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シュートは打つことではなく、決めることが重要!目的を持ったトレーニングが子どもを成長させる

公開:2021年4月 3日 更新:2021年4月 5日

キーワード:U-12コーチジュニアトレーニングドイツ指導法育成

最近ではインターネットや雑誌で、世界中の様々な最新戦術やトレーリング理論が紹介されています。日本サッカーが世界に追い付くためにもと、なんとかその秘密に迫ろうと躍起になっているのかもしれません。しかしサッカーでもどんな分野でも、まず大事にしなければならないのは基本ではないでしょうか。今回はドイツのプロサッカーコーチライセンス(日本で言うS級)保持者で、元1.FCケルンの育成部長を務めたクラウス・パプスト氏に、育成年代における取り組みの基本について語っていただきました。(取材・文 中野吉之伴)

※この記事は2015年3月配信記事の再掲載です。
 
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ドイツ・ブンデスリーガ クラウス・パブスト氏
ドイツの育成改革にも取り組んだクラウス・パブスト氏

■まずは、ボールを持ったときの安心感を持たせてあげること

日本人選手を評価する表現として、「技術はあるけど……」という飾り言葉をよく聞きませんか。フィジカルコンタクトでは他国の選手に負けるかもしれないが、ボール扱いは優れている。この認識は正しいのでしょうか。

そのためには技術に対する定義をしっかりとする必要があるはずです。まずプレッシャーがない状況でボールを操る技術と、さまざまなプレッシャーがかかる試合での技術は分けて考えるべきではないでしょうか?

この問いかけに対してクラウスは「そのとおりだと思う。サッカーにおける一番の問題は相手選手の存在だからだ」と語り出します。「しかし段階がある事を忘れてはいけない。子どもの試合で一番悪いのは、子どもたちがゲームから隠れてしまうことだ。積極的に関わろうとしない子どもたちが出るのはどうしてだろうか。ボールを持つとみんながパスをくれと叫ぶ。何とかしないといけないと慌ててしまう。小学校低学年では、基本を身につけなければならない。ボールを扱うことができる技術、ボールを持った時の安心感がまず必要なんだ」と説きます。

ボールを扱うことに自信を持てれば、1人は抜くことができるという気持ちの余裕も生まれてくる。1人抜けるようになると、2人に囲まれてもそこまで大きなストレスを感じることはなくなる。気をつけなくてはならないのは「基本技術=つまらない練習」にならないようにすること。待ち時間を極力なくすようにオーガナイズし、できるだけ競争意識を刺激するメニューを取り入れます。そして簡単な内容からスタートし、少しずつバリエーションを増やしたり、難易度を上げていきます。そうすることで子どもたちは集中力を欠くことなく、練習に取り組むことができるのです。

DVD「モダンフットボール」のトレーニング
競争意識がもてるトレーニングを取り入れる

■ドリル+ミニゲームの組み合わせが重要

ただし、これはあくまでも第1段階。前述したようにサッカーは相手ありき、そしてゴールありきのスポーツです。ドリルトレーニングだけではダメで、ミニゲームだけでもダメ。トレーニングの組み合わせ方が重要になります。

クラウスはこの点に関して、「特にシュートは非常に大事なんだ。どの練習でもできる限りシュートと結びつけることが大切だと思っている。そしてシュートとは打つことではなく、決めるという目的を持つことが重要」と強調します。ドイツでもそうですが、おなじみのシュート練習というと、ハーフウェーラインからのポストシュート。これは、シュートを練習している感じがします。試合でそうした場面からのゴールというのを目にしたことが、どれくらいあるでしょうか。ゴールを決められるようになるためには、どの位置からどのように打たれたシュートがゴールに結びつくかを知ることが大切になります。

クラウスも「不必要に距離のあるミドルシュートやロングシュートの練習よりも、基本的にかなり近い距離からのシュートをトレーニングさせている。子どもたちは『近すぎるよ!』というけど、それを確実に決められるようにならないといけないんだ」とうなずきます。

実際に国際大会の統計を見ても、ほとんどのゴールはペナルティエリア内から生まれています。

そのことを挙げると、クラウスは「ダイレクトだということも大事だ。トラップしてシュートではなく、ましてトラップして運んでシュートではなく、パスに対してダイレクトシュートをすることが大切だ」と補足してくれました。とはいえ、小さな子どもがいきなりパスをダイレクトでシュートできるようになるのは非常に難しいこと。もちろん最初は簡単な形からシュート練習を行い、徐々に難易度とスピードを上げていきます。ただ最終的に目的となるものをビジョンとして持っているかどうかは指導者としてとても重要なポイントになるのです。

シュートを含めて練習した技術は、それを活かすチャレンジする場がなければ意味をなしません。だからこそミニゲームを多く行うことが重要になります。クラウスは「このミニゲームで技術を使い、学んだ技術をゲームで活かす。さっき指摘したシュートに関することも、2対2や4対4の練習の中でも意識してさせなければ。練習でそれができるようになれば、実際に試合でもチャレンジするようになる」と語っていました。

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子どもたちがサッカーを楽しむことが第一

ゲームは子どもたちにとって、何物にも勝る学びの場。ミスすることを含めてさまざまな経験をすることができます。大人は自分たちの経験から何が正しくて何がミスなのかをわかっていますが、そもそもの経験が少ない子どもはその判断基準がまだ備わっていません。だから外から「何をやっているんだ!」「そんなプレーはするな!」「違う!そうじゃない!」という声は、子どもたちの成長への妨げにしかなりません。まずは彼らが一つ一つのプレーに集中できる環境を整えてあげ、自分たちで感じて学べる状況を作り上げることが大人の役目なのです。

「サッカーは楽しいということが一番大切。ただ多くのところでその楽しみが壊されている。なぜだろう? 楽しみがあるから練習にも身が入るし、また行こうと思う。今も昔もそれは変わらないことなんだ。だって、みんなサッカーがしたくてくるんだから」

パプストさんのこの言葉に子どもたちと向き合う大人の心構えがつまっているのではないでしょうか。

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クラウス・パブスト(Klaus Pabst)

ドイツの名門「1.FCケルン」でユースコーチや育成部長を務め、多くのブンデスリーガを輩出。ケルンで最初となるサッカースクール「1.Jugend-Fusball-Schule Koln」を創設し、サッカー指導者養成機関としても知られる国立ドイツ体育大学ケルンで講師を務めるなどドイツサッカー育成の第一人者である。
日本へは何度も訪れており、指導者講習会や選手へのクリニックを開催。日本サッカーの育成にも造詣が深い。

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取材・文 中野吉之伴

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