
FCバルセロナの選手や世界のトッププロをサポートしてきたスペインの世界的プロ育成集団「サッカーサービス社」が、認知やサポートなど13歳までに身に付けておくべき戦術をプロの試合映像を使って解説。サッカーインテリジェンスを高めたい子ども達が見て学べる映像トレーニング。
取材・文/杜乃伍真