■アメリカ攻略のカギは4‐2‐3‐1
監督にはそれぞれ、自分の中で「これが確実だ」と考えるシステムがあります。しかし、システムを決める際には、選手の能力を最大限に引き出すアイデアが求められると同時に、もし「ボールを保持して相手を攻略し、攻めて行きたい」と考えているのであれば、その現象が出やすいシステムを使うことも重要です。
たとえば、私がスペインで率いていたチームでは、4-3-3と4-2-3-1を使っていました。ですが、シーズンを進めていく中で選手を見て、4-4-2の中盤をダイヤモンドにする形が適していると感じたので、システムを変更しました。個人的に、元々4-4-2はあまり好みのシステムではありませんでしたが、選手に合ったシステムに変えたことで、結果チームのパフォーマンスに繋がったこともありました。
現在、日本が採用する4-4-2は、選手が同じラインに並びやすくなる布陣といえます。サイドバックとサイドハーフ、センターバックとボランチ、2トップが同じラインに配置されるので、ピッチの中央にいる選手が、常にポジションを修正する必要があります。とくに日本のように、多くの局面でパスを用いるチームは、ピッチ中央部でのサポートが重要なポイントになります。
なでしこジャパンのスタイル、選手の特性を見ると、4-2-3-1を使用するのも面白いかもしれません。4-3-3の場合、中盤の底(アンカー)に位置する選手の責任が重大で、サポートをはじめ、攻守に「認知・判断・実行」のプレーをミスなくできる能力が必要になります。そう考えると、ダブルボランチの4-2-3-1が現実的でしょう。これにより、宮間選手をトップ下に置き、ピッチの中央でプレーさせることができます。両ウイングの岩渕、川澄選手がサイドの幅を取り、流れの中で宮間選手とポジションを入れ替える形が出やすくなるシステムです。
決勝の相手、アメリカはイングランドよりもすべてにおいて上回っており、今大会もっとも強いチームのひとつです。さらに、アメリカはイングランド以上に、フィジカルを全面に押し出した戦いを挑んでくると考えられます。
決勝戦は『フィジカルのアメリカ対テクニックの日本』という形になるでしょう。だからこそ、戦術面、メンタル面が重要になってきます。戦術面とは相手の作戦に対し、どのように打開していくかという部分。メンタルは試合中、一瞬たりとも集中を切らさないことであり、相手と競り合う、絶対に勝つという気持ちです。アメリカのフィジカルに押し切られ、自分たちのサッカーができなくなったとき、どのような方法で解決することができるのか。その部分が、勝敗を分けるポイントになると思います。
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